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第3話 記憶が戻ると逃げたくなる

妹から逃げ出した俺は、どうやら神様の部下が投げ捨てた空き缶のせいで死んでしまったらしい。


急いでいても、自転車に乗るときはヘルメットを被るべきだよね。


この回は現状の説明になります。

 俺がそんな前世での記憶を取り戻したのは、木から降りられなくなった猫を何とかすると言う、比較的お手軽な依頼の最中だった。

 ただし依頼人はケチでクレーマーだと噂のおばさんであり、仲間内から不人気な為に籤引きによる抽選が行われ、俺がハズレを引いた訳だ。


 生年月日不明なので自称だが、十二歳になった俺は冒険者見習いとして朝から晩まで目まぐるしくお使いクエストを片付ける日々を送っていた。

 『冒険者』とは住民のお困りごとを解決する何でも屋である。

 それなら冒険者ではなく何でも屋と名乗れと思うが、それはちょっと置いておこう。


 冒険者は『冒険者ギルド』と言う謎の組織に所属し、その組織に身分を保証して貰う。

 本人確認なんて出来ないんじゃ……と本気で疑問に思わないように!

 冒険者ギルドは町の人達が持って来る雑多な依頼を冒険者に斡旋し、身分を保証する代わりに依頼料の一部をピン跳ねして儲けている訳だ。

 だからちゃんと仕事さえしてくれれば、誰でも登録して良いってスタンスなんだよ。

 しかもこの冒険者って軍人でも衛兵でもないのに町中を武装して歩く危険な人達なんだ。世界と国が違えば銃刀法違反が確実だよ。

 でも冒険者が町の外で魔物や畑を荒らす害獣をたくさん倒してくれるから、一般市民もお肉や野菜を食べることが出来るんだ。


 町には兵士も沢山駐留しているそうだけど、軍は基本的に国や町を他国や他領の進攻から守るのが仕事なので、魔物退治や盗賊退治にはあまり積極的ではないのだとか。

 俺の感覚で言うと、盗賊だってテロリストだ。

 どこかの国のテロの定義を意訳すると『脅して目的を達成するって考えの馬鹿共者の暴力による破壊』のことだから、盗賊だってそこそこ立派なテロリストと言えるのだ。

 なので盗賊退治に軍が出ても個人的には良いと思うのだけど、多分俺の解釈は間違っているだろう。


 軍が盗賊や魔物退治をしないので、町の人達を普段から守っているのが冒険者となるから、彼らが堂々と武器を提げて町の中を歩けるんだな。

 とは言え、この世界は自分の身は自分で守るって言うのが基本だから、冒険者以外の人も武器を持つことはある。

 ただ、武器を持つってことは戦闘をする意思があるって意思表示とも取れるから、戦いたくない人、戦えない人は町の中では武器を見立つようには持たない。

 中には拳が武器の人とか暗器を使う人が居るかも知れないので、見た目だけでの判断は危険だけど。


 今の俺の身分である冒険者見習いとは、冒険者として活動出来るようになる前段階の者(特に子供達)が、働きながら様々な技術を習得することを目的とした制度である。

 そう言うと聞こえは良いが、実際には冒険者がやりたがらない不人気依頼を路上で生活している子供達に押し付けるのが本当の目的である。

 例えば身軽さを活かして高所作業をやらせたり、ナツトウと呼ばれる豆を腐らせた臭い料理を作らせたり、トイレや下水管など汚い場所の清掃をさせたりね。


 そのせいで毎年何人もの子供が大怪我を負ったり腹を壊したりしているけど、労働基準法も労基署も無いからお咎めは無い。

 それでも農家の子供が口減らしの為に家から追い出されたとか、両親を失くしたとか、親に追放されたり捨てられたりとか理由は幾つかあるが、冒険者見習いになる子供は後を絶たない。


 冒険者ギルドも世間体を気にしてか、見習いの子供達に仕事を押し付けるだけではなく、武器の扱いを教えるなど多少は教育しているって姿勢は見せている。

 それで頭が良かったり武芸が他の子供より上手い等で将来有望そうな子供には、冒険者として必要な技術を教えることもある。

 そのような子供を将来的に冒険者ギルドの職員として雇う目的があるので、何とも気の早い青田買いと言えるだろう。


 冒険者ギルドの職員と聞いて、受付嬢を真っ先に思い起こす人が多いのでは?

 ギルドの花形であり、受付嬢の良し悪しが冒険者のやる気に直結すると言っても過言ではない。

 最近ではどのギルドでも多様性がどうとか何か取って付けたような理由でイケメンが座る受付が設置されるようになっている。

 男の俺からすれば、そんな余計な対応を取るんじゃないよと思うだけだが……(ひが)みがなんだって?

 俺は美少年ではないのでホストみたいな受付()にはなれないが、それでもギルド職員候補と言う有望株的な扱いを受けている一人である……とギルドの中で少しだけ偉い人から言われてきた。


 ちなみに俺に求められているのは冒険者に対する抑止力、つまりギルドの用心棒的なポジションで、ここではかっこ良くバウンサーと呼ばれている。

 横文字の響きがカッコいいと思うとは、俺もまだまだ修行が足りないようだ。

 冒険者の中には腕っぷしは強いが社会のルールを守らないような自分勝手な野郎も居る訳で、自分より下の者にタカり強請(ゆすり)をするなどは日常茶飯事。

 あまりにも酷いとめっちゃ強い人がふらりと現れてお仕置きしていくこともあるが、そう言う人はこのギルドには滅多に来ないから期待は出来ない。

 だって大半が貴族様か大きな商会関係者などのお金持ちと専属契約しているからだよ。


 このまま順調に進めば、そう言ったはみ出し者を懲らしめるのが俺の将来の仕事となる予定である。

 俺って同年代と比べると頭は良い方だけど、そんなに腕っぷしは強くないと思うのだけど。

 それでも無事にバウンサーとなれればの話だが、この仕事って出番の無い時間の方が圧倒的に多いので、待機中は町中で完結可能な依頼を受けて時間を潰すことになるらしい。

 それだと初心者向けのお使いみたいな依頼と全然変わらない気がする。

 用心棒なのに、普段は食っちゃ寝しながら事が起こると『先生!』と呼ばれて『ど~れ~』と出ていくような立場ではないから残念だ。


 そのお使いの内容が多岐に渡るので、見習いのうちから対応力強化の名目のもと、()い、()ゃあ、これも()むわ……すなわちOJTを謳って焦げ付き依頼を消化をさせられていると言う訳だ。


 ふっ……全く酷いギルドだ。

 体よく低賃金で働かせられる使い捨て労働力にしか思われていないじゃないか。

 と、木から落ちた衝撃が前世の記憶を呼び覚まし、この冒険者ギルドが腐った組織だと俺は理解したのだ。

 いや、ギルドその物が悪い訳ではない。

 ギルドに巣くう一部の偉い人や職員達が小悪党だと言うべきか。


 しかし、このまま手を打たずに流されるままでは、俺はその小悪党達のせいでギルドに使い潰される。

 何か冒険者ギルドが不祥事を起こす度に、矢面に立たされ全責任を擦り付けられ、挙げ句罵倒されて身代わりのしっぽ切り要員にされるのが、バウンサーの本当の役目なのだから。

 権力者が保身のためによってたかって誰かを悪者にするって、どこの世界でも良くある話だよね。


 だから俺はここから逃げ出すことを決意した。追放ムーブの波に乗っかる前にな。

 幸いと言って良いのか、今世の俺はストリートチルドレンで家族は居ない。

 身軽な独り身なので、そう決意するのに躊躇う必要は無いのだが、実際に行動に移せるかは別問題。さて、どうしたものか。



「次長、その地味なゲームをまだやってたんですね」

「キャラ作成してからリアルタイムでまだ二年だ。基本的には放置で、ログインボーナスと放置報酬の回収だけで済むからラクなもんだ」

「ですけど、聞いたらガッツリとプレイしたい()は下僕を使わず、自身好みのカスタムアバターを作ってアバターに意識を投影(ダイブ)するそうですよ」

「カスタムアバターは重課金者向けコンテンツだ。つまりお前の給料で……」

「次長みたいなライトプレーヤーはランダムキャラ作成で十分ですよ!」


 課金すれば国王や領主などの権力者の子供に産まれさせたり、平民キャラでも貴族と出会って養子となることも可能である。

 だが元々転生局次長は無課金勢であり、たかが放置ゲームに課金するつもりは一切無い。


 ゲームの舞台はよくあるファンタジー世界。人類の他に多くの魔物が生存しており、人類は魔物や自然の脅威に対して抗いながら暮らしている仕様である。

 その為ゲームを有利に進めたければ、下僕は少しでも良い地位に付かせる必要があり、課金者は下僕を領主や貴族、有力企業の跡継ぎなどに生まれさせるか、優れた課金アイテムを持たせている。


 無課金プレイヤーの下僕の多くはごく平凡な町民、村民であるが、放牧民、ストリートチルドレン、ゴブリンなど不遇キャラスタートもあり得る。

 そんな不遇キャラが当たった場合はリセマラ代わりに別の転生者を送り込むのが一般的なプレーヤーの対応だ。

 だが、次長は部下のケント神が起こした空き缶事故の処理を兼ねて下僕を作っただけであり、実は今のところこのゲームにそれ程執着していない。


 もし彼がリセマラを行っていたなら、この物語は開始早々打ち切りとなっていたのだ。

警察庁組織令第三十九条

(広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。)

を主人公が曲解したものを記載しています。


広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる→つまり、脅して目的を達成するって考えだと解釈した訳だ、主人公が。 


政治上その他の主義主張に基づく→政治&その他の主義主張と書いているなら別だが、政治 or その他の主義主張と書いているので政治は無視しても問題ないと考えた訳だ、あくまで主人公が!

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