シンとマユとブララティの戦い
二人はディアボロの拠点があると考えられているイタリアはミラノに飛んだ。
ミラノではハザード社が運営するホテルグランパラッツォがあてがわれた。
支配人はアルバーノという男だった。
本部から志熊という男が通訳兼世話係として同伴していた。
シンが志熊に訊いた。
「どこに行ったらディアボロという奴に会えるんだ」
「まぁ、そう焦らずにゆっくりすればいい」
「チッ」シンは舌打ちした。
「ここに居ても退屈だ。腕がなまる。とりあえず、それらしき臭いのするところに案内しろ。それからな、武器は用意してるんだろうな」
「今回は45口径ではなく22口径のベレッタを用意している」
「ベレッタか。ここは都会だからな、小さくて目立たない、命中率が高く、しかも銃声が小さい拳銃がいい。しかし、それだけでは不足だ。刀の代わりになるナイフを送れと言ってくれ」
二人はホテルでくつろいでいても仕方がないとギャングがたむろするような場所を訪れてみた。
それは、全住民が、犯罪的な組織のシステムによって監視されている団地がある一角だった。
ヘロイン中毒者の注射器が、水たまりに浮いている。
地下の駐車場には、銃弾でぼろぼろになった男の死体が転がっているという話も聞く。
「気に入ったぜ」とシンは言った。
「どれ、あいさつ代わりに手当たり次第にぶっとばしてみるか」
それを聞いた志熊は(噂通りにヤベェ奴だ)と呟いて、そそくさと姿を消した。
ここではバイクに乗る時もヘルメットは禁止だ。
ヘルメットで顔を隠している奴はヒットマンと認識される。
「面白いところね。日本ではおめにかかれないブラックな雰囲気がワクワクさせてくれるわ」とマユが言った。
「そうだな」シンは薬の売人に接近して「ディアボロとかいう奴を知っているか」と訊いたが、あたりまえのことだが日本語が通じない。
だが、ディアボロという名を聞いて売人は青ざめていた。
(ここでディアボロの名前を口にするとは、こいつ正気か)というような顔をしていた。
シンは日本語で「おい、なんとか言え、ディアボロだ、ディアボロ!」と叫んでいた。
売人は(こいつは頭がおかしいのか)とドン引きしていたが、予想通り、ディアボロという名を聞きつけて、いかつい男たちがやってきた。
(なんだっていい、ここで騒ぎを起こせばなにかが出てくるわ)とマヤは思っていた。
だから、ごろつきみたいな男、三人を一瞬で張り倒していた。
彼らは拳銃を撃つ間もなく、道端に転がっていた。
この光景をみていた十人ばかりの男たちが手にマシンガンを持ってかけつけてきた。
(ふふふ、やってきやがったな)
二人はすごいスピードで移動しながらベレッタをぶっぱなしていた。
あっという間にイタリア人たちはハチの巣になった。
それを偶然目にしたのがブララティだった。
シンとマユが建物の傍を通り過ぎようとしたとき、突然、壁が裂けてブララティの手がマユをつかんだ。
(は? なんだこいつは、壁をジッパーみたいに開いて手を伸ばしてきやがる。これが噂に聞く超能力というやつか。ふざけんじゃねー)
マユはジッパーに足をかけてジッパーが閉じるのを防ぎ、両手で強引にジッパーを引き裂いていた。
(なんだこいつ)とブララティは驚いた。
マユはブララティをつかみ、壁の中から引きずり出したが、同時につかんでいる右腕がジッパーによって切り離されていた。
(なんという能力を使う奴だ。おもしれぇ~。エイリアンよりおもしれぇ~。こんなへんてこな奴と戦えるなんて)と思っていると、シンが壁の中に入り込んでブララティを殴り倒していた。
すると、マユの切り離された腕が元に戻っていた。
シンがブララティの襟首をつかんで引きずり出したが、シンの右腕も切り離されていた。
(全然、痛くねぇぞ、これはイリュージョンか?)
そう思う間もなく、マユがブララティをぶん殴って気絶させたので、シンの右腕も元に戻った。
シンはブララティをかつぎあげて、スマホで志熊を呼び出していた。
「おい、どこに隠れてやがる。早く出てきて車かバイクを用意しろ!」
団地からマシンガンや拳銃を携えた仲間が7、8人でてきたが、ブララティがかつがれているので手を出せない。
その群れにマユが飛び込んで行った。
マユはマシンガンを奪うとそれを振り回して、全員を叩きのめしていた。
こんな芸当は朝飯前だ。
三人は車にブララティを積んで、ホテルグランパラッツォに戻った。
もちろん、後はつけられているがどうでもいい話だ。
支配人のアルバーノはブララティを見て驚いていた。
「あの地区に乗り込んで、ディアボロの幹部を捕えてきたのですか? さすがに本部が選んだ人たちですね」
志熊が言った。
「ああ、この人たちはエイリアンを倒したのち、出迎えた本部の要人たちを皆殺しにしているのでね、常識外の人たちですよ」
ブララティは、後ろ手に縛られて身動きできない状態だったが、さすが幹部だけあって、しかも、シンとマユの真の凶暴さを知らない状態だったので、「オレをさらうとはいい度胸だな。仲間が黙っていやしないぞ」と強気なセリフを口にしていた。