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第25章 レミーの学びと、宿に満ちる温かな空気

第25章 レミーの学びと、宿に満ちる温かな空気


翌日。

朝の柔らかな光が差し込む廊下で、すすむはレミーを呼び止めた。


「レミー。今日は一緒に作業しよう。コーキング材の使い方を覚えておくと、これから役に立つよ。」


「うん。教えて、すすむさん。」


レミーはまだ完全ではないものの、歩く姿にはもう痛々しさはない。

若い身体の回復力と、クラレスの治癒魔法の効果は本当に大きかった。


★★★★★


すすむは、昨日調達したコーキング材と塗料を手に、レミーと一緒に二階の客室へ向かった。


「まずは、隙間を見つけるところからだよ。」

すすむは窓枠に手を当て、冷たい風が入り込む部分を示す。


「ここに、こうやって……押し込むんだ。」


レミーは真剣な表情で頷き、すすむの手元をじっと見つめる。


「こう……かな。」


「そうそう。力を入れすぎないようにね。」


二人で作業を進めると、部屋の空気が少しずつ変わっていく。

隙間風が止まり、室内の温度が安定していくのがわかる。


すすむは、目立つ部分に木目調の塗料を塗りながら言った。


「仕上げは大事だよ。見た目がきれいだと、お客さんの印象も良くなる。」


「なるほど……父さんが見たら、きっと喜ぶよ。」


レミーの声には、どこか誇らしげな響きがあった。


こうして二人で作業を続け、翌日の夕方までには全ての部屋の隙間を修復し終えた。


★★★★★


作業を終えると、すすむはレミーをバイオトイレとレンタルシャワールームへ案内した。


「レミー。これからは、ここも任せたいんだ。使い方を覚えておいてね。」


「うん。任せて。」


すすむは丁寧に説明し、レミーは真剣にメモを取りながら聞いていた。

宿の設備が整っていくにつれ、レミーの表情にも自信が戻ってきている。


★★★★★


夕方。

すすむは厨房で、リリアに「ごろごろ肉のポトフ」の作り方を教えていた。


「お肉は大きめに切ってください。煮込むと柔らかくなるので。」

「はい。こうかしら。」


リリアは慣れた手つきで野菜を切り、鍋に入れていく。

すすむは火加減を調整しながら、香りの変化を確かめた。


「いい匂い……これなら、きっと皆さん喜ぶわ。」


「ええ。今日は特に、冒険者さんたちが楽しみにしてるみたいですよ。」


リリアは少し笑いながら言った。


「実はね、あの四人……本当は今日の昼に出発する予定だったの。でも……」


「でも?」


「『食事が美味しすぎるから、あと一週間滞在する。』って言われちゃったの。」


すすむは思わず吹き出しそうになった。


「そんなに……?」


「ええ。あなたの料理、すごいわよ。」


★★★★★


夕暮れ時。

食堂の窓から差し込む橙色の光が、テーブルを柔らかく照らしていた。


冒険者四人は、すでに席に座っている。


剣士グラントは腕を組みながら、鍋の匂いに鼻をひくつかせていた。

斥候ミーシャは静かにスプーンを手に取り、期待を隠しきれない様子。

僧侶クラレスは微笑みながら祈りの言葉を唱え、

魔法使いセレスは落ち着いた表情で鍋を見つめている。


すすむとリリアがポトフを配膳すると、四人は一斉に歓声を上げた。


「これは……すごい香りだ。」

「お肉が大きい……!」

「野菜もたっぷりで、体に良さそう。」

「いただきます。」


スプーンを口に運んだ瞬間、四人の表情が一気に緩んだ。


「……うまい。」

「とろける……!」

「これは……旅を延ばしてでも食べたい味ですね。」

「一週間どころか、もっと居たいくらいだ。」


すすむはその言葉を聞きながら、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


(この宿が、誰かの“居たい場所”になっている……)


それは、ホテルマンとして何よりの喜びだった。


夕暮れの食堂には、温かな湯気と笑い声が満ちていた。


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