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第23話 カキが食いたい

 俺のカミングアウトは、あまりにもあっさりと受け入れられた……ような振りをして、スルーされているのかな?

 本気で転生したとか別人格が宿っているなんて、簡単には信じて貰えないってことだろう。


「でさ、それなら他にももっと凄いもん知ってんじゃない?

 遠慮せずにお姉さんに教えなさい、お礼に胸を触るぐらいなら許してあげるから」

「その誘惑に負けたら旦那さんに殺されますから」 「減るもんじゃないから、内容次第では許してやる」


 そりゃまた随分……つまらない物だと思われたら、俺死ぬんだよね?

 胸に触って死ぬのはさすがに悲し過ぎるから、触らない方向で。

 

 あと、この世界にも既に転生してきた人が居るようだから、バレない方向にしないとこの先何がどうなるか不安しかない。

 今この世界で生きている転生者が俺一人だけって保証がないからね。


「それなら、連射が出来る機械式の弓はどう?」


 諸葛孔明が発案したとも言われるところの連弩である。動画を見て作り方を知っている程度だが、意外と簡単な構造なのでプロに任せれば上手く再現してくれると思う。

 お手軽な分だけ威力は大したことはないが、鎧を着ていない人には充分すぎる兵器である。


「村の防衛に使いたいのは分かるが、敵に奪われると自分が不利になるような兵器は作らない方が良い」


 凄いっ!天才っ!て飛び付かれると思ったのに、意外にも不評だったのでこれまたビックリ。

 リーダーが言うように、新型ロボットを敵に鹵獲されてしまうようなストーリーは定番だし、優れた兵器を持つのが優れた人間とは限らないか。


「出来れば戦闘方面ではなく、生活を豊かにする方向の商品をお願いしたい。

 美容用品や精力剤とかがあれば嬉しい」


 美容用品が欲しいのは分かるけど、精力剤はどうなんだ? そりゃ欲しい人は居るだろうけど、今の旦那さんには不要みたいだし。

 それとも知り合いにでも渡すのかな?


「それ、何か知っているなら最優先でやれっ!」


 四十代のドルチェには切実な問題らしい。アンタらは少し自制しろっ!


 まぁ、売れば儲かることは理解出来るけど、一番重要なテス何とかって言う成分が何に含まれているのか分からない。

 他には亜鉛を含む食材を多く食べると良いってことしか知らないな。


 マカには栄養はあっても、そっち方面の成分は無いらしいし。

 うーん、知識もないのにバイアグラとか作れる訳も無い。

 そもそも子供達しか居ない掘っ建て小屋村で、そんなの作ってどうするよ?

 いや、作るのは素材だけならありなのか。いやいや、作らせる子供達に用途を説明しづらいだろ。


「食品で効果があるのは、断トツで牡蠣。食べたこと無いし、見たことも無いけどね。

 次点で牛の肩ロース辺りの肉。でも牡蠣の半分ぐらいしか成分は無い」

「牡蠣……あれ、腹を壊すから食えないぞ。見た目もグロいし」


 どうやらRのつかない月には牡蠣を食べるなってのが知られていないのか……いや、この国には明確な四季が無いし……いやいや、あれは腹を壊すからじゃなくて、産卵で味が落ちるからだっけ?

 腹を壊した人って、沖に近い場所で獲れる加熱用の牡蠣を生で食べたんじゃ?


 食べ物の毒性はカエンタケ擬きみたいに調べる方法があるようだから、毎月牡蠣を採取して確かめたら分かるんじゃないかな。

 あー、考えているうちに牡蠣を食べたくなってきた! 真牡蠣と岩牡蠣、どっちがあるのか知らないけど、海に行ったら牡蠣食おう!


「どうやら美味しいみたいね。この子、想像してヨダレ飲み込んでるわ」

「それなら俺らのツテを頼ってみるか。

 本当に牡蠣が食えて効果があるなら、海の側に暮らしている奴らもウハウハになるからな」


 出来ればその話に俺も一枚噛ませて欲しい!


「やっぱり海の物は扱いにくいわよ。川とか池ではないの?」

「それならシジミだね」

「あれか……噛みついてくるんだよな」


 はい? シジミが人を襲うの?


「何処だったか場所は忘れたけど、海水が混じっている湖があって、そこのシジミは大粒で旨いけど気を付けないと殻に指を挟まれて大怪我するから」

「大きくても三センチぐらいじゃないの?」

「は? 小粒でも十センチぐらいあるぞ。三センチのシジミがどうやって噛みつくんだ?」

「……そりゃそうだけど」


 ゲームに出てくる貝のモンスターじゃないんだから、全国のシジミさんにお願いします! 人を襲うのはやめてください!


「ホントにシジミがシモに効果があるなら朗報だ。

 商業ギルドを通して連絡してみるか」


 冒険者だけど、そう言うのは商業ギルドにお願いするんだね。相変わらず業務範囲の住み分けが分からないよ。


「さて、私らはそろそろジェネラル探しに行くから、ドルチェは三人揃ったら別方向に探りを入れてみて。

 何かあれば狼煙で報せるから」


 ローズさんとゾルトさんは森の入り口から少し左に逸れて進んで行く。

 ドルチェは町に報告に行っているロヒッカさんがここに戻って来てから森に入る予定だ。


 暫く時間があるので、リーダーのゲーシルさんが俺に剣の訓練を付けてくれる。

 今までも冒険者ギルドで職員が指導員を勤める訓練を時々受けていたけど、何度か素振りして後はひたすら誰かと斬り合う実戦のような訓練だった。


 ゲーシルさんは基本的な剣の振り方とそれに対する防ぎ方を丁寧に教えてくれて、以外と指導に向いていると思う。


「リーダーの教え上手は相変わらずだな。

 魔物が相手なら剣の防御は必要ないが、ゴブリンにも武器持ちが居るから覚えておいて損はない。

 ギルドじゃ防御なんて教えてくれない技術だぞ」


 一通りの訓練が終わり、全身で息を付く俺にコクダイさんがお茶を手渡してくれる。

 そう言う役目は普通なら幼馴染みの美少女とかメインヒロインがやるもんだろ。俺にはそう言う知り合いが居ないから仕方なく飲んでやるけどさ。



「おい、ケント神。下僕が剣術スキルをゲットする確率は、指導者によって大きく変わるのか?」

「そうですよ。

 次長の下僕はアーチャーなので、ジョブ関連スキルである弓術スキルは自己鍛練でゲット出来ますけど、それ以外のスキルは良い師匠に師事しないとなかなか生えてきません。

 下手に自己流で身に付けると、変な癖が付いてペナルティが発生するのでサブスキルを持たせるなら、早めに師匠を見つけることです」

「そうか、分かった。しかし、今日のお前は随分まともだな。何かあったのか?」

「はい、私のキャラ、遂に嫁を二人娶って冒険者を引退することにしたんですよ。

 ダイブチケットが無くてダイブ出来なくて、ゴブリンウォリアーに怪我させられて死ぬかと思ったら、何とか持ちこたえて町に戻って」

「最近それと同じ状況のキャラを見た記憶がある。ひょっとして、ドルチェらが運んだあの男のことか?」

「ええ、そうなんですよ。

 取り敢えず冒険者は辞めて田舎に戻って二人と結婚して、農家やることに決まったから次のキャラに乗り換えるんです」


 ゲームの世界も随分と狭い社会だな、と呆れるジロー神であった。

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