第70話 飽きたって?
13歳の子供を村長に任命ってとんでもない重責を担わせるパワハラか? それとも苛め?
いや、それ依然に任命した人の正気を疑われるよね。それが領主様なら尚更だ。
「念押しで確認しますけど、本当に俺を村長にするつもりなんですね?」
「私の目と耳を疑うつもりがあるなら、それでも構わぬよ」
「……謹んで拝命致します……です」
「よろしい」
コレ、完全に脅しだよね?
正直言ってそこまで俺に固執して欲しくないんだけど、正式な開拓の依頼なら人、物、金を援助してくれるだろうから、それなら素直に承けて心証を良くしておいた方が良い。
それでうまく行かなかったら領主様の人を見る眼が無かったんだと笑えば良い。俺は知識チート出来る程、組織運営には詳しくないんだよ。
大学卒業して会社に勤めたのは三年程だし、学生時代にそれほど小説を読み込まなかったからな。
こんなことになるのなら、ニートやってる間にもっと内政チートのラノベを読んでおくんだったよ。いつも読むのも書くの主人公最強系だったしな。
「村を作る位置は決まってるの?」
「バリシアから半日の所にある宿泊地付近が候補になっておる」
「近いのは有難いね」
「その村が軌道に乗ったら次の村の開拓に移るかも知れんぞ。それか代官に任命されるかものぉ」
「代官? バリシアって領主様が治めてるんだよね?」
ヤバい、代官って商人とグルになって時代劇で越後屋さんとグルになって悪いことやってるイメージしかない。本当はどんな役職だっけ?
「領主様が一人で全てのエリアを見ることは出来んのは分かるじゃろ?
バリシア中にも幾つかの村や町があって、それぞれに村長、町長が任命される。何の価値も無い土地か、魔物が多すぎたり強過ぎる場所は村にも町にもならず、バリシア領の一部扱いじゃな。
バリシア領主は階級は緑色の中級貴族で、正式の場での呼び方はグリュン・バリシア卿じゃ」
「緑色? 何それ?」
緑色や中級とか言われても困るよ。普通は伯爵とか子爵とかでしょ?
「貴族の階級は虹の色に見立てておってな、下から言うと紫色の準貴族、藍色の準初級貴族、青色の初級貴族、緑色の中級貴族、黄色の上級貴族、橙色の準王級貴族、最後に赤色の国王となる。
一気には覚えられんじゃろうから、赤色が王で橙色が王家、黄色がバリシア領主より勢力の大きく国境警備に当たる貴族と覚えれば良い」
虹の色? マジかょ、めっちゃ分かりにくいって!
「意識せんでもバリシア領主の出す手紙には緑色で家紋が押されておるし、階級章にも緑色のラインが入っておるから見れば分かる」
「虹なんてそう見ないから分かりにくいと思ったよ」
「一等、二等みたいな付け方よりシャレオツじゃと思うがの。
それでプライゾン国内を四人の上級貴族、十数人の中級貴族、何人かの初級貴族で分割統治をしておる」
「それでバリシアの中を初級貴族と準初級貴族に町や村を管理させてる訳だね」
「そうじゃよ。それで統治する貴族が居らん町村に代官を派遣するんじゃ。だからお主が村長か代官じゃな」
代官は町長や村長の代わりの役所だね、了解……ってことは、やっぱり貴族階級になるんじゃない?
村長レベルならその辺のオジさんって感じだし、町長なら会社の部長級だと思えばそれなりに付き合えるけどさ。
「孤児から代官になれる者などそうは居らんぞ。
お主がそれを実現し、プライゾンドリームを掴み取るのじゃっ!」
「あの、そんな夢持ってないから」
「なんじゃぃ、つまらん。ノリが悪いの」
「ノリで代官なんかになったら後悔するよ。俺はこれからずっと安全運転で生きて行きたいだけなんだし」
「男の三道楽ぐらい覚えて損はせんぞ。ミイナの尻に敷かれんように男を見せてみい」
三道楽って酒を飲む、博打を打つ、女を買うって言う江戸時代の財布に余裕がある男性の楽しみ方だよね?
残念だけど、年中金欠の俺にそんなの無理。
ズキッ!
えっ? 急に頭が痛くなって……あぁ、ダメなパターン
「セルバンっ! おい、しっかりしろっ!」
◇
「うーむ……」
「あれ? 次長どうしたんですか? 一週間出てない人みたいな顔してますよ」
「セルバンがな……」
「はい? まだ生きてますよ。しかも掘っ立て小屋村がいつの間にか領主公認の村になってるじゃないですか。何も問題無いですよね?」
「安全運転し過ぎて地味過ぎる。もっと魔物を狩りに出ていってくれんと儂が飽きる」
「あーっ、察し。
確かにジェネラル倒して移行、一回も外に出てませんからね。
ほぉ、今度は町の外に村を作るんですか。そうなったら更に狩りに出る機会が無くなりますよね」
「それだ」
そこでジロー神がビシッと指を差す。
「毎日ログインボーナスを貯めておるのに、あの軟弱者は全然狩りに出んから戦闘系のアイテムを使う機会が無いっ !」
「それは次長が適当に、キャラメイクしたから仕方ないじゃないですか」
「……確かにそうだな。
しかし、今日やっとキャラリセット可能な激レアチケットが手に入った」
ここでジロー神が何処かから一枚のチケットを取り出した。
「えっ? まさか『下僕チェンジャー』を引いたんですか?」
「そうだ。コイツは無課金でも別のキャラとマイ下僕を交換することが出来る。
次のキャラはランダムだが、セルバンよりつまらん人間はそうは居らんだろう。
やはり戦闘要素が無いとゲームは楽しめんからな」
珍しくケント神が少し顔をしかめながら、指でコメカミをトントン叩いて何か考える。
「私がうっかり殺してしまったから、次長が仕方なくセルバンの面倒を見るって話だった筈なんですけど、キャラを変えて良いんです?」
「アイツは孤児から村長に出世したんだぞ。それにミイナと婚約もしたし、もうこれで十分幸せになっただろ?」
「幸せの価値は人それぞれですけど。
次長がそれで幸せだと判断したなら、まぁそれで大丈夫ですね。
じゃあ、早速やっちゃいましょう、レッツ キャラチェンジっ!」
「お前が仕切るな。
だが、まぁ良い。行くぞ、俺のターンっ! セット・下僕チェンジャー! 発動っ!」
「……ダサっ」
「……文句は運営に言え」
ジロー神が人差し指と中指で挟んだチケットが金色の光を発し、宙に浮くディスプレイへと吸い込まれて行った。
キラキラと輝きながら金色の粒子となったチケットが、ゆっくりとセルバンの体を包み込む。するとセルバンが頭を押さえて苦しみ始めたのだ。
「さらばだ、我が下僕よ」
「あれ? 前に使った時はこんな効果は無かったですけど。おかしいな」
「おかしいだと?
キャラのステータスとかで体への負担が変わってくるだけではないのか?」
「私が下僕チェンジャーを使った時は、すぐに空き缶ガチャ画面に変わって既存のNPCから新下僕を選ぶガチャを引けたんです。ガチャ画面が出なかったので、恐らくバグったんじゃないかと」
「うっかりで送り込んだ魂に下僕チェンジャーを使うとバグる、とか?」
「運営に問い合わせてみますね」
ケント神が新しいウィンドウを立ち上げて何やら操作すること数分。
「返事が来ました。
うっかり魂転送への下僕チェンジャーの使用は、どうやら禁止事項に該当するそうです」
「まさか死ぬまで俺が面倒を見ろと?」
「平たく言えばそうです。で、使ってしまった場合の措置ですが、使用者に対しては一年間の二割給与カット、これはボーナス含む。
使われた下僕に対してですが、実はこのケースは運営も想定していなくて、セルバンが初めてみたいなのでどうなるかが分からないそうです」
「……かなりマズイかもな」
「えぇ、これでセルバンが死ぬようなら次長は更迭されて私が次長になります、ありがとうございました」
「貴様っ! 図ったな!」
「さて、何のことでしょうね?」




