第29章 プレハブ計画と、宿の新しい動線
第29章 プレハブ計画と、宿の新しい動線
看板の効果で宿泊客が増え始めてから数日。
嬉しい悲鳴ではあるが、すすむは新たな問題に気づいていた。
それは――
レンタルシャワールームとバイオトイレの混雑 だった。
宿泊客が増えたうえに、村人たちも便利さに気づいて利用しに来るようになり、
朝と夕方は特に行列ができるほどだった。
「これは……さすがに不便だな。」
すすむは状況を見て、すぐに決断した。
「シャワールームとバイオトイレを、もう2セット追加しよう。」
魔力を使ってレンタル契約を結び、合計3セット体制にする。
これで混雑は多少緩和されるはずだ。
だが、問題はもう一つあった。
屋外に設置しているため、雨の日は不便すぎる。
すすむは能力《建物》を開き、検索をかけた。
すると――
「中古プレハブ」というカテゴリが新しく表示されていた。
広さは
・8畳
・6畳
・3畳
の三種類。
寸法を確認すると、シャワールームとバイオトイレをまとめて入れられるサイズだ。
「……これだ。」
すすむは迷わず、8畳の中古プレハブを調達した。
★★★★★
次の瞬間、馬車置き場に大きな木箱が出現した。
中には、壁パネル、床材、屋根材、金具、そして組立説明書らしきものがぎっしり詰まっている。
「うわ……これは一人じゃ無理だな。」
すすむは頭をかきながら、プレハブのパーツを眺めた。
彼の構想はこうだ。
宿の裏口とプレハブを直結させる
雨に濡れずにシャワー・トイレへ行ける動線を作る
シャワー室の前に、カーテンで仕切った屋内脱衣場を設ける
宿の快適さを一段階引き上げる計画だ。
しかし、組み立てにはどうしても人手が必要だった。
すすむが腕を組んで考え込んでいると――
「お、すすむ殿。何をしている?」
「随分大きな荷物だな」
声の方を見ると、剣士グラントと助手マーカスが歩いてきた。
二人は長期滞在中で、すすむともすっかり打ち解けている。
すすむは事情を説明した。
「実は、シャワーとトイレの混雑を解消するために、プレハブを建てようと思ってて……
でも、一人じゃ組み立てが難しくて。」
すると、グラントは豪快に笑った。
「任せろ。こういう作業は得意だ。」
マーカスも頷く。
「私も手伝いますよ。こう見えて、細かい作業は得意なんです。」
すすむは心から安堵した。
「ありがとうございます。本当に助かります。」
★★★★★
その日の午後から、
グラント、マーカス、レミー、すすむ
の四人で組み立てが始まった。
すすむの頭の中には、建物スキルによって
立体的な組立図 が浮かんでいる。
「まずは基礎を作ります。レミー、こっちのパネルを持ってきて。」
「了解!」
「グラントさんは、この柱を支えてください。」
「任せろ!」
「マーカスさんは金具の固定をお願いします。」
「はい、ここですね」
四人は息を合わせ、次々とパーツを組み上げていく。
グラントの腕力、マーカスの器用さ、レミーの機動力、そしてすすむの知識。
それぞれの強みが見事に噛み合い、作業は驚くほど順調に進んだ。
★★★★★
四日間の作業を経て――
ついに、プレハブが宿の裏口と直結した。
中には、
レンタルシャワールーム×3
バイオトイレ×3
カーテンで仕切られた脱衣スペース
が整然と並び、雨の日でも濡れずに利用できる動線が完成した。
レミーは目を輝かせて言った。
「すすむさん……すごいよ! 本当に宿が大きくなったみたいだ!」
グラントも満足げに腕を組む。
「これなら旅人も喜ぶだろう。いい仕事だったな。」
マーカスも微笑んだ。
「宿の設備としては、王都の宿にも負けませんよ。」
すすむは完成したプレハブを見上げ、静かに頷いた。
「これで、もっと快適に泊まってもらえる。
グレンインは……まだまだ良くなる。」
夕暮れの光がプレハブの壁を照らし、
新しい宿の姿を温かく浮かび上がらせていた。




