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第27話 パクりではないっ!

 翌朝、ミイナさんから新しいアイテムの作り方を教えてもらった。

 その名は二重ポット式冷蔵庫。

 話を聞くと、何かの漫画かラノベで紹介されていたような気もしてきたが、その時は特に興味も無かったので素通りしていたな。


 でもミイナさんがここで暮らすなら欲しいと熱弁していたので、あとで町に道具を買いに行こう。

 ミイナさんはお使いクエストを受けるからと言って冒険者ギルドへ出掛けて行く。

 彼女が働いて俺が遊んでいたんじゃ気持ち的にヒモだな。いや、恋愛関係にはないからヒモじゃない! うん、セーフっ!


 なんのこっちゃと苦笑しながら、良い感じの入れ物を探しに市場を訪れる。

 この辺りはお使いクエストで何度も行き来しているから顔見知りも多く、声を掛けてくる店主もチラホラ。


 ポットに使うのは壺と言うか水瓶と言うか、理想的な形の物が見つからないので陶器を扱う店主を探し、地面にイラストを描いて見せる。


「異国ではこう言う入れ物を作って野菜とかを冷やして保存してるんだって。

 買うから作ってよ」

「うーん、そんなんでホントに冷えるのか?

 暇があるなら試しに作らせてやるぞ。さすがにそんな不確かなもんを作らせると職人も嫌がるからな」


 そう言う訳で陶器工房に移動して、隅に椅子を置いてろくろも貸してもらう。

 陶芸なんて初めてなので、出来るだけシンプルな形にしようと思ってサイズ違いの円筒形の壺を二つ作る。

 今の段階では乾燥させていない作りかけの土器だな……それも骨壺みたいなシンプルなやつ。

 天日干しして野焼きして、完成するまでには一週間も掛かると言われた。急速に乾かすとヒビが入るとか。


 そんな土器の焼き方をよく縄文時代の人が知ってたもんだよ。きっと誰かがタイムスリップして教えたんじゃないかな?


 商品を焼く時に、焼き窯の空きスペースを間借りして焼いてもらうのだが、無料ではさすがに申し訳ないと思う。

 市場に戻って店主にお礼を言いつつ、飾りっ気の無い素焼きの鉢を二つ購入する。

 釉薬を掛けて焼いた綺麗なやつにしなかったのは、単にケチっただけだよ。

 後で窓辺に置いてイチゴでも育てようか……。


 あっ! 水瓶にこだわらず、試験するだけならこの鉢でも良かったんじゃないか。底の穴さえ塞いでやれば、この鉢が骨壺ポットの代わりに使えるよ……やっぱり先入観ってダメだよね。


 よし、今日はギルドの仕事が出来ないからここで試験をさせてもらおうか。

 市場の裏の空き地は風通りも良くて日陰なので実験に向いている。乾いた風が吹いて空気が良く循環している場所の方が水は蒸発しやすいからね。


 椅子を借りて座ると、外側になる鉢を置く。その中に砂を適当に入れてから内側の鉢を入れる。

 鉢と鉢の隙間は隙間が出来ないように砂で埋め、そこに水を注いでやる。隙間があるとそこの空気が熱を遮断するし、熱が伝わりにくくなって効率が悪くなるんだろう。


 この鉢の間に入れた水が蒸発するときの気化熱で内側が冷えるってのが二重ポット式冷蔵庫の原理。小規模な打ち水みたいな仕掛けなので、電気冷蔵庫みたいにキンキンに冷える能力は無い。

 市場で買った芋を鉢の中に入れ、その辺で拾った丸い木の板を蓋にする。


 なんちゃって二重鉢式冷却装置を一時間ほど放置してみた。

 少しだけ中が冷えているような、いや、気のせいのレベルのような。短時間だからなのか、それともサイズの問題なのか。

 気化熱はちゃんと仕事をしている筈だけど、やっぱり鉢じゃ無理なのかな? どこかの国では商品化されてるから理論的には詐偽ではないと思うんだけど。


 まぁ、骨壺式冷蔵庫の壺が出来てから正式にテストしよう……て言い方よっ!

 それにこっちの人は骨壺なんて使わないから通じないって!


 電源不要の冷蔵庫の試験結果にモヤモヤしながら、次は商業ギルドにやって来る。

 おかしい、今日の仕事は休みにした筈なのに何をしているんだろう?


 そうそう、ミイナさんが紙の作り方を知ってて作りたそうにしているので、事前に話をしておこうと思ったからなんだ。


 受付嬢に用向きを伝えると、特許担当のサティアさんが来て応接室に連れて行かれる。


「うちの村で暮らすことになった冒険者の女の子がね、紙の」

「その子、可愛いの?」

「うん、可愛いよ」

「名前は?」

「ミイナさん」

「年齢は?」

「十六……個人情報抜き取らないでよ」

「年上の彼女が出来たのかなって思っただけよ。他意はないわ」

「他意しかない、の間違いでしょ」


 ……不毛だな。サティアさんに悪気がある訳では無いと思うけど、多分可愛い女の子って聞いて嫉妬でもしてるんだろう。

 でも貴女と俺じゃ一回り年齢が違うから無意味な嫉妬だよ。


「何か喧嘩売ってない?」

「はて? 何の事かな」


 やべぇ、何でか年齢のこと考えてるのバレてたみたい。


「どうせ私は行き遅れですよーだ。

 で、紙がどうしたの?」


 そこはちゃんと聞いてたんだね。ならさっさと仕事してよね。


「ミイナさんが紙の作り方を知っているから、特許を」

「残念なお知らせね。

 紙の作り方自体は知られているのよ。簡単に言うと木の皮を灰入りの水で煮て叩いてほぐして、糊で固めるの」


 マジですか……それは残念。


「でも紙って輸入してるよね?」

「それね、バリシアだけじゃなくて、この国の周りには紙作りに適した木が無くて作れないらしいの」

とサティアさんが残念ね、とクスクス笑う。


 神は居なかった!

 いや、居たけどアレは別だから。


「それで、そのミイナちゃんって女の子はずっと冒険者でやっていくつもりなの?」

「それは本人に聞かないと。戦うのは苦手らしいけど」

「ちゃんと戦闘訓練を受けていないなら、外で活動するのは危険よ。可愛い子なら、冒険者は辞めてこっちに移籍してくれたら有難いんだけどね」


 ミイナさんのことは彼女が決めるべきだし、昨日俺とパーティーを組んだばかりで直ぐに商業ギルドに鞍替えってなると、俺に問題があるように思われるよね。

 本人の気持ちより、そっちの方が大きな問題だよ。


「機会があれば聞いてみてね。ついでに紙の他にも何か知ってたら嬉しいんだけど」

「目的はそっちかよ」

「あら、悪いかしら? 世の中、愛よりお金じゃない?」

「まぁね……そりゃそうかも、だけど」

「愛情や夢では食べていけないのよ。現実を良く見なきゃ、やっていけないから頑張りなさい!」


 見た目が子供の俺に言うセリフとしてどうなんだ?

 これが商業ギルドの一般的な見解だとしたら、今後の付き合いを考えるとこだよ。



「次長の下僕に知識チートは無理らしいですね、使えないヤツです」

「作家の端くれなら、アレやコレや異世界特許パラダイスが出来るぐらいの知識を持っていて当然ではないか?」


 マジチュアの世界には多くの転生者が送り込まれている為、本当に特許は早い者勝ちなのである。

 しかし、この世界は漫画やアニメで見るような物理も化学も無視した完全にスキル頼みのモノ作りは、現状に限って言うと出来ない状態にある。

 ただし、スキルは使い込む程に進化していくし、スキルの進化は他のプレーヤーが操る下僕にも波及していく仕様である。

 マジチュアは放置ゲームなので、サービス開始から時間経過で機能がコンテンツが解禁されていく。


「それが無理なら魔石で動く魔道具作りか、レンチン術でポーションを作ったりするのが王道だろう」

「完全に次長の怠慢のせいだと思いますよ。

 魔道具作りも錬金術師もスキルが必要ですけど、次長が何もスキルを与えなかったから不可能でしょね。

 お供えポイントを貯めてセルバンにスキル与えるしかないんですよ」

「スキルにポイントを使ったら、ガチャが引けなくなるだろうが」

「あー、それは苦情が多くてシステム改修されてます。お供えポイントの指定ポイント到達プラス下僕が条件を満たしているとスキルが自動インストされますよ。

 ガチャでもスキルが出ると噂ですけど、まだ確認されていないですね。次長のショボいガチャ運に期待ですね」


 渾身のボケをスルーされて落ち込むジロー神と、上司のオヤジギャグに耐性が付き過ぎて何も思わないケント神であった。

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