プロローグ 全ての始まりは
【理想の世界?】
「……せやから、心遣いが根本にあって手段として言葉遣い、気遣い、敬意なんかがあるんや。」
俺は教壇に立ち、関西弁でみんなの前で介護について教えている。
受講者は身分、種族も様々である。貴族の使用人や商人、一般人の老若男女問わずワーキャット、ドワーフ、エルフ等の亜人族から、ゴブリン、オークや魔族の人も自分の話を聞いて頷いたり、メモを取っている。
窓から差し込む柔らかな光が、教室を温かく照らしているのにみんな眠くならずに真剣に聞いてくれている。なんともありがたいことや。
「これは俺自身の考え方でみんなとは違うかもしれへんけど、介護福祉は相手の『個性』を尊重するんや。身分も種族も関係ない。障害も病気も強みも弱みも全部含めてその人なんや。知識は教えられるけど付き合い方はそれぞれ自分に合った方法でお互い認め合っていけたらそれでええ。」
しばらく話が進み、質疑応答の時間になると一人のワーキャットの子が手を挙げて質問してきた。
「せんせー、せんせーはなんでこの仕事をしてるんだみゃ?」
興味本位で単純に聞きたいだけやろうけど人の領域に入ってくるなぁ。まぁ、ええけど(笑)
その辺りも後日教えていけばいいか。
「別に答えてもええけど話が長くなるからこれは宿題にしようか。みんな協力して町の人たちに聞いてみてー。次の講義で聞かせてもらうわ。」
講義を終え、俺は建物の屋上から街を見下ろしながら風にあたる。
ここにきた当時を懐かしむように振り返った。




