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第61話 進む先は

 今日のお昼は川魚のパーティーとなった。

 コクダイさんとロヒッカさんが手掴みで運良く大物をゲットしたからだ。

 さすが冒険者、やることが豪快だ。これでまたは子供達からの人気が赤丸急上昇間違いなしっ!


 両手に五十センチを越えていそうなナマズを手にしたコクダイさん、同じぐらいのマスみたいな魚を一匹持って悔しそうなロヒッカさんだ。

 ナマズは肉食性で、この川の中の生態系では頂点なんだよ。根絶は無理だけど、なるべく間引いてやらないと他の魚が減ってしまうからね。


「ここは鳥が結構集まってくるから、弓の訓練をするにも悪くないな」


 コクダイさんがナマズを捌きつつ、村の環境についての感想を述べる。


「麦畑でも作れば自給自足も出来るかも知れないけど、さすがに城壁の中じゃ無理だしね」

「いえ、元々先代の領主様は籠城戦を見越して大きな城壁を建造していますよ。

 さすが次期危機管理部役員候補。良いところに気が付くね」


 そんな地味な部署はいやだ~!

 ジェルダさんはどうしても俺を閑職の道に引き込みたいらしい……閑職? 意外と悪くない、のか?


「ただ、守りきるには相応の兵力が必要だからね。そっちを確保する方が大変かも知れないよ」


 それじゃ籠城できないよ。会ったことは無いけど先代領主が駄目人間に思えてきた。

 やっぱりバランスって大事だよ!


「戦争になれば、他の地域からバリシアに軍を集めるつもりだったんだろうな」

「野戦で兵を減らすより、籠城して敵の補給を減らしつつ反撃の機会を待つのも立派な戦略だ」

「川を使っての水攻め、兵糧を駄目にする手も使えそうだからな」


 元傭兵のドルチェはこの無駄とも思える城壁に価値を見いだしていたのか。

 俺ももっと見る目を養わないと駄目だな。


「とは言っても、やり過ぎ感はある。

 広すぎると伝令は遅れるし、手薄な場所に素早く応援を送るのが難しい。

 モチベーションの維持の問題もある。

 籠城は戦法としてはありだが、援軍の到着が遅れれば内部崩壊の危険も孕んでいるから、始めから籠城ありきでの戦闘は考えものだな」


 今のところ、プライゾン王国とお隣のアンフォリン王国との間に火種は無いと言われているから、そこまで真面目に戦争のことを考えなくて良いと思う。


 むしろあり得るとすればモンスターの大量発生かな。

 俺が生きているうちには起きて欲しく無いけど、ゴブリンジェネラルの発生もあったし、絶対無いとは言い切れない。


「ゴブリンキングは産まれそうにないの?

 地震が起きてからだいぶ経つけど何も無いよね」

「それはなんとも言えんな。何年周期ってのも無いし、起きる理由も分からない。

 そうか、ゴブリンキングとの戦争になった時には、この城壁は役に立つな」


 これがフラグにならなきゃいいけどね。


「あ、そう言えばデボラと一緒に森に入った二人は見つかったの?

 遺体は無かったって聞いたけど」

「デボラを見捨てたのは英断かも知れんが、契約を一方的に破棄したことは冒険者として完全にアウトだからな。

 周りの村にも人相書きを回しているが、まだ見つかってはいないらしいな」


 英断ってとこは聞いてないことにして、人相書きが出回るとはビックリ。

 バリシアは城門が混雑する時間帯だと、カードとタトゥーのチェックばかりやって顔をジロジロ見ることはしていない。


「こっそりこの町に潜り込んでるのかも。ほら、スラム街あるしさ。あの辺りに穴があって、モグラみたいに出入りしてるかも」


 あ、スラム街って犯罪者とか集まっているかも知れないから、簡単にスパイ活動が出来るような場所じゃなかったかも。

 そこにうちのチビッ子達を派遣するって……実はかなりヤバいことをさせようとしているのでは?

 スパイになるにはどんな訓練を受けるのか知らないけどね。


 はい?

 俺が三人娘をスパイにするつもりで商業ギルドに派遣していたこと、まさかバレてた?

 だからシェルド爺さんがギルドから三人とも引き離したのかも。爺さん達って表情からは何も掴めないんだよね。困ったものだ。


 ゲーシルさんがナマズを捌き終えると、包丁を置いて腕を組む。


「スラム街にか……その可能性も無いとは言いきれんが、ネスとジフはギルドの彫り師がじきじきにタトゥーを入れているから……それでも完全にチェックするのは不可能か」

「そうだよ。登録番号って3なら8に擬装出来そうでしょ。カードを偽造して、タトゥーも追加して掘ったら別人だし」


 この世界の数字もアラビア数字に似ているので、そう言うズルも出来るのだ。


「お前用の対策を取るように今度門番に伝えとくわ」

「ひどっ! 善良な村長になんてこと!」

「善良なヤツがそんなこと思い付くかよ。だが、その可能性も確かにあるな」


 ゲーシルさんがスタスタとシェルド爺さんの所に話に行く。まさか本気で俺用の対策を……な訳はないか。

 ナマズ料理の完成を前に、サティアさんが指示を受けて村から出て行く。彼女の背中が哀愁を漂わせていたような気がするが、きっと気のせいだ!

 お昼を食べてから商業ギルドの来客一行様は帰っていった。

 サティアさん用にナマズフライを持たせてあげたよ。


 そんなイベントがあってから二日後。

 三人のチビッ子が村から出て行くことになった。何度見ても普通の顔だ。俺の命を握るような重要な任務だと意気込んでくれているのは嬉しいが、顔と名前が一致しない。

 エース、ビート、シーサー、君達のことは忘れないからな! と言って送り出したのだが。


 多分、次に会った時には完全に君達の顔を忘れている自信しかない。


「セルバン、何処に所属するかそろそろ決めないとダメよね」


 ミイナさんがスパイとなるチビッ子達を見送った後に深く考えるような顔をする。

 それについては同感だ。一番しっかりしなきゃいけない俺と、一番年上のミイナさんがが宙ぶらりんなのだ。

 バリシアハンターギルド、最近ではバリシアギルドと呼ばれることが定着しているのはバリシア領運営の唯一の公営ギルドだからだ。

 商業ギルドは領主様とは良い関係を築いているが、領主様の完全なイエスマンではない。領主様に対して資金援助を行う代わりに色々と優遇措置を得ているので、強く反発することは無いが、もし機嫌を損なえば……と多少の火種は何処の組織にもあるものだ。


 チビッ子達はどうしているかと言うと、強くなりたいと願う子達はバリシアギルドに見習いとして所属しているし、村の匠のメイザー他数名が製造業ギルド、残りは商業ギルドや農業ギルドなど自分がやりたい仕事に関するギルドに見習い登録をさせてもらった。

 見習いだから大した仕事は出来ないが、村のチビッ子が真面目に働いている姿を一般市民に見せ付けるってことに大きな意味がある。

 それに仕事さえすればお昼ご飯をキッチリ食べられるのだから、子供達も喜んでやっているそうだ。


「俺は領主様に迷惑掛けたから、バリシアギルドにしようかと思う」

「律儀なのね。多分だけど、領主様は良い切っ掛けになったとしか思ってないわよ」

「それでもね。商業ギルドには良くして貰ってるから申し訳ないと思うけどさ。

 それに戦闘系ギルドに入れば、俺も強くなれると思うんだ」


 後ろから矢を放つだけでも援護にはなるかも知れないが、やはり異世界に来たら派手な戦闘を繰り広げたいよね。剣技を覚えてオークぐらいはズバッと一刀両断したいでしょ。

 魔法は才能が無くて応急処置程度しか使えないのだし。


「私もそうしようかな。元々強くなりたくて冒険者になったんだから、少しはその道で活躍したいのよね」

「ミイナさんは商業ギルドの方が向いてると思うけどね。それに怪我して欲しくないし」

「その言葉はそっくり返すわ。セルバンこそ村に必要なんだから、無理して剣を振る必要は無いわ」


 楽して強くなれる手段があれば嬉しいけど、チート無しの俺達じゃ真面目に努力するしかないよ。

 暫くはモブ冒険者兼子供村の村長として頑張ってみますか。

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