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第35章 新たな設備と、ささやかな満足

第35章 新たな設備と、ささやかな満足


商隊を見送り、ひと息ついたすすむは、静まり返った自室へ戻ってきた。

レベルアップの余韻がまだ身体の奥に残っている。こうして部屋に戻ると、ようやく落ち着いて今回得た能力を確認できる。


「『収納LV1』が気になるな。」


すすむは、部屋の隅に掛けてあった背広の上着に視線を向け、意識を集中させた。

“収納”と強く念じた瞬間、背広がふっと掻き消えるように消滅した。


「おお……」


驚きと同時に、頭の中に“背広”というイメージが浮かび上がる。

そこには、まるで自分専用の小さな倉庫が脳内にできたかのように、収納された物の存在がはっきりと感じられた。


次に、頭の中の背広を取り出すよう念じると――

目の前に、元の場所にあったかのように背広が現れた。


「こうやって使うのか。これは便利だな。」


思わず口元が緩む。

小物だけでなく、もっと大きな物も収納できるのか。

その疑問を確かめるべく、すすむは外の偽装した馬車の置き場へ向かった。


偽装された馬車に手を触れ、収納を念じる。

すると、馬車は音もなく消え、頭の中に“馬車”の存在が浮かび上がった。


「……車もいけるのか?」


脳裏に浮かんだのは、この世界に来たときに乗っていた自分の車。

あれほどの大きさの物も収納できるのなら、応用範囲は一気に広がる。

ただし、偽装が解けてしまうのは問題だ。

もっと大きな物を収納できるかどうか、いずれ試す必要があるだろう。


そんなことを考えていると、ふと別の通知が頭に浮かんだ。

「建物」がLV3に上がったのだ。


すすむは急いで内容を確認する。

すると、今までレンタル扱いだったバイオトイレやシャワールームが“購入可能”になっていた。

つまり、一度設置すればMPを消費せずに使い続けられるということだ。


「これはありがたい……!」


迷うことなく購入を選択する。

さらに、新しい設備がいくつか追加されていることにも気づいた。


その中でも、すすむの目を引いたのは――

ユニットバス(小)

ついに、風呂が常設できるようになったのだ。


「これは……すごいぞ。」


さらに照明設備も増えている。

ガスライト調のルーフライトなど、宿としての価値を一段階引き上げる設備が揃っていた。


「客室の質が一気に上がるな……」


期待に胸を膨らませながら、すすむは自分の宿泊している部屋へ戻った。

そして、ユニットバス(小)とルーフライトを設置するよう念じる。


次の瞬間――

部屋の一角に、白く清潔なユニットバスが現れ、天井には柔らかな光を放つルーフライトが灯った。

まるで現代日本のビジネスホテルの一室のような快適さが、異世界の宿に生まれた。


「……最高だ。」


しかし、同時にMPがゼロになったことも感じ取る。

今日はもう何も設置できない。

だが、すすむの胸には満足感が満ちていた。


異世界での生活が、また一歩“快適”へと近づいたのだ。


すすむは新しい設備を眺めながら、静かに息をついた。

明日からのこの世界での暮らしが、ますます楽しみになっていた。


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