ゾゾネットとの戦い
「黙っていないだと。笑わせるな。お前たちが千人かかってこようがな、何の問題もない。それより、お前奇妙な技を使うな、どういうことなのだ」
「それこそ、何の問題もねぇ。オレたちはこういう超能力の持ち主たちだからな。いずれ、お前もオレのジッパーで、バラバラにして豚小屋にばらまいてやる」
「ふふふ、粋がっていると首の骨をへし折るぞ」
「ぶんのめされた割には威勢がいいわね。ちょっと手加減しすぎたかしら。あたいはね、こういう弱いくせにいきっている奴が大嫌いなのさ」
「しかしだ、殺す前に訊いておきたいことがある。その質問に答えないなら、すぐに始末する。なんたって、オレは気が短いからな。すぐにはらわたをえぐりだしてやる」
シンが続ける「じゃ、質問だ。明確に答えないとすぐに殺すぞ。ま、答えなど得られなくても、何の問題もないがな。とりあえず、訊いてやるぜ。お前のボスのディアボロってどんなやつだ」
このセリフは志熊に通訳してもらった。
ブララティは言った。
「いい質問だ。だが、オレが答えると思うか?」
「別に答えなくてもいいさ。いずれ見つける」
そういうと、シンはいきなりブララティの首をへし折った。
(あっ)志熊もアルバーノも唖然としていた。
(なんと気の短い男だ。本部で銃を乱射しただけある。こいつらは狂人か)
さて、と思っているとホテルの従業員が血相を変えてやってきた。
「ホテルの前に銃を構えた奴らが三十人ほど集まっています」
「あ? たかが三十人? で、バズーカ砲は持っているか」
「いえ、そのような武器は見ていません」
「じゃ、何の問題もない」と言って、行くぞとマユに声をかけた。
多少の弾丸を受けても、すぐに再生することは経験済みだ。
多少、弾丸を取り出すときにチクリと痛みを感じるだけの話だ。
二人は志熊にもう一丁ずつベレッタを持ってくるように命じ、両手にベレッタを持って、ゴロツキたちの前に出るや否や、何もいわずにベレッタを連射した。
相手もマシンガンをぶっ放してきたが知ったこっちゃない。
たちまち、ホテルの前は死体の山になったが、どうでもいい話だ。
そして、志熊に車を出させて逃走した。
志熊は「手っ取り早いですね」と呆れた声を出していたが、それも知ったこっちゃない。
「もう一度、あの地区に戻るぞ。あそこには、まだディアボロの幹部がいるかもしれないからな。いなけりゃ、皆殺しだ」
(ひぇぇぇ。こいつらに付き合っていると命がいくつあっても足りないぜ)と志熊は震えていた。
シンはマユに言った。
「見てみろ、傷が盛り上がって自然とマシンガンの弾丸がこぼれ落ちて行く。マシンガンも通用しない体になっちまったようだぜ」
「あたいはね、あのジッパー野郎の次にどんなのが出てくるのか楽しみなのさ」
ゴロツキたちが棲む団地にくると、もう情報が出回っているのか、誰もでてこない。
「なんだなんだ」と思っていると、一人の男がおずおずとやってきて、「ブララティと同等の幹部があっちの山の方で待ってる」と言った。
志熊に「何を言っているのだ」と訊くと、「もう一人の幹部が待っていると言ってます」と答えた。
「ふん、お前がいないと何を言っているのかわからないから、お前は最後まで付き合え」
(ひぇぇぇ。やはり命がいくつあっても足りない展開になってしまった。本部もえらい仕事を任せてくれたものだ)
三人が山に向かうと誰かがいる。
誰かがいるのは気配で分かる。
だが、何処にいるのかが分からない。
マユは、「ちょっと見てくるわ」というと樹木を駆けあがっていった。
(むほ、樹木を駆けるように昇ってゆくだと! 引力はどこへ行った? やはり、こいつらはバケモノだ)
志熊は二人の異様な能力にたまげていた。
マユはあっというまに樹上に到達すると、そこに立って周辺を観察していた。
(とんでもない平衡感覚だ)
ここまでくると志熊は驚くことを諦めた。
(もう何でもいいや)
マユが言った。
「何も見えないけれど、誰かが潜んでいるのは確かよ」
「ふうむ、プレデターのように樹木と同化しているのか」
「プレデターって何よ」
「ホントに、おめぇは何も知らねーな。どれ、オレも樹上に昇ってみるか」
シンも樹木を駆けあがり、二人で周囲を見渡していた。
そのとき、シンはゲボッと叫んだ。
みると、喉からカミソリの刃が一枚出てきた。
(カミソリだと。なぜ、オレの喉からカミソリがでてくるんだ。むぉぉぉぉ、何であれ、オレを傷つける奴は許さねぇ。両手足をひっこぬいて、頭から地べたに突き刺してやる)
しかし、二人の動体視力は桁が違っていた。
二人は、樹木に溶け込むように隠れているもののかすかな、超かすかな動きを見逃さなかった。
マユがシンに言った。
「いたわよ。ようやく隠れん坊小僧を見つけた」
「ああ、オレもだぜ。鬱陶しい真似をしやがって。オレはそのような卑怯なことをする奴には容赦しねぇぜ」
二人は左右から標的に向かって飛んだ。
「おい!」
ゾゾネットは、日本語は分からないが、怒っていることだけは分かる。
それにしてもとゾゾネットは考えていた。
(どうしてカミソリの刃が一枚だけなんだ。普通は百枚ぐらい飛び出てくるはずだ。こいつの血の中の鉄分はどうなっているのだ)