第28章 レベルアップと、宿を支える手
第28章 レベルアップと、宿を支える手
看板を掲げてからというもの、宿の前を通る旅人たちの反応が明らかに変わった。
「ここ、宿だったのか。」
「グレンイン……いい名前だな。」
そんな声が聞こえるようになり、実際に宿泊客も増えた。
毎日1〜2組が訪れ、昨日も二組が泊まり、今朝、笑顔で出発していった。
すすむは玄関先で深くお辞儀をし、旅人たちの背中を見送る。
その瞬間――胸の奥に、淡い光が灯った。
(……レベルが上がった?)
視界にステータスが浮かび上がる。
白谷すすむ LV3
体力:20
防御:15
素早さ:18
知力:15
魔力:50
スキル
・建物LV2(消費5)
・車保守LV1(消費5)
・偽装LV1(消費5)
・通販LV2(消費5)
・言語LV1
すすむは思わず息を呑んだ。
「建物と通販が……レベル2になってる」
詳細を確認すると、さらに驚く。
通販LV2の効果
・魔力消費5で、最大50万円までの商品を購入可能
・50万円までローン設定が可能
→ローンと合わせて、最大100万円の品を調達できる
「……ローンまであるのか。まるで現代の通販サイトみたいだな。」
建物スキルの方も、扱える資材や工具の種類が増えていた。
宿の修繕に必要なものが、ほとんど揃えられる。
すすむは迷わず、大工道具一式を購入した。
金槌、ノコギリ、電動工具に近い魔道具まで揃っている。
(これで、壊れかけているドアや椅子も直せる)
★★★★★
すすむは工具を持ち、二階の客室へ向かった。
そこには、開閉のたびに「ぎーぎー」と悲鳴を上げるドアがある。
「さて……まずは蝶番の交換からだな」
すすむは丁寧にドアを外し、ひび割れた部分を補修し、新しい蝶番を取り付ける。
建物スキルのおかげで、手順が頭の中に自然と流れ込んでくる。
その様子を、レミーがじっと見つめていた。
「すすむさん……なんか、かっこいいな。」
「かっこいい、ねえ。そんなこと言われたのは久しぶりだよ。」
すすむは笑いながらも、レミーの視線に真剣さを感じた。
★★★★★
ドアを元に戻し、軽く押すと――
「……おお、静かだ」
レミーが感動したように声を上げた。
すすむは工具を片付けながら、レミーに向き直る。
「レミー。こういうメンテナンス、これから少しずつ覚えていこう。」
「僕が……?」
「うん。宿を経営する家族として、設備を直せるようになると強いよ。
お客さんが快適に過ごせるかどうかは、こういう細かいところで決まるからね。」
レミーは真剣に頷いた。
「わかった。僕、すすむさんみたいにできるようになりたい。」
「その気持ちがあれば、すぐにできるようになるよ。」
すすむはレミーの頭を軽く撫でた。
レミーは少し照れながらも、嬉しそうに笑った。
看板が宿に客を呼び、
料理が客を喜ばせ、
修繕が宿を整えていく。
そして、レミーが成長し、宿の未来が少しずつ形になっていく。
すすむは、胸の奥に静かな達成感を抱きながら、次の修繕箇所へと向かった。




