第42話 魔道具製作の許可は降りたけど
カカシを作る話から網を作る話に方向が変わりそう。何とかチューブでも網の作り方が投稿されているけど、あの頃はアウトドアにも家庭菜園にも興味が無かったので見てないんだよ。
何でも自分でやる必要は無く、チビッ子の誰かをあてがえておけば済むんだけど、上手く行けば商品になるかな?
専業の農家さん達も鳥や獣の害を受けているだろうから、網の需要って少なくないと思うんだけど。
「網は村で作ってみるね。養殖池にも使えるだろうし」
実は畑だけでなく、俺の大切なのは養殖池が水鳥に狙われているんだよ。木の板で陰を作ったりして誤魔化しているけど、完全にドジョウ泥棒を防げる訳じゃないからね。
「セルバン君の立ち位置がよく分からないんだけど、職人に口利き出来るのか?」
「あぁ、この子はこれでも領主に認められた村長さんじゃからな」
「えっ?」「ファッ!?」
シェルド爺さんの発言にマキナさんと俺が同時に疑問の声を上げた。掘っ立て小屋村が認められたってどう言うこと?
まさか自治区的な何か?
それとも子供の秘密基地だから温かい目で見守ってやろうってか?
うーん、分からん。それならそれで俺に一言くれても良いじゃないかよ。客には琵琶の葉茶の一杯ぐらい出してあげるからさ。
「正式な村ではなく、子供達の自立を支援する子供テント村と言ったところじゃな」
「そんな村を作っているのか。凄いじゃないか」
「知らない内に話が大きくなってる?
自立支援とか立派なことは考えてないんだけど」
確かクロスボウとかを作る前に、シェルド爺さんから領主が村を見てみぬ振りをしているとか俺が注目度ナンバーワンで十六歳で初級貴族に任命されるとか言われてたっけ。危機管理部に勧誘された時だったな。
あの時はまだ冒険者を辞める気にはなっていなかったから、村長を続けながら冒険者も続けるって話で落ち着いたんだよね。
でも今は領主様が冒険者ギルドに話を付けてくれるだろうから、冒険者から円満に足を洗える見込みがある。まさかギルドが領主様の御意向に背くなんて事はないだろうし……無いよね?
ギルドマスターは良いとしても、王都から来ている顔も知らない天下りがクチを挟むかな?
冒険者統一協会が冒険者ギルドを権力と資金力で統括しているそうだから、ど田舎のバリシアの領主程度じゃ力不足だったりして。
「まだ子供なのにセルバンは儂らの出来んことをやっとるからのぉ」
「褒めても何も出せませんよ。シェルド爺さんにはお世話になりっぱなしだし」
「詳しいことは分かりませんが、シェルド様が子供村の支援をなさっているのですね? それならセルバン君を連れて来たのも納得です。
そうだ、何か一つ魔道具にしたい道具はないかい? 作れる物なら作ってあげるよ。安い魔石なら幾つか譲っても構わないし」
「良いんですかっ! 是非ともお願いします!」
やったー、ラッキーっ! さてさて何を魔道具にしようかな。あれもこれも欲しい物ばかりだから、一つと言われるととても悩む。
「うーん……一つですよね……選びきれないか。
あの……マキナさんに作ってもらうんじゃなくて、魔道具の作り方を教えて貰うってのはどうですか?
出来るかどうか分からないけど」
さすがにこれは甘えすぎかな?
でも一つだけ魔道具を貰っても、それはいつか壊れて無くなる物だからさ。どうせなら魚を貰うんじゃなくて釣り方を教わる作戦の方が後々のためになるよね。
もし俺が作れなくてもチビッ子の誰かが作れるかも知れないんだから、作り方を知るだけでも良さそうでしょ。
「そうだなぁ……門外不出と言う物でない範囲なら教えることは出来ますけど。教えるとなるとさすがに時間が足りないね。
王都に戻ったらテキストの写本を一冊送ってあげるってのなら問題ないかな」
「そんな貴重な物を譲って良いのか?
教本類はギルドで厳しく管理されておるんじゃなかろうな?」
「うそっ、そんな貴重品なの?」
「貴重品かどうかは知りませんけど、研究所のテキストの管理者は自分なので問題ないですね。
ただし、セルバン君が開く時にはシェルド様が同席すること、開いて中を見ても良いのはセルバン君の一人のみ、そしてそのテキストが用済みとなれば返却することと言う条件を付しますが」
「それなら頑張って長生きせねばなるまいな」
シェルド爺さんには長生きしてもらいたいけど、その条件だと俺が写本することは黙認してるってことにならないか?
寧ろそうしろと言っているように思えるし。
「テキストにシリアルナンバーを振って誰に渡したか管理しているの?」
「番号での管理か。それは良いかもな。でもテキストにはメモを書き込むのが当たり前だし、時々更新されて新しい物が出るので、そこまでする意味も無いかと」
日本みたいに四年ごとに教科書の改定があるのかな? それとも先端技術だけに一年経つと時代遅れになるのかも。
「あと、もし仮にだけど、新しい魔道具をセルバン君や君の関係者が作り出したとしても、それで勝手にお金儲けをしてはいけない。必ずマキナ研究所に報告すること。これは絶体条件だからね」
それは王都の貴族対策だね。了解です。
「それは個人で楽しむ分とか、村の中で使うには問題ないって解釈しても? 工具とか調理器具とか」
「うむ、それは確かに大きな問題になるのぉ。
魔道具ギルドに無許可で販売すると、怖いお兄さんが拉致に来るじゃろ。何か作ればマキナ殿に現品を送付し、マキナ殿が考案したことにするのが安全じゃ。
それを儂が買い取ってからお主に渡すと言う手続きが必要じゃろうて」
それはかなり面倒くさいな。けど、考え方によってはメーカーが開発した新型車をテストコースで走らせ調べてからメーカーに戻すって手順とそう変わらないか。単に物流を担うのが荷馬車ってことが違うだけだ。
「その辺のことはマキナさんとシェルド爺さんで抜けの無いようにしてください。俺はそう言う事務的な事は知らないから」
「うむ、任せるがよい。どちらにも損はさせぬよ」
「俺もそれで構いませんが、少々気が早いですよ」
「確かに俺が新しい魔道具を作ると決まった訳でもないのに気が早すぎる話題だね。
それと、冷やす指令魔石があるなら食べ物を冷やして保存する魔道具があったりするの? 今どんな魔道具があるかリストも欲しいです」
「それなら商業ギルドにあるから、帰りに寄っていけば良いじゃろ。買うのは無理でも想像するのは自由じゃからな」
魔道具のリストは問題ないか。それなら他に決めることは……あっ、完全に抜けてるよ。
「その魔道具のリストにあるものを俺が自力で作った場合もマキナさんに送ると思うけど、仮に性能が既存の物より良かったら?」
うんうん、こう言うことだって無いとは言いきれないよね! 常に技術は進歩していくものなのだよ、それも別の角度から見ることが出来る者によってね。
「一つ勘違いしているようだね。魔道具は魔石で制御し、魔石がエネルギーを供給して目的の作用を達成する。
新しい制御方法や効率アップに関しての理論を君が生み出す可能性はあっても、総合的な技術力の無い君に既存の魔道具を越える品物を作ることはほぼ不可能だよ。
例えば魔道コンロにしても、発熱体をどうやって作るんだい?
あらゆる物と人材が集まる王都だから試行錯誤を繰り返して魔道具が産み出せるんだ」
言われてみれば確かにそうかも知れないけど、それだと田舎の町工場の逆襲を否定するのと同じだよ。
「試していない材料がバリシアにあるかも知れないから、可能性はゼロじゃないよっ!」
「二人ともそこまでじゃ。良くは分からぬが、もしセルバン君が何か新しい方法、理論、材料を考え付いたらその時点で手紙で知らせれば良いじゃろ」
シェルド爺さんが間に割って入る程、俺は否定されたことで熱くなっていたらしい。なんか悔しい気がするけどそれで我慢するか。うっかり報告し忘れることだってあるだろうし。
「そうですね。魔道具の開発・販売は結構シビアな問題があるのでセルバン君の判断でことを進めると問題になりますので」
「分かったのじゃ。こちらで目を光らせておこう。セルバン君、それで良いな?」
「はい、大丈夫です」
何だってやってみなきゃ分からないもんね。今はスキルも何も無くても、いざ始めてみれば俺の中に封印されているかも知れない古代知識が目覚めるかも知れないんだし。




