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第15章 リリアの初めての本格料理と、家族の笑顔

第15章 リリアの初めての本格料理と、家族の笑顔


すすむは厨房を出て、裏口から馬車の方へ向かった。

もちろん、食材はすでに用意してある。

だが、リリアに“自然に見せるため”に、あえて馬車から取ってくるふりをした。


「お待たせしました。

これが、さっき政務官の方々にお出しした料理の材料です。」


すすむが袋を開けると、リリアは驚きの声を上げた。


「まあ……こんなに綺麗な野菜……!

それに、このお肉……薄くて柔らかそう……」


すすむは微笑み、まな板の前に立つリリアに声をかけた。


「では、リリアさん。

さっきの料理を、今度はあなたの手で作ってみましょう。」


リリアは緊張した面持ちで頷いた。


「は、はい……やってみます。」


★★★★★


まずはミネストローネから。

リリアは昨日見たすすむの動きを思い出しながら、野菜を刻み始めた。


「玉ねぎは……こう、でしたよね?」


「そうです。指を丸めて、刃を滑らせるように。」


すすむが優しくフォローすると、リリアの手つきは少しずつ安定していく。


鍋に油を入れ、玉ねぎを炒めると、甘い香りが広がった。


「……この香り、昨日も感じました。

これが……料理の香りなんですね。」


「はい。玉ねぎの甘みが出てきた証拠です。」


次に、ビーツとジャガイモのサラダ。

リリアは色鮮やかなビーツに驚きながらも、丁寧に角切りにしていく。


「こんなに綺麗な色……まるで宝石みたい。」


「料理は見た目も大事ですからね。」


そして、メインのシュニツェル。

リリアは薄切り肉に塩を振り、小麦粉をまぶし、卵液にくぐらせ、パン粉をつける。


「これで……いいんでしょうか?」


「ええ。とても上手です。」


油に肉を入れると、じゅわっと音が響き、衣が黄金色に変わっていく。


リリアは思わず息を呑んだ。


「……すごい……本当に、こんな風になるんですね……!」


すすむは微笑みながら頷いた。


「料理は、手間をかけた分だけ応えてくれますよ。」


★★★★★


午後4時を回る頃、すべての料理が完成した。

リリアは皿を見つめ、緊張した面持ちですすむに尋ねた。


「白谷さん……これで、いいでしょうか?」


すすむは一つひとつ味見をし、静かに頷いた。


「ええ。とても美味しくできています。

ハンスさんとレミーさんにも、きっと喜んでもらえますよ。」


リリアは胸に手を当て、ほっと息を吐いた。


「……よかった……!」


二人は皿を丁寧に盆に乗せ、宿屋の隣にあるリリアたちの家へ向かった。


★★★★★


家の中では、ハンスがベッドに横たわり、レミーが椅子に座っていた。

二人ともまだ痛みはあるものの、意識ははっきりしている。


「あなた……? その料理は……?」


リリアは微笑みながら答えた。


「白谷さんに教えていただいて、私が作ったの。

食べてみて。」


ハンスは驚いたように目を見開き、スープを一口飲んだ。


「……っ……これは……!」


レミーもサラダを口にし、目を輝かせた。


「お母さん……これ、すごく美味しい!

こんなの、食べたことないよ!」


ハンスは震える声で言った。


「王族が食べる料理のようだ……

いや……それ以上かもしれん……

リリア、お前が……これを……?」


リリアは照れくさそうに笑った。


「ええ。白谷さんに教えていただいて……」


レミーはシュニツェルを食べ終えると、皿を持ち上げた。


「おかわり……ないの?」


すすむは苦笑しながら答えた。


「今日はこれで全部なんです。

でも、また作れますよ。」


レミーは嬉しそうに笑った。


「じゃあ、明日も食べたい!」


ハンスも深く頷いた。


「白谷殿……本当に、感謝してもしきれん。

この料理は……心まで温かくなる……」


リリアはその言葉を聞き、目に涙を浮かべた。


「白谷さん……

もっと……もっと料理を教えてください。

私、この宿を……もっと良くしたいんです。」


すすむは静かに微笑んだ。


「もちろんです。

一緒に、良い宿を作っていきましょう。」


異世界の小さな宿屋に、

確かな希望の灯がともった瞬間だった。



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