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第24章 レミーの復帰と、宿に流れ始めた新しい風

第24章 レミーの復帰と、宿に流れ始めた新しい風


レミーが歩けるようになってから、宿の空気は目に見えて変わった。

まだ全力で動けるわけではないが、若さゆえの回復力は驚くほどで、簡単な仕事なら問題なくこなせる。


「レミー、そっちはお願いね」

「うん、母さん!」


リリアが調理している間、レミーは配膳の準備をし、皿やカトラリーを整えていく。

誰かが食堂を掃除している時は、彼が客室の掃除に回る。

その姿を見て、リリアは何度も「本当に助かるわ」と嬉しそうに言っていた。


すすむにとっても、レミーの復帰は心強かった。

宿の仕事は細かい作業が多く、誰かが動けるだけで全体の流れが格段に良くなる。


★★★★★


もう一つの変化は、政務官ローレントと助手マーカスの様子だった。

クラレスの治癒魔法のおかげで、二人は杖を使いながらも自力で歩けるようになり、昼食の時間には食堂まで降りてくるようになった。


「白谷殿、今日も良い香りだな」

「本当に……ここに来てから食事が楽しみで仕方ない」


以前のような不機嫌さはすっかり消え、むしろ穏やかで礼儀正しい態度に戻っている。

食事が人の心を変えるというのは、異世界でも同じらしい。


すすむは微笑みながら、「ごゆっくりおくつろぎください。」と声をかける。


★★★★★


政務官たちが席についた直後、冒険者パーティーの四人が食堂に入ってきた。


「昼食をお願いしたいんだが、今日のメニューは?」

剣士グラントが声をかける。


すすむはエプロンを整えながら答えた。


「本日の昼食は、ハンバーグのプレートです。

 ハンバーグ、サラダ、バターライスのセットになります」


「おお、それは楽しみだ!」

「私もそれで」

「同じく」

「では四人分お願いします」


冒険者たちが注文を終えると、政務官ローレントが手を挙げた。


「白谷殿、我々も同じものを頼む」


「かしこまりました」


すすむは厨房に戻り、ハンバーグを焼き始めた。

肉の焼ける香ばしい匂いが食堂に広がり、皆が期待に満ちた表情を浮かべる。


★★★★★


料理を配膳すると、冒険者も政務官も、まるで競うように食べ始めた。


「うまい……! 肉汁が……!」

「このバターライス、香りがすごいわね」

「サラダのドレッシングも美味しい……」

「白谷殿、これは……本当に絶品だ」


すすむはその様子を見て、胸の奥が温かくなる。


(食べてくれる人がいるって、やっぱり嬉しいな)


宿の食堂には、しばらくの間、幸せそうな咀嚼音だけが響いていた。


★★★★★


昼食の片付けが終わり、夕方になると、すすむは裏口から外へ出た。

魔力を使い、必要な食材を補充する。

さらに、宿の全客室分の寝具と、できるだけ多くのコーキング材を調達した。


(これで、しばらくは困らないな)


すすむはホテル時代、工務部の仕事も経験していた。

設備のメンテナンスや修繕は、ある程度なら自分でできる。


宿の二階に上がり、特に隙間風のひどい部屋へ向かう。

窓枠や壁の継ぎ目に手を当てると、冷たい風がスーッと流れ込んでくる。


「……これはひどいな」


すすむはコーキング材を取り出し、丁寧に隙間へ流し込んでいく。

指でならし、表面を整え、乾燥を待つ。


(これで、冬の寒さも少しは和らぐはずだ)


作業をしながら、すすむはふと微笑んだ。


(料理だけじゃなく、こういうところでも宿を良くできる。

 ホテルマンとしての経験が、ちゃんと活きてるな)


夕暮れの光が差し込む部屋で、すすむは静かに作業を続けた。

宿は少しずつ、確実に良くなっていく。


そしてその変化は、やがて村全体にも広がっていくのだろう――

すすむはそんな予感を抱きながら、次の部屋へと向かった。


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