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第31章 コンテナと洗濯機と、清潔という文化

第31章 コンテナと洗濯機と、清潔という文化


翌朝。

政務官ローレントと助手マーカスは、すすむの応急処置と休養のおかげで、すっかりと顔色を取り戻していた。

二人は礼を述べると、予定どおり村長ローガンの家へ向かい、畑の検地作業に出かけていった。


宿の中は、久しぶりに静けさが戻っていた。

リリアがほうきを手に、二階の客室へ向かう。


「政務官様たちのお部屋、清掃してくるわね。」


すすむは頷き、帳場で帳簿を整理していた。

しばらくすると、階段を降りてきたリリアに、すすむは声をかけた。


「あの……リリアさん。交換したシーツはどこに?」


「交換? なんで?」


「えっ……だって、お客様の昨日使ったシーツ、洗うんでしょう?」


「洗うんですか?」


すすむは一瞬、言葉を失った。

どうやら、この世界では“寝具をこまめに洗う”という習慣がほとんどないらしい。

布は貴重で、洗濯は重労働。

水場も限られているため、頻繁に洗う文化が育たなかったのだろう。


(これは……なんとかしないといけないな)


ホテルマンとしての本能が、強く反応した。

清潔さは、宿の品質を大きく左右する。

それに、旅人たちが安心して休める環境を整えるのは、宿の責務だ。


すすむは裏手の馬車置き場へ向かった。

すでにバイオトイレやレンタルシャワールームのプレハブや、コンテナの荷物置き場を設置したことで、

広場はだいぶ手狭になっていたが、まだ少し余裕がある。


「……よし。もう一つ、置けるな。」


すすむは《建物》スキルを発動し、JR貨物の12フィート中古コンテナを調達した。

金属の箱が、草原の上に静かに姿を現す。


「これで、洗濯室を作ろう。」


次に《通販》を開き、洗濯機と乾燥機のセットを選ぶ。

魔力を消費し、コンテナの中に配置した。


「バイオトイレやシャワールームが配管なしで動くんだ。これもいけるはず。」


すすむの予想どおり、洗濯機は問題なく起動した。

電源は魔法的に補われているのか、あるいはスキルの仕様なのか、深く考えるのはやめた。


「よし……もう2セット追加しよう。」


同じ洗濯機と乾燥機をさらに二組調達し、計三セットをコンテナ内に並べる。

これなら、宿の寝具だけでなく、客の衣類も十分に対応できる。


すすむは試しに、自分の部屋のシーツを持ってきた。


「……あ、洗剤を忘れてた。」


慌てて《通販》で洗剤を購入し、洗濯機に投入する。

しばらくして、洗い終わったシーツを乾燥機に移し、待つこと数十分。


乾燥が終わり、すすむはシーツを手に取った。


「……うん、完璧だ。」


ふわりとした手触り。

清潔な香り。

ホテルマンとして、これ以上ない仕上がりだった。


すすむはリリアとレミーを呼んだ。


「ちょっと見てほしいものがあるんだ。」


二人はコンテナの中に足を踏み入れ、見慣れない機械に目を丸くした。


「これが……洗濯の道具?」


「そう。寝具を清潔に保つためのものだよ。」


すすむは操作方法を説明し、二人に汚れたシーツを持ってこさせた。

洗濯機が回り始めると、リリアは不安そうに見つめ、レミーは興味津々で覗き込んだ。


乾燥まで終わり、すすむがシーツを取り出すと――


「わぁ……!」


「すごい! 本当にきれいになってる!」


二人は目を輝かせ、手で触れながら感動していた。


「手で洗わなくていいなんて……こんなに楽で、しかもきれいになるなんて……、洗濯物を干さなくても、乾いているわ。」


すすむは微笑み、毛布などの洗い方も教えた。


「それと……お客様の衣服で汚れたものがあったら、クリーニングするサービスを始めてみてはどうかな?」


リリアとレミーは顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。


「……それは、きっと喜ばれるわ。」


こうして、宿の新たな改革が静かに始まった。


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