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第28話 危機管理部からの勧誘

ミイナさんが紙の作り方を知っていると打ち明けてくれたので、商業ギルドに話に来たけど残念な結果に。

「それはともかく、昨日は大変だったんじゃないの?

 森の方でとても強い魔物が出たとかで、冒険者ギルドが森に付きっきりになってるみたいだけど」

「それなら強い人が行ってるから大丈夫だと思う。

 嘘かホントか、本当にヤバイことが起きそうだったら、大きな地震が起きるらしいし」


 そう言い終わるかどうかのタイミングで、グラッと軽く地面が横に揺れた。震度で言うと二から三の間かな。震度の基準なんて覚えていないから適当だよ。

 この程度なら大地震なんて言わないからセーフ……と思ったら、

「きゃーっっ! きゃーっっ!」

と悲鳴を上げて床にへたり込み頭を抱えるサティアさんに、この程度の揺れで何を大袈裟なリアクションだと呆れてしまう。

 揺れは一回だけで余震も特に感じないし、昨日話に出ていたゴブリンキングの出現とかは関係は無いと思う。

 そう言えば、こっちに来てから地震なんて初めてだなぁと呑気に構えていると、

「どうしてそんなに平気なのよっ!」

と、揺れが収まって暫くしてから、サティアさんが少し怒りながらポカポカと俺を両手で叩く。

 マッサージのつもりかな? アラサーにされても可愛くないんだけど。

 

「あの程度の揺れなら普通でしょ?」

「今のが地震……よね?

 あんなに揺れたの初めてよっ! 死ぬかと思ったわ」


 うん、ここは地震大国じゃないんだとやっと理解出来たよ。


「まさかセルバンが揺らしたんじゃないよね?」


 あの……それはどこの能力者?

 そんなのが出来るんだったら、喜んで地震を起こしまくってるに決まってるだろ。


「残念ながら俺が震源じゃないよ」

「分かってるわよ、真面目に答えないで」


 じゃあ、どうしろって?

 こう言うのを相手にするのって、ホントめんどくさいなぁ。しまった、タケダじゃないって言うべきだった。


「ところで一つ確認させて」

と、俺にポカポカと八つ当たりしたことで落ち着いた様子のサティアさんが真面目な顔をする。


「噂じゃ昨日、セルバンがゴブリの親玉を倒したって話になってるんだけど、間違いよね?」

「いや、シェルドさんに貰った剣を振ったらスポッと手から抜けて飛んでって、親玉の首にグサッと刺さってドサッ、だからホントだよ」

「スポッのグサッでドサッ……?」

「うん。それであってる」


 身振りを交えながらだから、これで分かってもらえたよね?


「良く分からないけど分かった。

 みんなには絶体セルバンには護衛依頼を出すなと言っとくわね」


 ……是非それで頼むわ。俺の腕を当てにされたら全滅必至だよ。


「他に何か困ってることとか、商業ギルドを頼りたいこととかあったら言ってね。内容次第で考えてあげる」

「そこは嘘でも、何でもって言うところでしょ」

「商業ギルドは信用第一だからね」

「そりゃそうか」


 すぐ必要なことは特には無いかな。電源不要の骨壺式冷蔵庫の試験開発を頼むにはまだ早すぎるよね。

 それならやっぱりアレか、キング絡みで考えておくことかな。


「それなら、森の方にゴブリンキングが出ても困らないよう、今から木の実とか長期保存の出来る食材を集めておくことだね。

 もし不要になったら、うちの掘っ立て小屋村の食料にするから問題ないし。

 医療品や水も余分にストックして切らさないようにするのと、他に何かある?」

「ゴキブリキング? それが出るとまずいの?

 名前からして絶対まずいわよねっ!」

「勝手に『キ』は付けない。それ、全く別の黒い生き物だから」


 結構余裕こいてるけど、全然話を聞いてないの?

 だから、こんなにのんびり構えているのか。てっきりここは暇な部署なんだと思ってた。


「ホントに冒険者ギルドからその話は来てないの?

 おかしいな……こう言う話が分かる人は誰か居ないの?」

「危機管理関係の人を呼んでこようか。ちょっと待ってて」


 ゴブリンキングが出る、出ないはまだ正直分からないけど、さっきの地震がゴブリンキングの出た合図だとしたら既に対応は手遅れか?

 実際この町に影響がどれだけ出るのか分からないけど、戦争と同じレベルになると言われたもんね。

 それなら空振りになっても良いから、ギルド間で横通しぐらいしとけよって話になる。

 それがこの町で取るべき危機管理だと思うけど。

 それとも俺がジェネラルを倒したから、実はジェネラルやキングは大して強くないって思われているとか?


 ドアが開いて部屋に入って来たのは、サティアさん、シェルドさんと初めて見る中年男性。


「シェルドさん、こんにちわ!

 とても良い短剣を戴いていたのに、知らなくてごめんなさい」

「いやいや、役に立ったようで何よりじゃ。

 武器としては普通の品で、倉庫の肥やしになっておったから整理するついでにセルバンに渡したんじゃが、まさか本当に役に立ったとは。

 渡した儂も実はビックリなんじゃよ」


 実はあの短剣、命の危機に瀕した時に一度だけ効果を発揮する、と言う触れ込みで一年程前に売られていたオカルトグッズらしい。

 シェルドさん本人もそのことをすっかり忘れていて、サティアさんから話を聞いて思い出したとか。

 そんな怪しい物をよく買ってたなぁ。


「じゃあ、俺がジェネラルを倒せたのって、ビギナーズラックですらなかったのか」

「まぁの、短剣の特殊効果が触れ込み通りだとしたら、と言うことじゃがな」


 狙って木に投げても当たらなかったし、多分効果は本物だと思うよ。それが一度だけってことは、もう普通の短剣と変わらないってことか。


「あーぁ、もったいない使い方をしちゃったなぁ」

「シェルドさんの話が本当だとしたら、使わないと死んでいたシチュエーションだったと思うんだけど」

「そうですね。タルマワとコリエダの二人もセルバン君にジェネラルとやらの手が当たったように見えたと証言したようですからね。

 かなり危う状況だったと考えるべきでしょうね。

 あ、私はこちらのジョブ・ション・シェルドの息子のジェルダ・シェルドと申します」


 シェルド爺さんの息子さんだね。オッケーですよ、きっと新しい家を出したくないって神の意志が働いたんですね。


「危機管理部は人気が無くてね、僕が仕方なく父の後釜に座ったんだよ」

「おぅ……そうでしたか。危機管理、大事ですけどね」


 あっぶねぇ、違う理由を考えてクチ口に出さなくて良かったょ。


「えぇ、ホントそうなんですけど、なかなか出番の無い部署ですし……出番があると困るのも困り物でしてね。

 絶賛僕の後釜を募集中なんだが、セルバン君、どうだい? 危機管理に理解ある子が来てくれると助かるんだよ」


 そんな仕事、やりたくないって。

 緊急対策マニュアルを作ったり備蓄品の管理したり、地味で面白くないでしょ。

 備えが必要なのは理解してるけど、それとこれとは話がディファレント! 地下に神殿みたいな施設を作るのになら面白そうだけど、下手にこの辺を掘ったら地下水でえらいことになるだろうね。


「それでさっき私に木の実とか長期保存する食料って言ったのね。超納得だわ」

「そうだね、冒険者ギルドはとっとと辞めて危機管理部に来たまえ。才能あるよ」


 冒険者ギルドでトカゲのシッポにされるよりマシな仕事かも知れないけど、普段は出番が無い日陰の存在みたいな部署にスカウトされても困るんですけど。

 やる気が出ないでしょ。

 それならいっそ国外逃亡を前倒しする方向で考えるのが正解かも知れないな。でも待てよ、暇な部署でも給料が確実に貰えるなら逆に天国だよね?

 でも商業ギルドが本当に暇な部署を置いてるとは思えない。きっと裏に何かあるに違いない。


「それは追々と言うことで、結論は待って下さい。

 まだ自分が本当にやりたいことも決まっていないし」

「リアル村作りはやりたいことでは無かったのか?

 それで良くあそこまで作りあげたものじゃよ。

 儂もてっきり城壁の外に村を作る予行演習だとばかり思っていたんじゃ。

 やる気のある若者のやる気を削がぬようにと、領主も見てみぬ振りをしておるのに、それを知られると困ったことになるぞ」


 ……領主が見てみぬ振りか。さっき言ったことが漏れたら、とっても困ったことになる予感しかない。


「じゃあ今のはナシで……実は村作りが趣味でして、アハハ」

「どこの世界にそんな七面倒な趣味を持つ者が居る?」


 地球なら画面上で村が作れるからたくさん居ますよ、とは言えないか。


「まさか領主のお膝元で謀反を起こす為の戦力を集めているとか、そう言うことは言わぬよな?

 それはそれで気概があってとても面白いが、身の破滅に足を突っ込むどころの騒ぎでは済まぬぞ」


 領主に対しては何も思うことは無いから叛乱とか考えていないんだけど。

 でも、考えようによっては人の領地内に勝手に村を作ってるんだから叛乱とも取れるのか。


「そうだね、セルバン君が生き残るには、正式に村作りの許可を得て村長を続けるか、危機管理部門に入るか、冒険者ギルドで成功を収めてトップクラスの仲間入りを果たすかしかない」

「今の村は他の者に引き継いでも良いし、今のままセルバンが村長を勤めながらジェルダの案の二番と三番のどちらかを選択するのも良い。

 儂はセルバンの作る村を見るのが楽しみじゃからな、村長を続けてもらいたいのじゃよ」

「俺、もう人生詰んでる訳かよ……」


 無許可の掘っ建て小屋村は想像していたよりアウトだった……行政による強制撤去じゃなくて、何がなんでも俺を逃さず村長にしなきゃ気が済まない人達に睨まれてるらしい。


「詰んでる? 思いっきり逆じゃない」

「その若さで領主の注目度ナンバーワンになるなど、普通では考えられることではないのじゃ」

「そうそう、セルバン君が十六歳になる頃には初級貴族に任命されるだろうね。君の活躍はそれぐらいの可能性を秘めているんだよ」


 その頃までストリートキッズを続けるつもりは無いけど、貴族になるのはダメでしょ。

 絶体俺のことをバカにするバカ貴族が悪さをしてくるに違いない。



「森の方は時間内にジェネラルを倒しきっていたので今回はキングの発生は無さそうですね。

 その分がランダムでどこか別の場所に割り当てられた筈です、御愁傷様なことで」

「と言うことは、ジェネラルが残っていればバリシアにキングが来ていた訳か」

「ゴブリンキングはワールドボスですからね。運営としては理由を付けてどうしても出さない訳にはいかないって話なんでしょ。

 期間内にジェネラルの討ち漏らしがあると当初の予告箇所にキングが出現し、全て討伐済みであればランダムな場所にキングを割り当てる仕様らしいです」


 どうやら今回バリシアにゴブリンキングが出現する危機は訪れないそうで何よりだ。


「ただ、回避してもゴブリンキングが時間内に倒されなかった場合はダメージ引き継ぎで予告箇所に転送されるそうですけど。

 え? 何でそんな裏情報がペディアに?

 誰かリークしたのかな?」

マジチュアでは、ゴブリンキングなどワールドボスが時間内に討伐出来なかった場合、強制的に別の場所に転移する仕様である。これは出現地域の壊滅を防止する為に取られる処置である。

ダメージが引き継ぎされて次の出現ポイントに出るのでなく、残ったHPを最大値とする新たな個体として出現するので、傷だらけのキングが出てくる訳ではない。

ラストアタックを決めた下僕にアイテムが贈られることもない。

経験値は活躍度合いに応じて与えられるが、マジチュアにはキャラにレベルがないので純粋に経験を積んだと言う意味しかなく、次回ゴブリンキングと対峙した場合に多少有利になる程度である。

経験とは、この魔物はこんな行動に出る、と言った知識の累積と対応力であると言う考えに基づいたシステムが採用されている。

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