第32章 ランドリーサービスという新しい価値
第32章 ランドリーサービスという新しい価値
すすむの提案――
それは、宿で“ランドリーサービス”を提供するというものだった。
「お客様の衣服を預かって、きれいに洗ってお返しする。
旅の途中で服が汚れるのは当たり前だし、長旅の人には特に喜ばれると思う。」
すすむが説明すると、リリアは腕を組んで考え込んだ。
「でも……この村に来るお客様って、着たきり雀の人が多いのよ。
そんなに需要があるかしら……?」
すすむは頷いた。
「確かに、短期の旅人はそうかもしれない。
でも、長期で滞在する冒険者や、商隊の人たちはどうだろう?
服を洗うのは大変だし、川で洗うのは時間も手間もかかる。」
リリアは少し考え、やがて表情を和らげた。
「……そうね。長旅の人には、きっと良いサービスになるわ。」
レミーも嬉しそうに頷く。
「僕、洗濯機の使い方、もっと覚えたい!」
すすむは笑い、次の説明に移った。
「ただし、衣服にはそれぞれ洗い方があるんだ。
例えば、ウールはこの洗濯機では洗えない。
手で、専用の洗剤を使って優しく洗う必要がある。」
リリアは驚いたように目を丸くした。
「布によって、そんなに違うの?」
「うん。間違えると縮んだり、傷んだりしてしまう。」
すすむは実演することにした。
ちょうど、ハンスの衣服が洗濯に出ていた。
「この上着はウールだね。これは手洗い。」
桶にぬるま湯を張り、洗剤を溶かし、優しく押し洗いする。
リリアとレミーは真剣な表情で見つめていた。
「そして、こっちのシャツやズボンは洗濯機で大丈夫。」
すすむは洗濯機に入れ、乾燥までの流れを見せた。
「なるほど……布によって違うのね。」
「うん。だから、ランドリーサービスをするなら、衣類の見分け方も覚えないといけない。」
リリアは真剣に頷き、レミーもメモを取っている。
乾燥が終わり、すすむが衣類を取り出すと――
二人は感嘆の声を上げた。
「すごい……ふわふわで、いい匂い……!」
「これなら、お客様も絶対に喜ぶよ!」
すすむは満足げに微笑んだ。
「じゃあ、今日からランドリーサービスを始めよう。
料金は……そうだな、まずは試験的に安めに設定して、様子を見よう。」
リリアは嬉しそうに頷いた。
「すすむさん、本当にありがとう。
この宿が、どんどん良くなっていくわ。」
すすむは照れくさそうに頭をかいた。
「みんなが気持ちよく過ごせる宿にしたいだけだよ。」
こうして、グレン村の小さな宿に、また一つ新しい“ホスピタリティ”が加わった。
それは、旅人たちの生活を静かに、しかし確実に変えていくことになる。




