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第1話 想像以上に下手

 妙に頭に響く声で俺は意識を取り戻した。


「ふん、つまらん。出直せっ!」

「あっ! 次長、待ってくださいよ!

 その話には実はまだ続きがあってですね!

 涙あり、笑いありの長編大スペクタル・タイガードラマが繰り広げられる予定があるかもです!

 続きはウェブでっ! ガォーっ!」


 えーと……そのタイガーじゃなくて大河だろ?

 いやいや、そんなことはどうでも良い。

 確か俺は自転車に乗ってて空き缶をしゃいで、そのせいで転んで頭を打った筈。

 それなのに何故か病院ではない真っ白な空間に居て、偉そうななのと気弱そうな二人が話し合っている場の隣に座っているのだ。


 その二人は贔屓目に見ても医者と看護師には見えない。白衣とナース服ではなく、ギリシャ神話に出てきそうな布切れを巻いたような服を着ている神様ぽいからだ。


 しかし、偉そうな方は……なんと言うか昔風に言うと『ちょいワルおやじ』なサッカー選手のような感じがする。うん、結構派手に遊んでそうだ。

 一方の部下の方は、落語でもやってそうな中年外国人って風貌だな。いや、丸い眼鏡をかけたらケント・デリカッ○に見えるかも知れない。そんなの知らないって?


「ほぉ、実は妹が兄を好きだったが素直に言えなかったとか?」

「分かりますかっ? さすが転生局次長!

 ほら、そこの人、ボーッとしてないで座布団一枚持って行って!

 局長の座まであと一つですよ!」


 どうでも良いけど、手下さん、ヨイショするのがかなり下手だな。

 それに座布団減らしてどうすんだ?

 二枚追加するとこだろ……いや、その前にちょいワル神も何も面白いこと言ってないけど。おっと、その前に俺を山田君扱いするなって。


 で、あの妹が俺のことを本当は好きだったと?

 そんなこと無い無い。だったらもっと俺に優しく接してくれてるって。

 アイツの腹黒さは反射率ゼロのスーパーブラックなんだからな!


「しかし、その程度のストーリーで自爆死のバカを転生させるには、理由として弱すぎる。

 基本的に転生を認めるのは、『偶発的に本来の寿命を全う出来なかった場合』又は『強引な魂の強奪が認められた場合』のみだ」


 ふむふむ、ジOーラモ似の神様のセリフだと転生って寿命で亡くなった場合には適応しないんだな。やっぱりラノベ読んでる若い魂の方が異世界に耐性があるからかな?


「例外規定として『転生後の世界貢献度が著しく高いと想定される場合』ってのがあります。これにコッソリねじ込んでもらえれば」 

「ふん、それはありえん。何せポイントが足らんからな」


 俺に期待できんと切り捨てた次長さんを納得させることが出来れば、俺も転生できるのか。

 何のポイントが足りないのかちょい気になるけど。

 と言うか、コッソリってことは該当しないって認めているだろ、ケント神よ。


 ここで俺に気が付いたのか、ジロー○モぽい方が俺の方を向いて指差した。


「そこの男。俺を納得させることぐらい、簡単だとか思うなよ。

 まずお前が死ぬ前の『ちょっとさぁ、どうしてまたスライム出してくるのよ』って言われる場面から映像を流してやるから、見てみるが良い。

 それから自分に転生する価値があるか聞いてやる」


 そして俺と妹の間に起きた喧嘩の一部始終が立体映像で流された。しかも妹の声の完コピまでやってしまう転生局次長って凄いんだな。

 それにちょい悪そうな見た目から想像出来ないぐらい、意外と親切だよ。いつの間にかお茶を出してくれてたし。


「見た目と違って悪かったな!

 ついでにさっきの映像の文字起こしもしておいた」


 一体どうやったのかは分からないが、印刷仕立てのまだ暖かい原稿が乱暴に投げ渡され、思わず立ち上がってごめんなさいと、頭を下げる。


「さっさと読め。俺の時間を無駄に使わせるな」

「はい! すぐに読みます!」


 手にした原稿を読み進めていくに連れて顔が真っ赤になっていく。

 確かにこれじゃ転生する値打ちなんて無いじゃないか……恥ずか死コース確定だ。


「ほらな、本人も自覚した。この件は終わりだ」

「しかし、ですね」

 

 自分のことだけど、まだ食い下がろうとする部下を応援する気にはなれないぐらい恥ずかしい。

 ここには穴が無いから是非とも穴を掘って入りたいょ。


「そこまでコイツに拘る理由があるとは思えん。

 だが、あの缶コーヒーの空き缶を投げたのがお前だと素直に自白するのなら、少々考え直しても良い」


 へぇ、神様も缶コーヒー飲むんだな。でも空き缶のポイ捨ては不法投棄でれっきとした犯罪だからね。

 でも自白強要は証拠能力を否定されるし、人権無視だから神様でも絶体やっちゃ駄目だよ。


「おや、バレてましたか。さすが次長!

 局ナンバーツーは伊達じゃないですね!」


 あ、あの空き缶、ホントにお前がやったのか。そうか、神様なら手下が嘘を吐いても無駄なのは当然か。


「物質消滅なり物質変換を使えば人間界にポイ捨てせずに済むのに、その程度の手間を惜しむとは」

「すみません、今月はゼタが上限を超えてまして、処理速度が低速になってたものでつい……」

「けちって安いプランを申し込むからだ。どうせならヨタプランにしろ」


 何の話か知らないけど、携帯のプランみたいなのが神様の世界にもあるんだね。


「どうせ下らない異世界配信チャンネルを見ながら寝落ちしたんだろ。

 異世界配信を見るなら、高くても見放題プランを選ばないとすぐオーバーしてしまう」

「はい、それを身をもって知りました」


 良くは分からないけど、空き缶処理に使うデータと動画配信のデータが同一のプランに含まれているんだ。

 神様の世界じゃ空き缶を消すのにも魔法を使わなきゃいけなくて、神様が使える魔力ってまさかの月契約な訳?


「そうだ、貴様、人間にしては良く理解出来たな」

「マジですか」

「そう、マジッくだ………………」

「はぃ?」


 意味が分からないと悩む俺に向けて、気を取り直すようにゴホンと咳払いを一つついたジロー神様が言葉を続ける。


「神の世界ではほぼ全てにおいて魔法を使用し、魔法の発動にはそれに応じたマギデータ量が必要となる。

 そのデータ量確保に『ドコデもん』『祖父とパン喰う』『え~っ言う』などの大手キャリアのいずれかと契約を結ぶのだが、こうなった理由はさすがに話せんが」


 ログを残すことで追跡調査が出来るとか、多分そう言う管理絡みなんだろう。

 それにしても神様の世界もIT化と言うか、おかしな時代になってたんだ。

 で、どうしてさっき、あんなに間があったんだろ?


「余計な気遣いは無用だ。長生きしたければ余計な詮索をするな」

「俺、既に死んでますけど何か」


 病院ではなく、こんな怪しい白い空間に来ていたら、誰だって自身がお亡くなりになったと察するよね。


「そりゃそうだ。でなければ人間はここには来れん。

 それにしてもお前、なかなか良い反応だな。

 普通なら神を前にすれば、借り物競争で借りた招き猫の様に恐縮して、そんなでかい態度は取れんのだが。

 お前の前世はゴールデンレトリーバーか?」


 それは恐らく、俺がこう言う舞台を想像しながら何度も小説にしてたからじゃないかな?

 俺だけじゃなくて、他のラノベ作家さんも意外とあっさり適応出来ると思うよ。


 で、何で前世が犬?

 神様なら俺の前世ぐらい調べたら分かるんじゃない? 調べる手間を省かないでくださいよ。


「そうか、自称小説家未満初心者以上だからか。

 ならばお前のような者がこれ以上出てこんように、地上での転生ブームはそろそろ終焉に向かわせるべきだ。

 海外勢も平気な顔で劣化ぱくり漫画を大量にばら蒔き始めたようだし、そろそろ良い頃合いだと思わんか?」


 いやいやいや!

 そう言うのをこんな中途半端な人間の俺に判断に委ねるな!

 責任重大すぎて胃が穴だらけのザルになるって。


「単に参考意見にするだけだ。ちなみに三個意見を聞く予定だ…………」


 これ……って、そうか、そう言うことか!

 アンタ、神様のくせして駄洒落が下手過ぎるよっ!

 これでオチとか言わないでくれよな!


「下手で悪かったな。今まで相手が居なくてな。この言葉を使った相手は……実はお前が初めてなんだ」


 そこっ! 照れながら言うなっ! てか言い方!

 手下がさぁ、告白ですか! 男でもイケルんですねって勘違いしてるから!

 そもそも勘違いするのもおかしいだろ!

 はぁ……こんなオチで納得出来るかよ。

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