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第57話 冒険者ギルドのその後

説明回です。時間軸がおかしいのはシナリオを変えてから書き直すのが面倒だったのと、時間がとれなかったから。

不人気作で読者が少ないから許してね (´-ω-)人

 時間軸で言えば、マキナ研究所にアイロンが届いた頃のことであるが、セルバン襲撃事件を計画したのが冒険者統一協会から来た天下り三人衆であったこと、そして冒険者ギルドもセルバンのような者を人間扱いしない姿勢を見せたことも相まって、バリシア領主は両者に対して絶縁状を叩きつけた。 

 今までの経緯(いきさつ)も含めての判断であり、堪忍袋の緒が切れたと言って差し支えがない。


 上部組織がこのような事態となったことにより、バリシアの冒険者ギルドは機能不全に陥った……と思われるのが普通かも知れないが、領主は決して短慮軽率な行動を取った訳ではない。

 完璧とは言えないが対策を練った上での判断であった。


 もし冒険者ギルドを切り捨てることが治安悪化に繋がったのであれば、大局を見誤り勢いに任せた馬鹿者であると評価され、仮にバリシアの衰退を招こうものなら領主の地位を剥奪されかねない。

 その為、慎重の上にも慎重を期して各ギルドと水面下で協議を重ねてきていたのだ。


 そして折り合いを見て『バリシアハンターギルド』と言う、新しい公営のギルドを設立したのである。


 非戦闘系冒険者の受け皿となる各ギルドへの根回しは人材確保の面から好意的に受け止められていた。

 一番の問題児である戦闘系冒険者、つまり魔物の討伐を主に受けていた冒険者の中でも素行不良な者、品行方正とは言えぬ者の洗い出しは裏にも表にも調査員を派遣して済ませていた。

 明確な犯罪に関わっている者は、法に基づき鉱山や大規模農場での強制労働の刑に処した。

 疑いに留まる者は傭兵ギルド、ダンジョン探索隊員、北方開拓員、捕鯨船員、海洋探検船員、海上戦闘員(私掠船船員)等へ斡旋することにした。

 私掠船は海賊とほぼ同義であるが、他国の船舶しか襲わない国営の海賊兼海軍のような立場である。

 疑問を持つ選択肢があるかも知れないが、並の冒険者ごときでは太刀打ちできぬ猛者達が率い、厳重な規則(当たり前のこと)を守ることが求められる集団である。

 そうして残った戦闘系冒険者を『バリシアハンターギルド』の初期メンバーに登録する方針を打ち出していた。


 勿論だが冒険者ギルドに残ると言う選択肢も与えられていた。

 だが、三人の天下りが居なくなったとしてもまた次の天下りが送られて来るのでは以前と変わらない、それであればこの期に冒険者を辞めて新しい職場を求めようと考える者の方が圧倒的に多かったのである。


 バリシアには冒険者ギルド以外に大手ギルドと呼ばれるものに商業、農業、漁業、林業、製造業、運輸業、鉱山ギルドがある。

 人数の少ない狩人ギルド、酒造ギルドなどは商業ギルドの一部門として存続しているし、製造業ギルドは鍛冶、木工、石工、馬車、建築ギルドなど特定分野のギルドの集合体である。


 これからも分かるように、本来ギルドは専門分野ごとに人が集まって出来るものである。それは知識や技術の伝承、高価な道具の共有、生産効率化の追及等、同業種の者が集まることでメリットが発生するからだ。

 専門職でもなく、特定分野の技能もなく、何でも屋である冒険者のギルドがあること自体がイレギュラーなのだ。


 戦闘と言う要素をなくせば冒険者ギルドはハローワークやアルバイト紹介サイトと似たようなものであり、ある意味救済措置的な側面があるのは確かである。

 だがその業務は商業ギルドでも十分に可能であるし、農業ギルドに直接行って畑作のアルバイトを受けることも可能だ。

 例えば清掃のアルバイトの応募などは商業ギルドが行っても何ら問題はないのだ。


 それに今までは各ギルドがわざわざ何でも屋である冒険者ギルドへ依頼を出しに行っていたのだが、直接各ギルドに来て依頼を受ければ冒険者ギルドが徴収していた依頼料からのピンはねも不要になる。

 つまり収入アップに直結するのだから、冒険者の看板を降ろすことに決めた者が多いのは当然である。

 もっとも元冒険者をすぐに他のギルドの正規メンバーとすることはない。採用試験を実施し、試用期間を設けて適性を判断するのだ。

 厳しい審査になるかも知れないが、各ギルド共に信用が第一であり、本来は紹介状がなければギルドに所属出来ないのだから特例を認める以上はハードルを上げるしかないのである。


 三人衆を逮捕したあの日、バリシア領主は商業ギルド近くの空き物件を『バリシアハンターギルド』として仮オープンした後にロイガー衛兵隊長を派遣して冒険者ギルドの三名の天下り役員をセルバン襲撃の指示役として逮捕させた。

 この時には既にゴンダン他、協会の息の掛かって居ない職員数名にはいずれ冒険者ギルドに対する援助の打ち切りを通告してあった。


 冒険者ギルドのギルドマスターにこの通告はあまりに酷いと思われるかも知れないが、ゴンダンを含め使える人材はハンターギルドに丸ごと引き抜くのだから『代わりの引っ越し先を用意してやるから準備を始めろ』と言ったようなものだ。

 そして天下り役員逮捕の際にゴンダンに『今がその時だ』と告げたのだ。


 役員が逮捕された日とバリシアハンターギルドの仮オープンは同じ日であった。その二つが何らかの関連性を持つものと感じ取っていた者も僅かに居たが、その日の内にはまだ大きな動きが出なかった。

 だが情報が大して出されていない内に新しいギルドを訪れ、そちらに鞍替えした冒険者が出たことから冒険者ギルドの中がざわつき始めた。


「ギルマス! 新しいギルドって何なんだ? このギルドはどうなるんだよ?」

と直接疑問をクチにする者が現れると、

「新しいギルドが気になる者は行ってみると良い。損にはならん。

 それと、この冒険者ギルドについては明日の早朝に発表を行うので詳しくはその時に話す」

とこの時には明言を避けた。  


 そして翌朝、ゴンダンはまだ本日更新の依頼票が貼られていない掲示板にこんな内容の貼り紙を出した。


『冒険者ギルドからの通告

 冒険者ギルドは長い間冒険者統一協会に利用され続けてきた。協会は冒険者を人とも思わぬ態度でこき使い、仕事をしないくせに冒険者の稼ぎの一部を自分の懐に納めるだけの存在である。

 これに腹を立てたバリシア領主は協会及び冒険者ギルドとの決別を決定した。

 現冒険者はこのギルドに残ることも可能であるが、バリシアにある他のギルドへの登録申請が期間限定で可能である。これを期に興味のあるギルドへ登録するすることを勧める。

 また、バリシアハンターギルドが新たに創設されており、このギルドに残らない戦闘職の者はバリシアハンターギルドで提示される条件を確認されたし。

 当冒険者ギルドは独自に討伐依頼のみ斡旋することとする』


 阿鼻叫喚の坩堝となった冒険者ギルドが落ち着きを取り戻すには数日を要した。

 結果として十名程の職員と二十名程の冒険者が残ったが、その約半数はギルドに顔を出していないだけである。


 尚、この冒険者ギルドは半年も持たずに自然消滅となる。


 領主が守る土地は領主のものであり、城下町は領主が守る範囲内である……この考えにより主を失くした冒険者ギルドの建物はそっくり領主のものとなった。

 冒険者統一協会は冒険者ギルドを下部組織として扱ってきたが、ゴンダンは協会との縁を早々に断ち切っていた。

 ゴンダンの後を勝手に継ついだギルドマスターは協会に支払う上納金の大きさに驚き、協会との縁を戻すことはなかった。領主からの支援もなく、他のギルドからも住民からも見放されたギルドが生き永らえる術などなかったのだ。


 


「つまらん、コロッセオで戦う遣唐使はヤツの選択にないのだな。いや、剣闘士であったか」

と、デイリーガチャで引いたアイテムで下僕の関係者を俯瞰で見ていたジロー神が渾身の一撃を放ったかのようなドヤ顔を決めたのだが、

「おー、次長もなかなかやりますね~。

 でもそこは私ケントぅ神が剣と牛の闘牛士で健闘し、勝ったらBBQパーチーでも検討して欲しいですよ」

とケント神がオヤジギャグを重ねて反撃。どっちもどっちな主従は今日も通常運転であった。


 ここでピロリンとジロー神に通知が届いた。


「ほぉ……丁度良い、知り合いの牧場に極上のベルジャンブルーが飼われていてな。少々暴れん坊で困っておるそうだ。

 場を用意してやるからケント神は拳闘で健闘してくれたまえ」


 ジロー神のモニターに表示されたのは、筋肉ムキムキの特大サイズの闘牛だった。

 ギャグで負けたと感じたジロー神がパワハラへと走ったのか?


「すみませんっ! 言動には注意しますっ!

 次長より面白いギャグを言って申し訳ありませんっ! 闘牛だけは勘弁してーーっ!」

「それで良いのか? あの牛に勝った者にはシャトーブリアンのステーキを……」

「やりますっ!」

「よし、ポチっと受付完了……ステーキを食べる権利を掛けたあみだくじに三枠参加する権利が与えられるそうだ。そちらも是非健闘してくれたまえ」

「やっぱりこの神は鬼だーーっ!」


 最後まで聞かなかったお前が悪い、とケント神の叫びを無視するジロー神である。

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