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第16章 薄暗い夜と、次なる課題

第16章 薄暗い夜と、次なる課題


その日の夜。

宿屋の食堂は、油ランプの弱い光に照らされていた。

炎はゆらゆらと揺れ、壁に影を落とす。

すすむは、その薄暗さの中で、静かに夕食をとっていた。


皿の上には、余った豚肉を使ったポークソテー。

それをパンに挟み、簡易サンドイッチにしてかじる。


「……暗いな。」


すすむは思わず呟いた。

この世界の夜は、想像以上に暗い。

電気がないというだけで、こんなにも世界は違って見えるのかと、改めて実感する。


(何とかならないものか……)


通販魔法には、太陽光バッテリー付きのLEDライトが売られていた。

だが、あれは明らかにこの世界の技術水準を超えている。

下手に使えば、怪しまれるどころか、異端扱いされる可能性すらある。


すすむはため息をつき、サンドイッチをもう一口かじった。


その時、食堂の扉が開き、村の警備兵ブランが入ってきた。

鎧の金具がカチャリと鳴る。


「おお、すすむさん。こんな時間に食事ですか?」


すすむは軽く会釈した。


「ええ。余った豚肉で、サンドイッチを作っていたんです。」


ブランはテーブルの上に置かれた、残りのサンドイッチをじっと見つめた。

その視線は、まるで獣が獲物を狙うような真剣さだ。


すすむは苦笑し、皿を押し出した。


「よかったら、どうぞ。」


「い、いいんですか!?」


ブランは目を輝かせ、サンドイッチを手に取ると――

勢いよくかぶりついた。


「……っ! う、うまいっ!!」


食堂に響くほどの声だった。

リリアが奥から顔を出し、苦笑しながらその様子を眺めている。


「ブランさん、そんなに慌てなくても……」


「いや、これは……本当にうまい!

肉が柔らかいし、このパンとの相性が……!」


ブランは感動したように何度も頷き、あっという間に食べ終えた。


「すすむさん……ありがとう。

これで夜の警備も頑張れそうだ!」


すすむは微笑んだ。


「それはよかったです。気をつけてください。」


ブランは力強く頷き、夜の見回りへと向かっていった。


★★★★★


ブランが去った後、すすむは食器を片付け、リリアに声をかけた。


「リリアさん、ひとつ聞きたいんですが……

この宿に、お風呂はありますか?

シャワーでもいいんですが。」


リリアは少し驚いたように目を瞬かせた。


「お風呂……ですか?

そんなもの、この村にはありませんよ。

お風呂は、王都の貴族が入るものです。」


すすむは思わず固まった。


「……そうなんですか。」


「ええ。

村の人たちは、井戸の水を汲んで、時々体を流すくらいです。

寒い季節は、ほとんど水浴びもしません。」


すすむは内心で頭を抱えた。


(……それじゃあ、衛生状態は相当悪いはずだ。)



トイレも、ぼっとん式で、ものすごい匂いをしているし、

どうしたものか。


すすむは深くため息をついた。


「……本当にどうしたものか。」


清潔の概念が、現代日本とはまるで違う。

ホテルマンとして、衛生管理の重要性は骨身に染みている。

このままでは、宿屋の評価どころか、村全体の健康にも影響が出る。


(次は……体を洗う環境と、トイレの改善か。)


すすむは静かに考え始めた。


お風呂を作るには、燃料、水、排水の問題がある。

トイレを改善するには、構造そのものを変えなければならない。


(……建物LV1の魔法。

あれを使えば、何かできるかもしれない。)


すすむはランプの弱い光を見つめながら、

この村の“衛生改革”の構想を頭の中で組み立てていった。


「……やることが、また増えたな。」


だが、不思議と嫌ではなかった。

むしろ、胸の奥に小さなやる気が灯っていた。


すすむはわらベッドに戻り、

次の改善に向けて静かに目を閉じた。


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