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第11章 政務官たちの不満と、すすむの提案

第11章 政務官たちの不満と、すすむの提案


ローレントの部屋をノックし、村長ローガンとリリアと共に中へ入ると、

政務官ローレントはベッドに横たわりながら、薄く目を開けた。


「……ああ、やっと来たか。」


その声には、疲労と苛立ちが混じっていた。


すすむは丁寧に頭を下げる。


「体調はいかがですか。痛みはありますか?」


ローレントは顔をしかめ、吐き捨てるように言った。


「痛いに決まっているだろう。

まったく……こんな辺境の村に来てやったというのに、

この有様だ。」


リリアが申し訳なさそうに俯く。


「申し訳ありません……寝具も食事も、十分ではなく……」


ローレントはさらに不満を重ねた。


「寝具は硬いし、部屋は寒い。

食事は塩辛い肉と固いパンだけ。

これでは怪我人を休ませる環境とは言えん!」


村長ローガンも、ただ静かに聞くしかなかった。

政務官は村にとって重要な存在であり、逆らうことはできない。


すすむは、ホテルマンとして慣れた“クレーム対応”の感覚で、

ローレントの言葉を一つひとつ受け止めていく。


(……不満を言わせるのも大事だ。

まずは、気持ちを吐き出してもらうこと。)


ローレントはしばらく文句を続け、やがて疲れたのか、息を吐いて横になった。


「……もういい。

とにかく、早く怪我を治したい。

休ませてくれ。」


すすむは静かに頭を下げ、部屋を出た。


続いて、隣の部屋――助手マーカスの部屋へ向かう。


扉を開けると、マーカスはベッドに腰掛けていた。

ローレントよりは落ち着いているが、やはり不満は隠せない様子だ。


「……ああ、来てくれたのか。」


すすむが丁寧に挨拶すると、マーカスは苦笑した。


「助けてくれたことには感謝している。

だが……この寝具はさすがにきついな。

背中が痛くて眠れない。」


すすむは頷いた。


「ええ……私も昨夜、同じベッドで寝ましたので、よくわかります。」


マーカスは驚いたように目を見開いた。


「あなたも?

……そうか、旅人でも辛いのか。」


「はい。

ですから、改善できるところは改善したいと思っています。」


マーカスはしばらく黙り、やがて真剣な表情で尋ねた。


「……あなたは、どこであの応急処置の道具を手に入れた?

あれは、この辺りでは見たことがない。」


すすむは一瞬だけ迷い、しかし落ち着いた声で答えた。


「旅の途中で手に入れた品です。

商売のために持ち歩いていました。」


マーカスは納得したように頷いたが、どこか考え込むような表情を見せた。


「……そうか。

あなたは、ただの旅人ではなさそうだな。」


すすむは微笑み、軽く頭を下げた。


「いえ、ただの旅人ですよ。

困っている方を助けたいだけです。」


マーカスはそれ以上追及せず、ベッドに横になった。


「……すまない。

少し休ませてくれ。」


すすむは静かに部屋を出た。


廊下に戻ると、村長ローガンとリリアが心配そうにすすむを見つめていた。


「白谷さん……どうでしたか?」


すすむは二人に向き直り、落ち着いた声で答えた。


「お二人とも、不満は多いですが……

それは、怪我をして不安な状態だからこそです。

まずは、休める環境を整えることが大切です。」


リリアは不安げに眉を寄せた。


「でも……この村には、そんな立派な寝具はありません。

どうすれば……」


すすむは静かに微笑んだ。


「大丈夫です。

改善できる方法があります。」


村長ローガンが驚いたように目を見開く。


「ほう……白谷殿、何か考えがあるのか?」


すすむは頷いた。


「はい。

まずは、寝具を整えましょう。

それだけで、休息の質は大きく変わります。」


リリアは息を呑んだ。


「寝具を……どうやって?」


すすむは静かに答えた。


「少し、準備してきます。

任せてください。」


ホテルマンとしての経験と、異世界の魔法。

その二つを組み合わせた“おもてなし改革”が、いよいよ動き出そうとしていた。


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