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第22話 告白は意外にも簡単に受け入れられた?

 ゴブリン講座が終わると、ロヒッカさんが冒険者ギルドに異常事態が発生したことを連絡する為にパカラッ、パカラッと馬に乗って町に戻った。どうやらさっきまで馬の準備待ちだったみたい。


「この森の浅い場所でゴブリンジェネラルが出現したことは、今までに例が無い筈だが」

とゾルトさんが深刻そうな顔をする。

 ちなみに彼の膝にはローズさんが乗っている。


「ジェネラルの出現は、恐らくキング誕生の前触れだろうな」

「キングなんて、またやりあいたい相手じゃないぞ」


 ゲーシルさんとコクダイさんが予想以上に暗い顔になった。傭兵団で長い間戦ってきたドル……ドリチェは他の場所でゴブリンキングとの戦闘経験があるらしい。


 その彼らが、このまま何もしなければゴブリンキングが誕生して人間対ゴブリン一族との戦争が勃発する可能性が高い、と言うか彼らはそう確信しているようだ。


「魔物の減少も、より上位の魔物が現れる前に起きる前兆なんだよな。

 ジェネラルがもう一匹でも居れば、そのうちキング誕生の確率が高くなる。ある程度ジェネラルが増えるとキング誕生の舞台が調うらしいからな」

「キング誕生は阻止出来るのか?」

「誕生の前にジェネラルを全滅出来ればだな。

 ジェネラルを何匹も生まれさせることで、キングが誕生する地域の魔素を大量に無駄に消費させれば防げるらしい。嘘か本当かは試してないから知らんし、最悪を想定しておくべきだ」


 そうなると、最悪の場合には俺の住む掘っ建て小屋村にも被害が及ぶかも……町がどうなろうと大して心は痛まないが、軌道に乗ってきた俺の村を潰されてはたまったもんじゃない。


 シェルド爺さんや商業ギルドなど、良くしてもらった人達の住む場所が奪われるのは可哀想と思うが、金さえあればやり直せる人達だから多分大丈夫!

 随分ゲスい考えだが、戦闘能力なんて皆無な俺に、ジェネラルより強いキングなんてゾンビアタックを百回繰り返しても勝てないよ。


 それでも村を守るにどうすれば良いのだろう?


 気のせいか、俺の思考にはかなりの矛盾を帯びている気がする。

 ひょっとして、前世の駄目人間の俺の魂と、この体の持ち主の魂が混ざり合って微妙なレベルの二重人格になっているのかも。


 とりあえず、守る対象があるのだからそれは守る。それが結果的に自分の為になる。

 他のことは知ったことでなはない。

 うん、整理すればとんでもなく自己チューって範囲内に収まる話だ。何も問題は無い。


 ならばゴブリンキングをどうするか。

 オギャーと誕生する前に、誕生の機会を奪うのが一番みたいだけど、どこでどうやって産まれるのかは知らない。


 ひょっとしてケチ神ジロー様がキングの誕生を阻止させようと、この森に俺を寄越したのかな?

 それなら、あのケチが折角の下僕を簡単に失うようなことはしないと思うから、ご都合主義だと言われようが俺は俺の思うように動くことにしよう。


 神頼みって本当はこう言う意味なのかも。


「ジェネラルの魔石は俺が貰っていいんですよね?」

「セルバン君が倒したんだから構わないけど、魔具も持っていないのにどうするつもりだい?」


 ローズさんがポケットから魔石を取り出し俺に手渡してくれたが、不思議そうな顔をする。


「きっとお守り的な何かになると思うんです。

 俺には神様が味方についているので、多分これで何か出来るだろうから」


 きっととか、だろうとか、不確定要素しかない。

 でも、俺は神様は信じなくても俺の勘を信じる!

 うん、不安しかないけど何とかなる! 


「ジェネラルを倒して頭がおかしくなったみたいだな」

「予想外の大活躍をすると、大抵の子供は自分には特別な力が宿っていると言い出すものだ。

 治るまで温かく見守る意外はないらしい」 


 誰が中二病末期患者だよ!

 後数十年もすれば多分寿命で自然治癒するからな!


 それはともかくだ。ジェネラルの魔石は俺の握り拳より小さく、Lサイズの鶏卵より大きいぐらいか。

 魔具を持っていないとそうそう使い道は無いのだが、持っているだけでも何か役に立ちそうな気がするんだよね。


 ただね、これって血液が固まって出来る血栓の一種じゃないのかな?

 汚い赤色だし、なんか変な石なんだよね。良くみる宝石みたいなすべすべな表面じゃないし。

 とりあえず革の袋に入れて腰に下げておこう。

 

「まぁ何とかなるでしょ」

「さすがにこれは見過ごせんな。

 ビギナーズラック症候群で死んでいった冒険者は星の数の半分は居そうだからな」


 ゲーシルさん、コクダイさんがイタイ子供にどうやって言い聞かせようって悩む親みたいだな。


「それより、皆さん、ジェネラルを探しに行かないんですか?」

「今日の目的はお前に狩りの過酷さを教えることだった。

 それがあっさりジェネラルを倒して、自分なら何とかなるって思っているお前を俺らが放置できると思うか?」


 ゲーシルさんが俺の頭をまた殴る。この人、ほんとそれ好きだな。


 で、今日は狩りでお肉を確保するのが目的じゃなかったって?

 あわよくば幾らか余分に儲かれば良いなぁって感じで居たのに、それはあんまりだよ。


「ジェネラルは探しに行くけど、調子に乗っている村長さんは連れて行けないわね。

 今の様子だと次は死ぬわ」

「今日の稼ぎが無いと村の子供達が飢えるんですけど!」

「それなら適当にお肉とかあげるから心配しないで」


 ローズさんはどうあっても俺にはジェネラル退治をさせたくないみたいだな。

 話に入ってきたローズさんをゾルトさんが抱き寄せる……やるなら見えないようにテントの中でやってくれよ。


「まさか、俺が一撃で倒したからプライドに傷が付いたとか?」


 ローズさんが旦那から離れてすくっと立つ。


「そんな訳無いでしょ。多少は驚いたけど、どうも偶然みたいだし。

 試しにあの木に向かって短剣を投げてみて」


 指差した木まで約十五メートルか。ジェネラルを倒した時の距離よりちょっと遠い。

 でもやるしかないよね。

 あの時と同じように素早く鞘から抜いた短剣は、距離的にも木には届かず方向もずれていた。


「これで技術的にも腕力的にも未熟者って自覚出来たでしょ。

 私がやると……」


 ローズさんは俺の短剣より長く重たそうな剣をヒュッと投げて、狙った木にドスッと命中させたのだ。


「ほらね。これが実力ってやつ。

 村長さんはまだまだ坊やだから出来なくて当然なの。

 あの時は正真正銘、これ以上ない本当の奇跡のマグレ当たりってやつ。

 こんなことで傷が付くような安っぽいプライドになら持たない方が身のためだわ。

 私達が与えられた一流の評価は伊達じゃないからね」


 残念、イケルと思ったのに挑発は不発か。


「私達はジェネラルを探しに行く。間違いなくギルドからそう指令が出るからね。

 今からこの森の危険度が一時的に見直されて見習いは入れなくなるわ」

「そう言うことだ。お前はあっちのテントに居る鋼級下位の冒険者と一緒にバリシアに戻ってくれ。

 駄々こねて勝手に森に入ると、一年間トイレ掃除の罰を受けるかも知れないぞ」


 命令違反の罰がそれね。確かに一年はキツイ。それにそんな暇は無い。

 それと今更だけど、ドルチェよりローズさん夫婦の方がここでは偉いみたい。


「ギルド資格の剥奪とかは無いと?」

「他の見習いならあり得るが、セルバンをギルドが逃がすとは思えない」

「職業選択の自由はあるべきと思うんだけどなぁ。

 殺人を請け負う闇ギルドみたいな組織なら、秘密保持の為に抜けられたら困るだろうけど、所詮冒険者見習いに何を期待してるんだろうね?」

「……なぜ知っている?」


 はい? 俺、何かやっちゃいました?

 変なこと言ったつもりは無いんですけど。


「そう言うギルドは確かに存在するが、一般の者、しかも村長のような子供が知る筈は無い。どこで知った?

 闇ギルドはどこにある?」


 ローズさんが豹のような鋭い目で俺にそう質問する。

 闇ギルドと何か因縁があるとでも?


「物語と言うか?」

「そんな物があるわけ無いでしょ。検閲に引っ掛かり販売した者は捕えられるわ」


 しょうもないところで過激な国だな。

 でも、言い逃れ出来そうに無い程に真剣なんだよな。本当に食われそうな程にローズさんの顔が近い。


「俺の秘密なんです。

 人には言えないし、言っても信じて貰えないと思うけど、俺の頭の中には別の人の記憶が入ってるんです」

「そうか」


 え? そうか? それだけで終わるの?


「それなら村長が色々おかしいのも納得だ、いや、すまなかった」


 謝られても逆に困るんですけど!


「だよなぁ。セルバンは妙にエロガキだし、それなら納得だ」

「ただのませガキだと勘違いしていたが、ボウズが作った臭くない石鹸とかも、ソイツに教えてもらってたなら超納得だ」


 ゲーシルさんとコクダイさん、何気に俺の扱い酷くない?

 それに、そんなに簡単に信じられると逆にショックっ! 普通なら、コイツ頭おかしいんじゃね? ってなるところだよね?


「シェルド爺さんも、その可能性を考えてセルバンに投資したってことか。抜け目の無さがさすがだな」

「俺みたいな人って他にも居るの?

 あまりにアッサリ信じてくれてて」

「過去に偉業を成し遂げた何人かはそうらしい。

 まぁ、頭カチ割っても確かめようがないから、そう言うことで落ち着いたってのが事実ってところか」


 それでちゃんとしたシャンプーがあったわけね。それなら先に石鹸作れよなぁ。


「本当に生まれ変わりだとしても、闇ギルドなんて名前は人前では出すなよ。

 誰が所属しているか全く分からんからな」

「超ヤベェってことね」


 転生したと言ってる人が過去に実在していたから俺の話も信じてくれる訳で、でも本当にその人が転生しているとは信じられていないのか。

 だけど、その人と同じように俺も凄いから、とりあえず本気じゃないけど、俺に話を合わせて誤魔化そうって訳だな……あんたら対応が大人だよっ!



「闇ギルドがあるのか。冒険者ギルドと敵対関係か?」

「どんな国にも非合法な活動を請け負う集団はありますからね。

 実は私も普段は転生神、その正体は覆面調査員なのです! ミシュランガイド掲載店に妻と二人でサラリーマンとOLのカップルを装って出没してますから!」

「ん? お前の舌は馬鹿舌だろ」

「はい、なので調査は妻に丸投げしてます」

「……で、それと闇ギルドは関係しているか?」

「正体隠してバレないように裏で動いてるってところは共通ですよ!」

「…………分かった、それなら覆面調査員のどこに非合法要素があるかも、原稿用紙三枚に纏めて明日提出しろ」

「この神、鬼だーーっ!」

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