神の慈悲
何もない。ただ真っ白な空間。
気が付くとそこに寝ていた。頭が働かない。死んだのか何なのか。
(勇司。私のかわいい人の子よ。)
何者かが声をかけてきた。いや、頭の中に直接語り掛けてきた?
鉛のような重い体を動かす。俺は中肉中背の普通の一般人である。それでも座位をとるのに時間がかかった。
(汝、人生をやり直したいか?)
目の前に威厳のある姿の人?と思わしき人物が立っていた。中世的な顔で男性とも女性ともとれる。しかし、答えられない。
(ふむ。思考回路が働いていないか。)
その人物が手を翳すと。頭の靄が晴れて、体も軽くなった。
「あの、貴方は?」
(私は神だ。汝に改めて問う。人生をやり直したいか?)
神?何故に神?人生をやり直す?ってことは俺、死んだのか?
少しずつ思い出す。確か、酷い鬱になり、体が動かず3日ほど寝て過ごしていた。原因は思い出せないがよっぽどだったのだろう。
状況を整理し、とりあえず【受容】した。下手に何かしても変わる気がなかったからだ。
では、人生をやり直す?いわゆる転生か?
(いや、異世界に転移し、そこで暮らしてもらう。)
当たり前のように思考を読んできた。そうだよね。神だもんな。今のままだと死ぬしかないのなら……。
俺は頷くと
(わかった。)
神は手を振り上げると俺は意識を失った。




