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第7話 神様の自己主張

 そんなこんなで順調に時間は進み、気が付けば猫救出依頼から一年、つまり俺が転生したことを思い出してから一年が経過していた。

 今年で俺は大体十三歳。町からの脱出計画のリミットまであと約二年から三年と言うところか。

 ギルドが俺にタトゥーを入れる時期は、体格を見ながら決めるので年齢自体は適当らしい。そもそも誕生日が分からないのだからそれも当然だろう。


 そうそう、言い忘れていた。

 この国の冒険者ギルドは『冒険者統一協会』と言う組織によって統括されているが、その組織は平民のことなどどうでも良いと思っている貴族達が支配している。

 そして各地域の冒険者ギルドは基本的に協会とはあまり仲が良くない。と言うより寧ろ悪い。

 各地域のギルドは貴族ではなく平民の出の者が統治しており、毎年毎年かなりの割合でろくに働きもしない協会に上納金を納めなければならないからだ。

 しかも協会から天下りを押し付けられ、口先だけの貴族の言いなりになって動くしかないのだ。ギルドマスターや役員達はいつもペコペコと無能な天下りに頭を下げるのが仕事である。

 だが、そのお陰で俺がこの町から逃げて他の町の冒険者ギルドに別名で登録しても、俺の顔を知っている者がそこに居なければバレないと言うメリットがある。

 協会が各地の冒険者ギルド同士で上納額を競い合わせ、意図的に協力関係ではなく敵対関係を産み出させているので余程有名人の子供でなければ身バレはしない。

 そのことがあるから俺が脱出計画を立てようと決意出来たのだ。


 それにしても、この一年でも神様からのコンタクトは一度も無かった。

 ならばと一度町にある教会を訪ねてみたが、女神像しかなかったので回れ右。俺だってあんな訳の分からないケチな男の神様より、話の分かる美人の女神様に転生させてもらいたかった。

 自分を祀る習慣が無い世界に下僕の俺を送り込んだと言うのも今一つ意味が分からないが、あの神の何かの縛りプレイなのか、それとも照れ屋で自分は人前に出ないタイプなのか。

 まさかこの世界はアイツにとってはゲーム世界で、俺を駒にして動かして遊んでいるだけじゃないよね?

 例え駒扱いだとしても、前世の俺よりマシな性格になっている(と思う)ので、それに関しては素直に感謝だ。


 感謝と言えば、お供えってした方が良いのかな?

 すっかり忘れていたけど、毎日お供えするからって言った気がしてきた。

 まさか本当にお供え待ちだったりして。

 だけど神棚とか祭壇とか、どうやれば良いのか分からない。

 形式には拘らず、何でも良いからやれば済むのか?

 岩にしめ縄の真似したロープを掛けるだけでも良いならラクで助かるのだが。


「どうせアイツのことだ、陰で聞いてるんだろ。

 祭壇もお供えも無くても構わないよな!」


 そう言った途端に頭がギチギチと締め付けられた。馬鹿になるから止めてくれ!


「ロープ! ロープ! やめローーープっ! 」


 突然訳の分からないことを言って苦しみ出すって危ない人だろ。

 神様にもロープが通じて助かったよ。けど、四秒も攻撃を続けるって、五秒で反則のプロレスルール知っててわざとだろ?


「やっぱお供え欲しいんだ……俺じゃ大してろくな物は供えれないけど、それでも文句は言わないよな?」


 頭に反応無し。ブツは俺に任せるつもりだな。


「なら、祭壇とか神棚とかは無くてもいいよな?」


 ギリリリリっ!


「作るからっ!」


 ゼーハーゼーハーっ!

 とんだドSの下僕になったと後悔する。神様との交信が命懸けってどんな嫌がらせなんだよ。

 毎回これだとさすがに俺でも頭に来る。違う方法は無いのか?

 祭壇作るにしても、どんな形が希望なのか分かりゃしないし。連絡方法も決めずに送り出すなってんだよな。

 今はだだっ広い公園の草むしりの最中で、言われてはいないが転んでも怪我をしないように小石をどけていた。

 その小石を使って地面に絵を描いていく。

 岩にロープって習慣はさすがに無いだろう。お地蔵様単体、祠とお地蔵様、家の中に作る神棚、俺が用意出来るのはこの三種類程度かな。

 さすがに神社とか寺院とか建てるのは俺には無理だし。

 その三つの案の下に自分の頭のつもりの絵を描く。中国三大奇書の一つに出てくる猿人間が付けているキンコジ付きだ。俺には天竺に行く予定は無いけど。


「意味は無いけど三択ロースだ、嫌なのがあれば絵の頭を締めてくれ」


 やはり神様には見えてるらしく、一瞬でお地蔵様の下の二つ俺が吹き飛んだ……本気で俺を殺す気か?


「神棚にお供えを備えて欲しいのか。素人の手作りだから、不出来なのは我慢してくれ」


 頭に何もないので了承したってことだな。

 巫女が短命な設定のやつって、まさか毎回こうやって頭をギチギチやられてるからだとしたら、激しく同情しておこう。

 ホットライン用の携帯電話を送ってくれないかな。駄目だ、魔力か何かの容量オーバーするからってケチ付けて断られるに決まってる。


 絵を消してから移動しつつ草むしりを続けていたら、真っ赤な毒キノコのカエンタケのような物が生えていたのを見付けてしまう。

 こう言う不審な物体は触らずに管理者に連絡しておかなきゃ。

 本物だと触るだけで火傷するとか言われてるけど、実際はキノコの汁にそういう成分があるらしい。

 だからと言って素手で触るのは嫌だ。

 そのカエンタケ?の側には大きな木が立っていて、下にはトゲのある殻に覆われた栗みたいなのが落ちている。三角の木の実だからブナの木かな?

 折角見付けたから、仕事が終わったら後で実を回収させてもらおう。

 赤いキノコがカエンタケなら食べたら死ぬけど、この木の実なら多分食べられる。


 記憶が戻ってから一年が過ぎたけど、四季のようなものは殆んど感じなかった。

 寒くても暑くても人は死ぬから、四季なんて無い方が貧乏している俺には有難い。

 キノコが生えるのも木の実が成るのも普通なら秋だけど、ここじゃ季節は関係無しに野菜とか麦とか出来てるし、動物も魚もポンポン簡単に増える。

 実が落ちているから今の季節は秋、なんて先入観は出来ない世界。

 食べ物がゲットしやすいって意味ではイージーモードだけど、なんだか良く分からない世界に来たもんだよ。


 後日この公園に呼ばれて来てみたら、カエンタケぽいのは別のキノコらしく、食べても死ぬことは無いが美味しくもないとのことだった。

 一体誰が食べたんだろ? 怖くて聞かないけど。

 ブナの木の実はたくさん拾えたので、掘っ立て小屋に戻ってから煎って食べたら美味しくて泣けてきたよ。

 だって俺用にと思って横に避けといたやつまで、チビッ子達に食べられてしまったから。



「あの野郎、やっとお供えを送る気になったのか。

 まさか養殖している魚を生で送るつもりじゃあるまいな」

「お供えの内容次第でガチャチケポイントの貯まり方も変わりますからね。

 と言っても私のキャラはお供えなんてする余裕も無いですけど」


 そう言ってケント神が表示させたキャラは、所属していた盗賊団の壊滅後からどこかの山中でひっそり自給自足の生活を送っている。

 50歳を過ぎてから異世界での一人暮らしは厳しいものだが、そこは転生ボーナスのお陰で一般人より図太く生き抜くことが出来ている。


「次長のキャラも山で一緒に暮らしませんか?」

「医療過誤で亡くなった80歳の老人転生者の担当になったお前には同情するが、俺のキャラを巻き込むな」


 人によっては憧れのスローライフを満喫しているとも取れる部下のキャラは、晴々とした笑顔を見せながら今日も元気に畑を耕しているのだった。

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