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第13話 リサイクルで村認定

 生活は豊かとは言えないが、地道な活動を続けることで冒険者ギルドはともかく、商業ギルドや親切な住人からの俺の評価が上がっていったのを実感出来る。


 こうなると冒険者ギルドも俺に対する評価を上げるしかなくなり、ずっと頑なに城門から出ることを禁止していたのを解禁してくれたのだ。

 ただし冒険者ギルドの職員同伴であるし、外に出る目的が認められた場合に限る。でもそこは買収なり何なりで上手くやろうと思う。


 賄賂が普通に通じるなんて、汚職が蔓延しているどこかの共産国家みたいだな。この町でこんなことになっているのは今の冒険者ギルドだけだと思いたいけど、他のギルドはどうなんだろう?

 まぁね、そう偉そうに言っても俺が渡している賄賂なんて現金に換えてもそう大した額じゃない。

 飴ちゃんやポケットティッシュを配っているのとそう変わらないレベルだな。


 ともあれだ、かなり遠回りになった気がするが、これで漸く国外逃亡への第一目標『城門から出られるようになろう』が達成できたのだ。


 実はこっそり穴を掘って城壁の外に出ることも考えたが、排出する土砂の扱いとシャベルやツルハシなど器材の入手の都合から困難と判断して諦めたのだ。

 それに自宅から町の外までの地下トンネルを掘る労力を考えると目眩がしたし。


 国外逃亡への次のステップは、資金調達だな。

 次の町で働いて、貯めたお金で更に次の町へと移動していたのでは、いつ国境を超えられるのか見当もつかない。一足で高飛び出来るだけの資金を貯めておくに越したことはない。

 それに逃亡資金は商業ギルドへ預ける訳にもいかないだろう。大金を急に動かせば、何かあると勘繰られるのは間違いないから。

 

 村の子供達の日々の稼ぎなんて全部かき集めても日々の食料を買った後の残りなんて一日に大銀貨二枚に達するかどうか。

 そのお金を貯めて村で必要になる資材、布地、道具などを買い足しているので、正直余裕があるとは言えない。

 それでも誰かが病気になった時の為にも備えは必要なので、その分は別に残してある。本当にお金を遣り繰りするのは結構大変だよ。


 それでも稼ぎ頭となった三人娘の仕送り、養殖、木の実、それと畑の作物で子供達を食べさせることは出来ている。日々手元に残る金額は雀の涙程度だが。

 お金を稼ぐだけなら努力次第でまだ何とかなるだろう。

 大きな問題は、大金を持って移動することの難しさだ。


 空間魔法が使えない異世界なんて本気で欠陥品だと思う。

 一枚で十万円相当の金貨に両替出来たとしても、一枚で百万円相当の大金貨への両替は商店を持たない俺がやると不自然そのもの。

 自力で稼いで貯めたとしても絶対に怪しまれる。


 折角神棚を作って毎日食べ物をお供えしてると言うのに、何も実感出来る御利益の無い神様って詐欺師じゃない?

 それともなにか?

 ポイントをある程度貯めなきゃ何もしてくれないとか?


 まぁね、元々神頼みするつもりは無いからアイツのことは無視して良いとしても、移動の問題を解決しないと国外逃亡は不可能のままだと思うのだ。


 仮に一千万円ぐらいを逃走資金にするとして、一万円相当の大銀貨だと千枚になる。革袋に仮に百枚入れるとしても革袋は十個必要だ。

 銀貨一枚が二十グラムとして、千枚で二万グラムは二十キロ……革袋一個が二キロだね。

 そう考えると大したことない…いやいや、かさ張り過ぎて全部を背中に背負って歩けるもんじゃない。


 荷馬車を持つことが出来たとして、子供一人で荷馬車に乗って国境を越えられるかどうかも怪しいもんだ。

 毎日ドジョウ料理をお供えしてるのだから、神様どうか何とかお願いしますよ!


 愚痴をいつまで続けても何も前進しない。

 取り敢えずは自分の安全を確保しつつ荒稼ぎする方法を考え無ければ。

 冒険者ギルドでやっていたお使いクエストだが、一般市民の幼少組が増えたせいで俺に回って来る数が減ってきている。

 俺が効率良く稼いでいると勘違いした馬鹿な親達が、自分の子供を冒険者見習いにするケースが増えてきたからだ。


 確かに俺は他の子供より効率は良いが、更に数も多くこなしているのを知らないらしい。

 それを考えず、一日一個の依頼で満足して帰っていくガキどもに軽く殺意が湧いてくるのは仕方ない。

 そうなると、もっと報酬の多い依頼を探すことになるが、そうそう都合良くは回ってこない。

 これじゃ俺の貯蓄計画が頓挫する。

 魔物を狩ることが出来ればもっと稼げるだろうが、手持ちの武器は狩猟用の弓だけだ。矢は勿体ないので子供達による家内製手工業。


 子供と言え手先の器用なやつが居るもんで大助かりだが、ただの鳥と魔物とでは危険度合いは段違い。

 仮に矢が良品だとしても、弓は冒険者ギルドが廃棄しようとしていた品だから、命を掛ける狩りには使えない。

 となれば剣か槍が欲しくなるが、冒険者見習いの子供にそんな物を売ってくれる店は無い。

 廃棄品なら手に入るだろうとおねだりしたが、折れたり曲がったりして武器にはならない物でも鉄の材料として売却。折れた槍の柄も何かに使う。使えない部分は薪にしているからガキにはやらんと断られた。


 ガッカリしていたところに、油の濾過の試験を引き継いでいた女子二人組のエッフェとエンメから成功したって報告が来た。

 色々な木の実の殻の灰をメッシュの細かい布袋に入れて作ったフィルターを三段階で使うそうで、炭の匂いが取れるまで時間が掛かる為に完成品と言えるのが遅くなったのだとか。


 これだ!


 今命名、フィルターガールズの頭をグシャグシャと撫でてから商業ギルドへと直行し、発明品を所管する部署を教えてもらう。

 特許担当だと自己紹介してきたお姉様のサティアさんに濾過システムの概要だけ説明し、現物はうちに来て確認して欲しいと嘘泣きまでして頼み込む。

 今ならドラマの子役オーディションに受かるかもね。


 渋々ながら付いて来てくれたサティアお姉様が掘っ建て小屋村に驚きつつ、実験装置のある小屋に入ってくる。

 廃油の匂いがキツいので、寝泊まりしている小屋とは離して建てたのだ。


 フィルターガールズがヨイショと上にある投入口からトポトポトポと廃油を流し、出口にポトポトポトと滴り落ちた綺麗な油を見てお姉様が納得する。


 フィルターは目詰まりすると使い捨てになるが、中身の材料は拾い物なので材料費はほぼメッシュのみ。

 殻は煮炊きや湯を沸かすついでに燃やせばよい。

 高価な植物油を一度で捨てずに何度か使用出来るのだから、飲食店の経費はかなり改善することだろう。

 酸化した油を使うのは良くないって?

 変な臭いや粘りがないうちは大丈夫!


 更に廃油を回収、再生させる専門業者を作るのも良い。

 濾過していない一番油は高級店で使用し、一度濾過した油は市民向けの店に卸すなど運用面はギルドに丸投げだ。

 油の使用回数や色などの状態を見て判断する人を置けば良いんだよ。

 フィルターの材料の殻を採取するのは子供でも良いことなど、養殖したドジョウ、エビ、カニの唐揚げをサティアさんにお腹いっぱい食べさせ、接待しながら口説き倒した。


「魚の唐揚げもだけど、このお茶もまろやかで美味しいわ。飲んだことのない味だけど、何のお茶?」

「琵琶の葉っぱを乾燥させて粉にしたものだよ」

「ビワの葉ね……健康に問題がないと確認出来たら販売してみるわ。後でレシピ教えてね」


 おっ、無理して接待した甲斐がある。彼女を我が村に招いたのは他の商品を売り込むついでもあったからだ。


 親の居ない子供達が独自に枇杷の葉茶の製造まで手掛けているなど、誰も思い付きもしないだろう。

 ついでに養殖場にも案内し、ドジョウ、ドンコ、フナ、サワガニ、川エビが手に入ることを紹介する。


 どうせなら単価の高いであろう異世界鰻の養殖にもチャレンジしたいのだが、今のところは餌の確保や共食い防止が難しくて断念したよ。排水路で捕獲したドジョウなどは野菜屑でも何でも食べるみたいでラクなんだけど。  

 シラス鰻はどうしたって?

 ここの異世界鰻は良い感じにその辺で卵を産んでくれるから、幾らでも採れるんだ。 

 

「最近路上生活している子供達が減ってきてたのは、ここで暮らしてるからね。

 畑もあるし、魚も育ててる。家も思ったよりしっかりしているし、何より清潔だわ。これが一番びっくりしたわ」


 サティアさんがここに来ることを躊躇っていたのは、汚い場所を想像していたからか。

 子供とは言えお客様相手の商売しているのだから、清潔にしておくのは当たり前だよ。それに病気の予防のこともあるし。


「でもね、最近は悪い大人がここを狙っているって噂があって。とても不安なんです」

「お姉さんに任せなさい! この村は商業ギルドが守るよう提案してきますから!」


 この特許担当のお姉様には金のなる木だと思わせることに成功したな。

 後はいつその悪い人が襲ってくるかだよ。

 来て欲しい訳じゃないけど、ダメな大人ってほんとタチが悪いからなぁ……。


 それからはサティアさんからの連絡をボーと待つわけではなく、積極的に商品の増産に取り組んでいった。


 元々この辺りはスラムと呼ばれた一帯だが、強制退去で住人は散り散りとなり、それでも残る者を追い出すために一度は焼け野原となった過去があるらしい。

 城壁に囲まれた一角にそのような地域があると言うのも驚きだが、その城壁は当時の領主の見栄でとんでもなく不必要な程に広範囲を囲んだのだ。

 俺からすればナイス領主様である。

 鉄鉱石の産出が莫大な富をもたらしていたので出来た壮大な無駄遣いなのであろうが、でっかいことは良いことだ。

 警備に余分な費用が掛かるとか、移動に時間が掛かるとか、広いが故の問題を幾つも抱えているのだろうけど、余っている土地を畑にすれば籠城だって年単位で出来そうだ。

 別に戦争が起きて欲しい訳ではないけど、きっとそこまで考えてこの城壁を作ったのだと思うことにする。


 何たって土地余りのお陰で、俺がこんな好き勝手出来ているんだから……いや、ちょいと待てよ。

 そう言えば、住民税とか固定資産税とか払っていないが、この掘っ建て小屋村が商業ギルドの保護下に入るとそう言う税金が発生するようになるか も。

 その前に領主に無断で住居を建てているわけで。

 多分だが、その日暮らしの子供だからと今まではお目こぼしされていたのだろうが、収入が確約されてくると話しは変わってくるだろう。

 これは調子に乗ってやりすぎたかな?

 もし税金を払え!なんて言われるようになったら、サティアお姉様を上手くたらしこんで俺達が有利になるように話を持っていってもらえるようお願いしよう。



「ふっ」

「あ、次長がにやけてます……へぇ、ついに村認定されたんですね。

 え? でも、そこって城壁内なのに、なんで村扱いになるんです?」

「そんなの俺が知るか。運営に聞け」

「分かりました、ペディってみます……フムフムフム、ムフフ、あぁ、成る程そう言うことですか。じゃあ、私は帰りますね」


 ディスプレイを閉じて空間から立ち去ろうとしたケント神だが、ガタンと音を立てて何かにぶつかったようだ。


「痛いじゃないですか! 結界張るなんて卑怯です!」

「ここは秘境だ、結界があってもおかしくない」

「……自虐ネタ乙です」

「そもそもここに飛ばされたのはお前のせいだっ!


 ケント神を指差すジロー神の表情は真剣である。

 白い空間に場所や距離の概念があるのか甚だ不明であるが。


「それより一人で納得せずに村のことを教えろってんだ!」

「あ、はいはい、分かりましたよ。あんまり怒ってると眉間にシワが出来ますよ。

 で、なんで村認定されたかと言うと、お好み村とか屋台村と同じ扱いなんですよ」

「なんだ、それは?」

「お好み焼きと言う人間の世界にある食べ物があって、お好み焼きを売る屋台が何軒か集まった場所がお好み村で、屋台村は食べ物を売る屋台が集まった場所です。

 市町村レベルじゃないただの集まりでも、マジチュアでは村認定されるんですね。単なるバグみたいですけど。

 それに認定される前から勝手に掘っ立て小屋村って自称してましたもんね」


 それを聞いて、いつかお好み村に出張しようと計画を立てるジロー神。果たして彼の計画は……どうでも良いか!

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