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第19話 顔合わせ

 冒険者とは夢を追いかける者だ、との意思表示がパーティーの名前である『ドリームチェイサーズ』は、元々五人パーティーだったのだが二人抜けた為に解散した。

 ゲーシルさん、コクダイさん、ロヒッカさんの三人は、解散後も時々集まって狩りに出るぐらいの活動をしながら各地を巡り、もう良い歳だからと故郷であるバリシアに戻ったそうだ。


 ちなみに全員独身。決まった相手がいると動きにくいとか言っているが、別の理由はないのかな?

 誰が風俗店に通おうが俺には関係ないし。


 まだ十三歳の俺にはそっちの方面は刺激が強く……ありません!って、そんな内容の話もこの人達は平気でしてるからなぁ。

 でも、これが男しか居ない冒険者パーティーだと普通なんだとさ。


 この世界の冒険者は、S級とかのアルファベットによるランク付けではなく、

 ビギナークラス

 ノービスクラス

 ミドルクラス

 エキスパートクラス

 マスタークラス

とランクが分類されている。


 俺のような未成年者がなっている見習いが一律ビギナーと呼ばれる最下層。


 その見習いから冒険者に昇格、もしくは冒険者登録仕立ての成人がなるのがノービスクラス。


 ノービスである程度の実績を積んだ人がミドルクラスとなる。

 このミドルクラスで冒険者活動を終わる人が一番多い……と言うか普通の人間が無理なく普通に冒険者生活を送るとこのクラス止まり。


 ずば抜けた才能の持ち主が真面目に活動を続ければエキスパートクラスになり、このクラスに到達すれば一流冒険者と呼ばれる。

 それから更に著しい活躍をすればマスタークラスになる。

 

 マスタークラスはこの国でもトップテンに入れそうな人達だ。


 俺達はトップクラスの冒険者だ!と言う資格があるのは、エキスパートクラスの中でも何か抜きん出た能力を持つ者だけであり、ゲーシルさん達は自称トップクラスである。

 ぶっちゃけ俺には何がどう違うのか分からないので、

「はぁ、そうなんですね」

とその話を聞き流した。大して冒険者のことに興味は無いし。


 だが、教えて貰いながらおかしいと思ったことがあって、ビギナーとかノービスとかの呼び方は使われていないのだ。

 クラスが上がるとギルドカードは鉄、鋼、銀、金、白金と変わって行くので、そっちで呼ばれるのが一般的だ。


 しかし鋼の次が銅ではなく銀なのは何故だろうと疑問を持つ。

 まさか決めた人が銅と鋼の漢字を間違えたとか?

 それとも銅、カッパーが河童に聞こえて嫌だった?

 深く謎である。意外と鋼の◯◯ってのに憧れてた

だけなのかも。

 念の為にゲーシルさんに尋ねてみた。


「銅が無い理由は、一番始めに決めた人に聞いてくれってこと?」

「いや、そんなことはないぜ。

 現役で活動している冒険者は、ノービスが一番数が多い。十六歳を超えて登録してから、暫くはノービスだからな。

 そこで意識向上を促し、数の多いノービスの中でも下位と上位とに線引きするために、敢えて鋼と銅の二つに分けられていたんだ。

 鋼から銅になれば、一人前まで一歩手前だと思わせる為にな」


 それ、どう考えても制度設計を間違えてるよ。

 見習いは石でも木のカードでも何でも良くて、ランク外からのスタートで良かったんだ。

 それで冒険者登録仕立ての人はビギナーの鉄、冒険者に慣れてオムツが取れたらノービスの鋼にしておけば、ミドルクラスが銀、エキスパートクラスが金になって分かりやすいだろ。

 このランクと材質を決めた人はほんと馬鹿だな。


「けどな、銅のカードはすぐ曲がるわ、緑色に錆びて毒になるわで使い勝手がめっちゃ悪いから、みんな鋼のカードを使い続けたくて鋼のままでいたから、銅は自然に消えていって鋼だけが残った感じだ」


 なんだ、カードを銅で作ること自体がNGだったのか。変に理由をあれこれ考えて損したよ。


「でも柔らかいのは銀も金もでしょ?」

「硬貨と同じで混ぜ物をするし、銀以上には傷が付かないように特殊な表面加工が施されるからな。

 その分カード発行手数料が高くなる。それもギルドの収入だ」


 そうだったのか。でも銅の錆の緑青には毒性は無いんだけど。あったら銅像とかには使わないと思う。

 それに銅貨も錆びて青くなるけど普通に使ってるし。 


 そんな豆知識を教えて貰いながら、狩りの現場となる森にやって来た。

 森の入り口付近にはテントが幾つか張ってあるの で、冒険者がここでビバークしているのだろう。


 そこで一際大きなテントの中から一人の女性が出てきた。


「坊や連れて来たのは、ドルチェの皆さんですね?」


 早速『リ』と『ル』を間違われてるよ。もう正式に『ドルチェ』で良いでしょ。


「シェルド爺さんとこの鮮赤(バーミリオン)じゃないか。これまた大物が来たもんだ」


 ゲーシルさんが両手を広げてお手上げだとジェスチャーをする。


「その呼ばれ方は好きじゃない。ローズ・マリーと呼んで欲しい」

「分かった分かった。悪かったよ、右手を離せ」


 喧嘩っ早い性格なのかローズさんは右手を剣の柄に添えていた。喧嘩……であってる?


「こりゃすまない、癖でつい」


 癖で何人斬ったんだ?


「それにしても、ケチで有名な冒険者ギルドがまさか坊やの護衛にドルチェを出すとは思わなかったよ」

「そりゃ違うって。俺らが指名された奴らから横取りしたんだよ。

 面白いボウズが居ると聞いてたからな。こんなに若いのに、もう下の方もいけるクチだぞ」


 その情報を出すとは卑怯なりっ!

 ローズさんに軽蔑されるじゃないかよ。


「甲斐性のあるうちはそっちも元気な方が良いからね。さすが村長さん、しっかりしてる」


 そこ、素直に納得されても困るんですよね!


「まぁね、私もシェルド様がベタ褒めしている村長さんに会ってみたくて、昨日から旦那と待ってたんだよ」

「旦那まで来てたのかよ。もうこの辺りの獲物は残っていないんじゃねえか?」


 旦那ってテントでイビキかいて寝てる人だね。確かに大柄で強そうだ。

 ローズさんも女性としては大柄だけどそれほど筋肉質には見えなくて、雰囲気は女豹かな?


「そんなことはしないさ。野生の勘を取り戻す為に好きな獲物を狩るだけだからね」


 野生はどうか知らないけど、腕を鈍らせないようにってことなんだ。

 シェルド爺さんと言えば、うちの三人娘をメイドに迎えてくれて、それからも色々と良くしてくれている。俺と子供達の少ない稼ぎで村が運営出来ているのはそのお陰だ。


「ゲーシルさんは御者やっててケツ痛いんだろ?」

「セルバンと違って俺のケツは鋼より硬いわ」


 どういう例えだよ。


「なら大丈夫か。村長さん、今から森に入るかい?」

「出来ればセルバンでお願いします。それで旦那さんは?」

「今日はここで見張りをするって寝てるわ」


 それじゃ見張りになっていないと思うけど、達人なら寝てても敵の気配を察知するって感じのかな?


「浅い場所はノービスクラス用に手は付けずにおいてある。

 そん……セルバンは森歩きの経験は無いんだろ?

 多分今日は歩くだけでバテると思うよ」


 前世ならすぐバテる自信しかないけど、この体ならそんなことはない筈。

 この一年で食生活はかなり改善したし、依頼や村を作るので体は動かしっぱなしだったからね。


 一日一万歩どころか、三、四万歩は歩いてるんじゃないかな? さすがに過剰申告が過ぎるか。


 それから森に入り、ガソガソと音を立てながら歩いていく。


「獲物に気が付かれないようにするなら、あまり音は立てないことだな。

 まぁ、この辺りで狩りはしないから、歩く練習程度のつもりで歩きな」


 さすが女豹様、簡単に無茶を言いますね。

 邪魔な草木やら何やらで視界は悪いし、足元も不規則にでこぼこしていて思ったより歩きにくい。


「そう言や、ドルチェは元々は傭兵だったと聞いていたが、どうして冒険者に転身したんだい?」

「傭兵は負けると栄誉にならないし死ぬときもあるが、冒険者は負けても命さえあれば再チャレンジが出来る。

 仕事も選べるしな」


 四十代トリオは元傭兵でしたか。それで視線に迫力がある訳だ。


「そっちは?」

「私と旦那かい?

 そりゃ、最初からロマンスを求めて冒険者になったに決まってんだろ」


 冒険者パーティーを婚活パーティーと間違えていた訳だね。

 それで上手く旦那を捕まえて、かつ目茶苦茶強くなったのなら目標達成以上の成果でしょ。


「セルバンもそのうち嫁を取るんだろ?

 村に候補は居るのかい? 居ないわけはないよな?」

「そう言うのは考えてないんで。

 いざとなればお姉さんの居るお店に行く予定なんですよ」

「はぁ? まだ早いだろうけど、選り取り見取りじゃないのか?

 それとも会頭のメイドになった子達が本命だったのかい?」


 うーん、村の女の子にそう言う見られ方をして欲しくないかな。


「人を好きになりたくない症候群か。

 変に劣等感があったり、忙しすぎるたり、過去にふられたりしてなることがあるそうだね。

 あとナルシストとか、人に興味の無い人とか」


 見事に最初の三つは当て嵌めるな。

 三つ目のは嘘だろって? ……バレたか。

 ローズさんに見た目がバタ臭いからイヤだとか言ったら、グーパンで三回ぐらいはあの世逝きにされそうだ。


「おや?」

「どうした?」

「この先に人が居る」


 警戒しながら近寄ると、脚に深手を負ってて木の幹に凭れている男性を見つけた。荒い息をしているが命に別状は無さそうだ。


「まだそう奥には踏み入ってないが何にやられた?」

「ヒト型の魔物に……仲間が二人……奥に居るんだ」



「よしよし、やっと楽しめそうだ」

「あちゃー、この神、人の不幸を楽しんでますよ」

「神聞きの悪いことを言うな。この先にヒロインが待っているかも知れんのだぞ、今期待しないでいつ期待する?」


 次長はヒロインが奥に居ると思っているようだけど、既に二人が殺されているか、生きていてもセルバンには見向きもしないパターンなんだよ、と内心ほくそ笑むケント神である。

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