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第54話 ゴンダンさんを虐めてみよう

 襲撃犯を撃退した俺のところに、冒険者ギルドからギルドマスターが直々にやってきた。

 冒険者ギルドに行かせたことのないチビッ子達は、怖いおじさんが来たと軽くパニックを起こしたので、 

「ゴンタさん、こんにちわ」

と挨拶して、この人は一応大丈夫だからと宥めておく。


「子供達には信用されておらんな」

「当たり前でしょ。

 どこにギルドマスターと冒険者ギルドを信用出来る要素があるのか、四百字以内で説明してください。

 サービスで空白はカウント外にしますから」

「せめて単語単位にしてくれ……」

「なら、今までのギルドの悪行を単行本一冊分に纏めて書いてください」


 協会から送られてきた天下りの三人が襲撃犯だと言う証拠があの二人からの証言なのは俺は知っているが、それは誰にも言えないことだ。

 ひょっとしたら自宅に証拠の書類か何かを残しているかも知れないけど、普通に考えたらそんな物はさっさと暖炉でも燃やしているだろう。

 あまり寒くならないこの地方の家屋に暖炉は無かったか。なら竈だな。それともトイレでスライムの餌にしてるかも。


 冒険者ギルドは協会の傘下であるが、協会を嫌っていたことは良く知られている。

 それでも組織の長としてわざわざ自ら出向いて来たとは意外と律儀なんだな。適当な職員に俺を呼びに来させて、ギルドで謝罪の振りをすれば済む話なのに。

 でも、まぁ取り敢えず手を出しておこう。


「その手は?」

「普通なら菓子折りか果物籠持参で来るだろ」

「……無い。それにうちのギルドとは直接関係が――」

「気が利かねぇ」

「無いだろ……」


 おっと思わず本音が出てしまった。一瞬ゴンダンさんが怖い顔を見せてたよ。


「お前、本当に十三歳か?」

「誕生日は知らないですけど、この肌のピチピチ具合からして十代前半でしょ。お肌の第一コーナーもまだ曲がってないし」

「なんじゃそりゃ?」

「こっちの話。お肌の話は置いといて、役立たずでしかも犯罪者を送り込んだ協会や冒険者ギルド本部はどう言う落とし前を付けてくれるんでしょうね?」


 勿論協会からの謝罪や詫びの品など本気ではあてにはしていない。やつらに取って俺達みたいな人間はゴミクズと同じ存在だからな。

 王都には冒険者ギルド本部も言うのがあって、何をしているのか知れないけど恐らく地方だと県警と呼ぶのを東京だけ警視庁とカッコつけて呼んでいるのと同じレベル?

 都警(とけい)……だと確かにカッコ悪いから気持ちは分からんでもないけどさ。

 警視庁は国の機関じゃなくて公安の下部組織だから、国の機関と同じ庁を付けて呼ぶのは優良誤認の誘発狙った呼称詐欺みたい。警察庁があるから真似したのか? この世界に来ちゃったからそんなことはどうでも良くなったけどさ。

 あ……脱線して変なこと考えてたから、ゴンダンさんが不振げにこっちを見てら。


「何と言うか……敵と見なした者には相変わらずのクチの悪さだな、まだ子供なのに」

「当たり前でしょ、冒険者は嘗められたら終わりだからね」


 王都以外の町のギルドマスターは、冒険者ギルド本部からすれば課長級に過ぎない扱いだ。

 だから協会や本部からどんな糞野郎が送られて来ようが、言いなりになって誠心誠意ご接待するしかなかったのは何となく理解してる。

 ギルドの中にはコンプラ窓口も無い。悪いことをやってもばれなきゃいいんでしょって文化が偉い筈なのに馬鹿な方達に蔓延っているのだ。多分、きっと間違いない。


 そんな腐った連中のせいで今までに冒険者ギルドから追放された者は両手の指より多く居るだろう。俺も何も知らずに成長していれば、仲良くその仲間入りだった筈。

 まぁ俺の場合は神が下僕としてこの世界に送り込んだのだから、そんな不幸な目には遭わせないと思うのだけど。

 今の世の中だと濡れ衣を着せての追放スタートも定番ストーリーの一つだから、あの神ならそれはそれで面白いと思ってスルーしたかも。


「協会はともかく、この後に本部がどのような話を持ってくるかは儂にも分からん。

 領主様が城に手紙を送られているので、王宮側から某かの懲罰は与えられるだろうな」

「それだとその後の方が怖いんですけど。逆恨みして、もっと怖い暗殺集団(お客様)を寄越してくるかも知れないじゃないですか」

「お前、想像力が何かの赤線突破してないか?

 一番考えられるのは、多少の詫び金を渡して手打ちにしてくれと頼まれるか、無いと思うが成人後に役員の地位を与えるかだな」

「お金ならいっぱい欲しいけど、地位はいらない」


 そもそも今のギルド本部は協会と仲良しこよしぽくて信用出来なのに、そこの役員になって一体どうしろと? ギルドの良いように懐柔して、それ以上俺に傷口を広げさせないように努めるつもりなのがバレバレだろ。

 このギルドの改革をお願いします! なんて言う殊勝な心掛けの役人が居るとも思えない。そんなことしたら、逆に出る杭は徹底的に叩いて叩いて二度と出てこられないようにするってのがデフォルトだ……と勝手に思っている。

 だって本部に行ったことが無いし、普段は話題にも上らないからどんな人達が居るか知らないもんね。


 まず俺の課題としては、今回の事件を受けてバウンサー候補から外されるかどうかの確認だな。

 もし外されるなら、この国を出るって目標は無くなるから今後の方針が変わってくる。


「ぶっちゃけ、こんなことがあったらもう冒険者ギルドには居づらいんだけど」

「冒険者見習いの子供達がお前を頼って押し寄せるぞ。

 お前が居なくなったらパニックになるから、それだけは勘弁してくれ」


 つまり俺を他のギルドには取られたくないって訳だな。

 かと言って、アンチ俺派が本部を含めてまだ組織内にどれぐらい残っているか。コイツらがどんな手を使って来るか分からない。何もしてこないって可能性もあるけど、安直に人を殺そうなんてまともな組織に所属している人間なら考えない。

 だから協会には過激な行動に出るアンチ俺派がまだ居ると推定しておこうって話になる。次からは直接殺しに来るんじゃなくて事故に見せ掛けた暗殺の可能性にも気を付けなきゃ。


 そう言う可能性は、俺に限らず成功した商人や貴族なら誰でも持っている。だから大商人は身を守る為に私兵団を作っているわけだ。

 金もない俺がそれをやるわけにもいかないし。

 人間性善説はこの世界では通用しないことが多いから、何に対しても疑うことが基本であり必要だ。

 やっぱり大きな面倒事が予想されるのなら、これからも変わらず国外逃亡を視野に入れておくべきだろうか。そうなるとやはり大金が必要か。


「何を疲れた顔をしておる。

 お前には子供達の希望の星となって輝いて貰わんといかんのだぞ。しっかりせい」

「勝手にお空のお星様にされても困るんだけど。

 で、本当の犯人は分かりそう? あの役員三人はどうせ糞雑魚なんでしょ?」


 たかだか天下りのギルドの役員ごときが暗殺者を育成出来る訳が無い。ツテがあって闇組織に連絡を取ったに過ぎない筈だ。そのツテさえ怪しいもんだ。

 ひょっとしたら冒険者ギルドの本部が、その組織の操り人形もしくは隠れ蓑として利用されているだけじゃないの?


 俺に鑑定スキルがあれば構成員を見付けることが出来ただろうに、どうして何も無いんだよ。

 これじゃ農場ゲームで畑耕して木を伐ってるキャラと大差ないぞ。いや、アイツらはワンタップで種蒔き、水やり、収穫なんかが出来る分、俺より随分とハイスペックか。


「それは今後の捜査の結果次第としか言えん」

「言えないけど、ある程度の想定は何パターンかしているでしょ?

 それで、最悪ゴンタさんが死ぬのは構わないけど俺が死ぬのはイヤだ」

「ゴンタじゃねぇし……ギルドマスターに全然敬意も無いのか」

「最近の若者は年寄りを敬うって気持ちを持ってないから、素直に諦めてね」

「年寄りでもねぇっ!」


 平均年齢が六十から七十ぐらいなら、約五十歳って充分年寄りだと思うけどね。

 それに敬意を持てる程に会って話をしたこともない。尊敬って、何度も話し合ったことがあって自然に出来る気持ちだと思うよ。

 それを単に年上だから敬えって言われたら反発されて当たり前。年上にも糞雑魚・糞野郎がたくさん居るんだからさ。



「相変わらずクチの悪い野郎だな」

「本当ですね。一体どこの神が送り出したんですかね?……あ……失礼」

「気が付いただけ成長したな。

 ずっと気になっていたんだが、マジチュアはプレーヤーは送り込んだ下僕の視点での映像が表示されている。

 だが、お前は俺が見せていない時でもセルバン視点の情報を知っているな」

「あ、バレちゃいました。マンスリーパスを買ったら、任意地点での視点確保を出来る『覗くんですβ』がオマケがついてるんです。それでセルバンをストーキングして遊んでます。でもβはお色気機能がオフ設定のみですから安心してください」

「それのアルファ版だと除き放題なのか?」

「興味あります? R指定解除とセットのを買うと何でもありです。知り合いは風俗店を開いてて……あ、違法営業で捕まってますね。だから客引きはやめとけって言っておいたのに」


 どうやらケント神にはろくな知り合いが居ないみたいである。

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