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閑話 神の箱庭『マジカルミニチュアガーデン』

 ここに白い空間は出来たのは遥か以前。

 誰の記憶にも残らぬ程の過去のこと。


 太陽の周囲に惑星が出来たのは本当に偶然であったが、そこに暮らす生物が誕生したのは白い空間を住み家とする者……それを敢えて呼ぶなら神となろう……の意志が大いに関わっている。

 そう、誰も見ていないと神がポイ捨てした種が、引力に乗って地球に落ちてしまったのだ。そこから生命は誕生したのだ。


 それから何億もの年数が過ぎ、地球は神の娯楽の場と成り果てていた。

 いや、この場所に存在する惑星は既に何度も消滅したのだが、その度に神は娯楽を求める為に地球を復活させるようになったのだ。


 更に数億の年月が過ぎると、神の数も徐々に増えていき、地球の消滅を待ちきれぬ者が現れた。

 その神は持て余した力をもって地球と同じ場所に僅かに位相をずらしたもう一つの世界を作ることに成功した。


 それが所謂異世界の始まりである。


 それを機に強力な力を持つ神が自分だけの新たな異世界を作り出す、大異世界ブームが到来したのである。


 しかし神の力は地球で発揮するには大き過ぎた。

 ある神が山火事を消そうと水を呼ぶと、その地球の半分が水没してしまったのだ。

 助けようとした人間達を却って滅ぼしたその神は大いに嘆き悲しみ、神による地球への介入を禁止したのである。


 だが、どうしても人間と交わりたいと願う神も多く居たし、禁止されると逆に介入したくなるのは神であっても人間と同じである。


 そこで産み出されたのがサーバント制度である。

 この制度は特定の人間を自らの分身、つまり駒として扱うことを可能とするものであるが、勿論条件がある。


 それは、駒となる人間が神の意思に従うことを了承していることである。


 ここで問題となったのが、禁じられている地球への介入に該当する範囲である。

 地球に暮らしている人間を駒とすることは、その禁則事項に当てはまるのではないか、との議論が起きたのだ。


 今だもってこの議論に決着はついていないのだが、他の位相の地球で死亡した人間を自分の作った異世界に送ったり、セルバンを下僕としたジロー神のようにゲームの舞台として運営に作られた異世界に下僕として配置することが、抜け穴として横行しているのが現状である。


 人間を異世界に送り届ける為には、あの白い空間に人間を招かねばならないのだが、生きた人間を招くことは禁則事項を犯すこととなる。

 

 そこで死んだ人間を利用することになるのだが、寿命を全うした人間は異世界に送っても復活しない。魂が完全に擦り減った状態だからだ。

 そこで異世界に送る人間は与えられた寿命を全うしていない人間に限ると言うルールが自然に発生する。


 不思議なことに、人間の中には稀に異世界の人間を強制的に召喚するスキルを持つ者が現れる。

 そのような者に召喚された人間が居た場合、神は白い空間で一時的に保護し、生き残る為のスキルを与えて召喚した者の元へ送るサービスも行っている。

 これが異世界召喚された者がチートを持つ理由である。


 白い空間に来た人間の全てが異世界転生を望む訳ではなく、その者達の余った魂は神の手元に魂ポイントとしてストックされていく。

 その魂ポイントが誰かに与えるチートの原資であり、セルバンを下僕にしたジロー神は原資……チート付与の為の魂ポイントを所有していなかった為にセルバンにチートを与えられなかった。


 その事を説明しなかったのはジロー神の怠慢であると言えるのだが、神と人間では考え方に大きな隔たりがあるので、人間の常識を当て嵌めて論じることは出来ないのである。


 尚、無数に存在する異世界は運営と呼ばれる団体の管理下に置かれており、運営が下僕を送り込んだ神々にガチャチケットやアイテムを配布する。

 暇を持て余す神を楽しませる為に、様々なイベントを企画し、参加した神達から称賛やクレームを受けながら運営はシステム開発を進めている。


 そして駒に憑依するゲームシステムを完成させたのだ。

 あくまでゲームであり、駒に憑依しても神の力は大きく制限されており、ハラハラドキドキな体験を味わうことが可能となり、多くのオタ神に愛されている。


 駒の特性の成長やアイテムを持たせるのもゲームシステムで管理、制限されている。

 これにより人間としての生活を体験できるのがゲーム『神の箱庭 マジカルミニチュアガーデン』の特徴である。


 寿命を全う出来なかった人間を救済しつつ、グレーゾーンであるが禁則事項に触れることなく人間に介入出来るとあって、このゲームは多くの神から支持を集めている。

 システムメンテナンスや神件費など経費が発生する為に完全無料では提供できず、幾つかの月額プランと課金アイテム販売など人間が作り出したゲームを真似しているのは内緒である。


 運営とゲームの話はこれくらいにして話を戻す。


 寿命を全う出来なかった場合と、召喚による魂の強奪以外にも、特例として転生させるケースがある。

 転生後に聖人、聖者と呼ばれる特別な地位に到達することが想定される場合である。

 但し、そのような地位に到達するには特別なスキルを与えて送り出す必要があるので、セルバンが該当することはない。


 駒としてのセルバンであるが、プレーヤーとなる神は通常一つのゲーム世界に一つの駒を配置出来る。

 この駒は駒の意思によって行動するので、神にとっては育成放置ゲームである。

 時間経過による放置報酬は駒が持つ社会的地位などによって決定される。


 プレーヤーは憑依チケットを消費することで駒の中に入り、行動を共にすることが可能である。

 それがセルバンの射た二本の矢と短剣の投擲である。


 憑依チケットはレアアイテムである為、次回セルバンの中に入ることが可能な時期がいつ訪れるかは不明である。

 従ってセルバンが自分に秘められた力が眠っていると勘違いしてゴブリンジェネラルに挑むことがあれば、そこで駒はロストしてプレーヤーはまた新しい駒を用意することになる。

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