第116章 ボルトン参戦 ― 秘密結社、最後の一押し
第116章 ボルトン参戦 ― 秘密結社、最後の一押し
マリーの怪我が癒え、すすむの護衛に復帰した頃。
グレン村の裏側では、ある“秘密結社”が静かに動き出していた。
その名も――
秘密結社「すすむを結婚させる会」。
メンバーは、ギルバート、村長、そしてリリア。
彼らは、すすむの幸せのため(と称して)、あの手この手で結婚へと導こうとしていた。
そして、次なる作戦の主役に選ばれたのは――
ガストン冒険者ギルドのギルマスター、ボルトン。
マリーの異母姉妹であり、姉としての威厳と、ギルマスとしての強さを兼ね備えた女性だった。
村長は、ガンツを呼び出した。
「ガンツよ、頼みがある」
「なんだ、村長。珍しく真剣な顔してるな」
「これを……ガストンのボルトン殿に届けてほしい」
村長は、一通の封書を差し出した。
封蝋には、グレン村の紋章が刻まれている。
「……内容は聞かない方がいいか?」
「うむ。
これは、すすむ様の未来に関わる大事な手紙じゃ」
「……また、あの結婚作戦か?」
「しっ! 声が大きい!」
村長は慌ててガンツの口を塞いだ。
「と、とにかく……頼んだぞ」
「わかったよ。
馬のいない馬車で、すぐに届けてくる」
ガンツは、村長の真剣さに押され、手紙を受け取った。
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ガストン冒険者ギルド。
ギルマスター室で、ボルトンはガンツから手紙を受け取った。
「グレン村から……?
村長が私に手紙とは珍しいわね」
封を切り、内容を読んだ瞬間――
「……は?」
ボルトンの眉が跳ね上がった。
そして、読み進めるにつれ、表情が険しくなり――
最後には、机を叩いた。
「ちょっと待ちなさい……!
マリーが……すすむと……?
結婚……!?」
ガンツは、思わず後ずさった。
「お、おい……落ち着けよ、ボルトン」
「落ち着いていられるわけないでしょう!!
あの子が……あの子が……!」
ボルトンは、手紙を握りしめた。
「ガンツ、馬車を出しなさい。
今すぐグレンに行くわ!」
「お、おう……!」
こうして、ボルトンは怒涛の勢いでグレン村へ向かった。
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グレン村に到着したボルトンは、馬車から降りるなり、ギルバートの元へ向かった。
「ギルバート!!」
「お、おお……ボルトン!?
なんでこんな急に……」
「村長から手紙を受け取ったわ。
あなた、すすむを説得しなさい!」
「せ、説得って……何を……」
「結婚よ!!」
「……ああ、やっぱりその話か」
ギルバートは、頭を抱えた。
「お前も秘密結社の一員だったのか……」
「違うわよ!
私は姉として来たの!
マリーが……あの子が……!」
ボルトンは、深呼吸して言った。
「マリーは、すすむのことが好きなのよ。
でも、あの子は自分の気持ちを押し殺すタイプ。
誰かが背中を押してあげないと、ずっと一人で抱え込むわ」
「……確かに」
「だから、あなたはすすむを説得しなさい。
私はマリーを説得するから」
「わかった……!」
二人は、力強く頷き合った。
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ボルトンは、グレンインの二階に向かった。
マリーは、すすむの護衛として廊下に立っていた。
「マリー」
「……お姉様?」
マリーは驚いた表情を見せた。
「どうしてここに……?」
「あなたを迎えに来たのよ」
「え……?」
ボルトンは、マリーの手を取り、部屋に連れ込んだ。
「マリー、正直に言いなさい。
すすむのこと、どう思ってるの?」
「そ、それは……」
「好きなんでしょう?」
「……っ!」
マリーは、顔を赤くして俯いた。
「私は……護衛です。
すすむさんを守るのが役目です。
それ以上のことは……」
「役目とか関係ないわよ!」
ボルトンは、マリーの肩を掴んだ。
「あなたは、すすむのことが好き。
すすむも、あなたを信頼している。
だったら、素直になりなさい!」
「で、でも……私は……」
「マリー。
あなたは幸せになっていいのよ」
マリーの目に、涙が浮かんだ。
「……お姉様……」
「すすむのそばにいたいんでしょう?」
「……はい……」
「なら、行きなさい。
あなたの気持ちを伝えるのよ」
マリーは、震える声で答えた。
「……わかりました……」
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一方その頃。
ギルバートは、すすむを冒険者ギルドに呼び出していた。
「すすむ、ちょっと話がある」
「どうしたんだよ、ギルバート。
なんか怖いんだけど……」
「お前……マリーのこと、どう思ってる?」
「ぶっ!!」
すすむは、またしても変な声を出した。
「な、なんで急に……!」
「いいから答えろ」
「そ、そりゃ……大事な仲間だし……
信頼してるし……
守ってくれてるし……」
「好きなんだろ?」
「ち、違う!!
そんな……!」
「じゃあ聞くが、マリーが他の男と結婚したらどう思う?」
「えっ……」
すすむは、言葉を失った。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるような感覚。
想像しただけで、息が苦しくなる。
「……いやだ……」
「ほらな」
ギルバートは、にやりと笑った。
「お前、マリーが好きなんだよ」
「……っ!」
「だったら、素直になれ。
マリーも、お前のことが好きだ」
「……本当に……?」
「ああ。
だから――結婚しろ」
「け、結婚!?
いきなりそんな……!」
「いきなりじゃねぇよ。
お前ら、ずっと一緒にいたじゃねぇか」
すすむは、しばらく黙り込んだ。
そして――
「……わかった。
俺……マリーと結婚する」
ギルバートは、拳を握りしめた。
(よしっ……!)
★★★★★
夕方。
グレンインのロビーで、すすむとマリーは向かい合っていた。
「マリー……」
「すすむさん……」
二人は、同時に口を開いた。
「俺と――」
「私と――」
「「結婚してください!」」
しばしの沈黙。
そして――
「……はい」
「……ありがとう」
二人は、照れながらも微笑み合った。
その様子を、柱の陰から覗いていた二人がいた。
ギルバートとボルトンである。
「やったな……!」
「ええ……!」
二人は、拳を軽く合わせた。
「よしっ!」
その声は小さかったが、確かな達成感がこもっていた。
こうして、秘密結社「すすむを結婚させる会」は、
ついに目的を達成したのであった。




