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第33章 森の恵みと、新たな名物料理

第33章 森の恵みと、新たな名物料理


翌朝。

宿の食堂に柔らかな朝日が差し込み、温かいスープの香りが漂っていた。


朝食を終えると、政務官ローレントと助手マーカスは、今日も村長宅へ向かっていった。

畑の検地はまだ続くらしく、二人とも真剣な表情で資料を抱えている。


一方、冒険者チームの四人――グラント、ミーシャ、クラレス、セレスの姿もあった。


「今日も村長さんからの依頼でな。森の奥の魔獣を狩ってくる。」

グラントが大きな剣を背負いながら言う。


「ギルドがない村は、こういう直接依頼が多いのよ。」

ミーシャが肩をすくめる。


すすむは興味深く耳を傾けた。


「直接依頼って、どういう仕組みなんですか?」


セレスが穏やかに説明してくれる。


「ギルドで受ける依頼とは別に、依頼主から直接“依頼状”を受け取るのです。

達成したら依頼主から報酬を受け取り、私たちは“依頼完了書”を発行してギルドに提出します。

そうすると、正式な実績として記録されるのですよ。」


「へぇ……結構複雑なんですね。」


「ええ。でも、ギルドがない村ではこれが普通ですわ。」

クラレスが微笑む。


四人は軽く手を振り、狩りへと出かけていった。


★★★★★


夕方。

空が茜色に染まり始めた頃、冒険者たちが戻ってきた。


「ただいま戻ったぞ!」

グラントが大声で笑う。


「今日は討伐の途中で、珍しいものを見つけたの。」

ミーシャが袋を差し出す。


すすむが袋を開けると――

ふわりと濃厚な香りが立ちのぼった。


「……これは、ポルチーニ茸と黒トリュフじゃないか。」


思わず声が漏れた。

日本でも高級食材として扱われる二つが、まさか異世界の森で採れるとは。


「今日の夕食に使えないか?」

グラントが期待の眼差しを向ける。


すすむは笑って頷いた。


「もちろん。最高の料理にしてみせます。」


★★★★★


すすむはリリアを呼び、厨房へ向かった。


「今日は特別メニューだよ。

ポルチーニ茸のパスタと、黒トリュフのリゾットを作る。」


「パスタ……リゾット……?」

リリアは首をかしげる。


「この村では、ポルチーニもトリュフもオリーブオイル漬けにして食べるのが一般的なんだって?」

すすむが聞くと、リリアは頷いた。


「ええ。香りが強いから、そのまま食べるのが普通で……

料理に使うなんて、考えたこともなかったわ。」


「じゃあ、今日は新しい食べ方を紹介するよ。」


すすむは手際よく材料を切り、鍋に火を入れる。

バターの香りが広がり、リリアが思わず息を呑んだ。


「すごい……香りが全然違う……」


「トリュフは香りが命だからね。

リゾットはゆっくり、丁寧に火を通すんだ。」


すすむは米を炒め、スープを少しずつ加えながら、丁寧にかき混ぜる。

その横で、ポルチーニ茸のパスタも同時進行で仕上げていく。


しばらくして――

二つの料理が完成した。


「よし、できた。」


鍋から立ち上る香りは、厨房全体を包み込み、リリアは目を輝かせた。


★★★★★


量は多い。

冒険者四人分だけでなく、政務官たち、リリアたち、そしてすすむ自身の分まで十分にある。


まずは冒険者たちに提供した。


「……なんだ、この香りは……!」

グラントが目を見開く。


「ひと口で、こんなに幸せになれるなんて……」

クラレスが感動して涙ぐむ。


「これ、王都の高級店でも出ないわよ……」

ミーシャが驚きの声を上げる。


セレスは静かに味わい、深く頷いた。


「……これは、料理というより芸術ですわね。」


続いて政務官たちにも出すと、ローレントが目を丸くした。


「こ、これは……!

王都でも滅多にお目にかかれぬ一品ですぞ……!」


マーカスも感嘆の声を漏らす。


「この宿……ただ者ではありませんね……」


すすむは照れくさく笑った。


「森の恵みのおかげですよ。」


★★★★★


こうして、

「黒トリュフのリゾット」

「ポルチーニ茸のパスタ」

という二つの新メニューが、この宿の名物として加わった。


村人たちの間でも噂になり、

「一度食べてみたい」

という声が広がっていく。


異世界の小さな村の宿に、また一つ、すすむのホスピタリティが根付いた瞬間だった。


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