第30章 赤紫の箱と、説明しづらいロゴ
第30章 赤紫の箱と、説明しづらいロゴ
その日の昼下がり。
すすむは食堂で、冒険者チームの四人――グラント、ミーシャ、クラレス、セレス――と談笑していた。
「もう一週間、ここに滞在しようと思ってる」
グラントが豪快に笑いながら言う。
「食事が美味しすぎるのが悪いのよ」
ミーシャが肩をすくめる。
「治癒魔法の練習にもなるし、ここは落ち着くわ」
クラレスも微笑む。
「年寄りには、こういう静かな宿がありがたいのよ」
セレスが茶をすすりながら言った。
すすむは嬉しくなりながら、四人としばらく雑談を楽しんだ。
★★★★★
談笑が終わり、冒険者たちが部屋に戻ると、リリアが困った顔で近づいてきた。
「すすむさん……実はね、荷物を入れる場所が足りなくなってきて」
「荷物置き場が……?」
「ええ。冒険者さんたちの荷物も多いし、村の人が預けていく物も増えてきて……
倉庫がもういっぱいなの」
すすむは腕を組んで考えた。
(そういえば……中古プレハブの横に、“中古コンテナ”ってあったな)
プレハブよりも頑丈で、鍵もかけられる。
盗難防止にもなるし、荷物置き場としては最適だ。
「よし、コンテナを一つ出そう」
すすむは裏手に向かい、能力《建物》で“中古コンテナ”を検索した。
★★★★★
検索結果には、いくつかの種類が並んでいた。
JR貨物規格コンテナ
20フィートコンテナ
40フィートコンテナ
「……こんなに種類があるのか」
宿の裏のスペースを考えると、大きいものは置けない。
すすむは最も小さい JR貨物規格コンテナ を選択した。
次の瞬間――
ドンッ!
赤紫色の、見覚えのあるコンテナが目の前に現れた。
側面には大きく 「JR貨物」 の文字。
すすむは思わず固まった。
「……まあ、いいかな」
異世界の村に突然現れた“日本の物流コンテナ”。
色もロゴもそのまま。
だが、頑丈さは折り紙付きだ。
★★★★★
すすむはリリアとレミーを呼び、コンテナの前に案内した。
リリアは目を丸くする。
「まあ……頑丈にできているのね。鉄なの?」
「はい。荷物を安全に保管できますよ」
レミーはコンテナの側面を触りながら、興味津々で言った。
「派手だな。これ、鉄でできているのか。
ところで、この“JR貨物”って何?おまじない?」
レミーはJR貨物の所を指して聞いてくる。
すすむは一瞬、言葉を失った。
(……どう説明しよう)
“日本の鉄道会社のロゴです”なんて言えるはずもない。
「えーと……これは、僕の国の……
“荷物を運ぶ組織の印”みたいなものです」
「へえ……おまじないじゃないんだ」
レミーは納得したように頷いたが、リリアは少し笑っていた。
「すすむさんの国って、本当に不思議なものが多いのね」
すすむは苦笑しながら、コンテナの扉を開けて見せた。
「ここに荷物を入れましょう。鍵もかけられるので安心です」
リリアは嬉しそうに頷いた。
「助かるわ。本当にありがとう、すすむさん」
赤紫のコンテナは、異世界の村では少し派手すぎるかもしれない。
だが、これで荷物置き場の問題は解決した。
すすむはコンテナを見上げながら、心の中でそっと呟いた。
(……そのうち、このロゴの意味を聞かれたら、もっと上手い説明を考えないとな)
異世界の宿“グレンイン”は、また一つ便利になった。




