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第108章 グレンホテル新章 ― 変貌する街と人々の息遣い

第108章 グレンホテル新章 ― 変貌する街と人々の息遣い


すすむは、静かに深呼吸をした。

 目の前に広がるのは、かつて「グレンホテル」と呼ばれていた一角

――いや、今やその呼称では収まりきらないほどの巨大複合施設へと変貌を遂げつつある区域だった。


レベルアップによって新たに解放された「ビジネスホテルC」。

 その設置能力を得た瞬間、すすむの頭の中には、これまでの宿泊施設群の課題と、街の成長に伴う需要の変化が一気に流れ込んできた。


コンテナ客室は、開拓初期には十分だった。

 半円形コテージも、旅人や冒険者に人気だった。

 ビジネスホテルAも、当時としては画期的な設備だった。


だが――。


「もう、あの規模じゃ追いつかないよな……」


すすむは呟き、視線を遠くに向けた。

 街の人口は増え、冒険者ギルドの活動範囲は広がり、商人たちの往来も活発になった。

 そして何より、グレンホテルは街の象徴として、より高いレベルのサービスが求められるようになっていた。


だからこそ、すすむは決断した。

 古い施設を撤去し、その跡地にビジネスホテルCを二棟――。


12階建ての巨大な建物が、魔法陣の光とともにゆっくりと姿を現したとき、周囲にいた住民たちは思わず息を呑んだ。


「す、すげぇ……」

「これが……新しいホテル……?」

「なんて立派なんだ……!」


ロビーは吹き抜けで、磨き上げられた床が光を反射して輝いている。

 大レストランは、これまでのホテルの規模を遥かに超え、厨房もプロの料理人が歓喜するほどの設備が整っていた。

 男女大浴場は、まるで温泉旅館のような広さと豪華さ。

 屋外プール、卓球場、ゲームセンターまで備え、宿泊者だけでなく街の住民も利用できるように設計されている。


客室も、これまでとは比べ物にならないほどの快適さだった。

 小型120室、中型42室、大型20室――。

 用途に応じて選べるバリエーションは、冒険者、商人、観光客、長期滞在者など、あらゆる層を受け入れるためのものだ。


「これで……グレンホテルは、ビジネスホテルBが二棟、ビジネスホテルCが二棟……か」


すすむは、胸の奥にじんわりとした達成感を覚えた。


★★★★★


ホテルの建設が一段落した頃、鍛冶屋集団「鋼の匠」の代表ガンツが、すすむのもとを訪れた。


「親方、ちょっと相談があるんだが……」


「どうした、ガンツ?」


「うちのドワーフの人数が、また増えてな。

 今の宿舎じゃ手狭になってきたんだ。

 できれば、新しい従業員宿舎を建ててもらえねぇか?」


ガンツの言葉に、すすむは頷いた。

 鍛冶屋集団の成長は、街の発展に直結している。

 武具の供給、修理、加工――彼らの存在は、冒険者たちにとって欠かせないものだった。


「わかった。従業員宿舎Bを建てよう」


12階建て、3LDK、96戸。

 家族持ちの職人も増えてきたため、広めの間取りが求められていた。


建設が完了すると、ガンツは目を丸くした。


「お、おい……これ、本当にうちが住んでいいのか……?」

「広すぎる……! 贅沢すぎる……!」

「いや、でも……ありがてぇ……!」


ドワーフたちは、頑丈な建物と広々とした部屋に大喜びだった。


★★★★★


従業員宿舎Bの建設が終わった直後、今度はギルド職員のギルバートが駆け込んできた。


「す、すすむ殿! お願いがあるのです!」


「どうしたんだ、ギルバート?」


「ギルド職員の宿舎も……建てていただけないでしょうか?

 最近、職員が増えてきて、住む場所が足りなくなってきまして……」


すすむは苦笑した。


「わかったよ。じゃあ、同じ従業員宿舎Bを……四棟建てよう」


「よ、四棟も……!? よろしいのですか……!」


「街のためだしな」


建設が完了すると、ギルバートは部屋の中を見て、目を輝かせた。


「こ、これは……! 広い……! 明るい……!

 収納も多い……! なんて住みやすい……!」


ガンツとギルバートは、まるで子どものように部屋の中を走り回り、設備を確認しては歓声を上げていた。


「すすむ殿……本当にありがとうございます……!」

「これで、職員たちも安心して働けます!」


すすむは、二人の喜ぶ姿を見て、自然と笑みがこぼれた。


★★★★★


こうして、グレンホテルは大規模なリニューアルを果たした。


ビジネスホテルB ×2棟

 ビジネスホテルC ×2棟

 従業員宿舎B ×4棟(冒険者ギルド職員用2棟、鍛冶屋集団「鋼の匠」用2棟)


複数の建屋が整然と並び、街の中心部はまるで新しい都市のような景観を生み出していた。


街の住民たちは、変わりゆく景色に驚き、そして誇りを感じていた。


「グレンの街も……大きくなったなぁ」

「昔は小さな宿場町だったのに……」

「これも、すすむ様のおかげだな」


すすむは、街の人々の声を聞きながら、胸の奥に温かいものが広がるのを感じていた。


だが――。


彼の視線は、さらに遠くを見据えていた。


街はまだ発展の途中だ。

 冒険者たちの活動範囲は広がり、商人たちの往来は増え続けている。

 新たな産業、新たな施設、新たな課題――。


「まだまだ、やることは山ほどあるな」


すすむは、静かに拳を握った。


グレンホテルのリニューアルは、街の未来への第一歩にすぎない。

 これから先、どれほどの変化が待ち受けているのか――。


その答えを知るのは、まだ少し先の話である。



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