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第14章 王宮以上の食卓と、宿屋に灯る希望

第14章 王宮以上の食卓と、宿屋に灯る希望


ローレントの部屋に料理を運び入れた瞬間、

政務官は目を見開き、皿の上に並ぶ色彩豊かな料理を凝視した。


「……これは……本当に、この宿屋の料理なのか?」


すすむは丁寧に頭を下げた。


「はい。新鮮な食材が手に入りましたので、それを使って準備いたしました。」


ローレントは信じられないというように皿へ手を伸ばし、

まずはミネストローネを一口すくった。


スープが舌に触れた瞬間、彼の表情が変わった。


「……っ……これは……」


すすむは静かに見守る。


ローレントは震える声で続けた。


「王宮に赴いた際、王宮料理長の食事を口にしたことがある。

だが……これは……それ以上だ……!」


リリアが驚きの声を漏らす。


「そ、そんな……王宮以上だなんて……」


ローレントはスープをもう一口飲み、深く息を吐いた。


「信じられん……こんな辺境の村の宿屋で……

昨日まで、あの塩辛い肉と固いパンしか出てこなかったのに……

いったい何があったのだ?」


すすむは穏やかに答えた。


「新鮮な食材が手に入りましたので、

それを活かして料理を作らせていただきました。

お口に合えば幸いです。」


ローレントは返事もせず、次々と皿へ手を伸ばした。

ビーツとジャガイモのサラダを口にすると、目を閉じて味わい、

シュニツェルを噛むと、衣のサクサクとした音が部屋に響いた。


「……これは……本当に……素晴らしい……」


すすむは軽く頭を下げ、部屋を後にした。


★★★★★



次にマーカスの部屋へ向かう。

扉を開けると、マーカスは驚いたように皿を見つめた。


「……これは……本当に、俺たちのために?」


「はい。どうぞ召し上がってください。」


マーカスはスープを一口飲み、固まった。


「……うまい……

いや……うまいなんてもんじゃない……

こんな料理、食べたことがない……!」


彼は次々と皿へ手を伸ばし、

やがて黙々と食べ続けた。


すすむとリリアが見守る中、

マーカスは皿を空にし、名残惜しそうにすすむへ視線を向けた。


「……おかわりは……ないのか?」


すすむは申し訳なさそうに微笑んだ。


「すみません。今日の分はこれで全てです。」


マーカスはしばらく黙り、

やがて照れくさそうに笑った。


「……なら、夜の食事を楽しみにしているよ。」


その言葉に、リリアは胸に手を当て、ほっとしたように息を吐いた。


「白谷さん……本当にありがとうございます。

政務官様たちが、こんなに喜んでくださるなんて……」


すすむは微笑んだ。


「いえ、喜んでいただけて何よりです。」


リリアはふと、寂しげな表情を浮かべた。


「……政務官様を優先するのは当然です。

でも……ハンスとレミーにも、早く元気になってもらいたい。

あの子たちにも、この料理を食べさせてあげたい……」


すすむは静かに頷いた。


「ええ。必ず、二人にも食べてもらいましょう。

そのためにも、まずはレシピを覚えていただく必要がありますね。」


リリアは驚いたように目を見開いた。


「わ、私が……ですか?」


「はい。

私がずっとここにいられるわけではありませんから。

この宿の料理を良くするには、リリアさんが覚えるのが一番です。」


リリアは胸に手を当て、深く頷いた。


「……お願いします。

私、頑張ります。」


すすむは微笑み、厨房へ向かった。


「では、もう一度最初から説明します。

まずは野菜の切り方から――」


リリアは真剣な表情で、すすむの隣に立った。


異世界の宿屋に、

新しい“おもてなし”の灯がともり始めていた。

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