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エイリアンの次の標的はディアボロだ!

マユが尻尾を追って跳躍していた。

そして、尻尾をズダズダに斬り刻んでいた。


シンも負けずに尻尾に襲いかかった。


エイリアンの尻尾は見るも無残に斬り飛ばされており、コーギー・ペンブロークのような、ほとんど尻尾の形跡すらない生き物になっていた。


二人は同時にエイリアンの口を襲っていた。

尻尾を破壊すれば、残る凶器は口だけになる。


二人は、夢中になってエイリアンの口を切り刻み、突き刺していた。

さらに目も襲っていた。


凄まじい跳躍力とスピードでエイリアンの目を突き刺していた。


エイリアンは「うぉぉぉぉぉ」と叫んだつもりだったが、口が切り刻まれていたために、「ふぁぁぁぁぁ」という空気が抜けたような音しか出せていない。


二人は阿吽(あうん)の呼吸でエイリアンの裂けた口めがけて、手りゅう弾を投げ込んだ。


ドゴーン、ドゴーンと凄まじい爆発音が二発鳴り響いて、エイリアンは崩れ落ちた。


残るはシンの体内に埋め込まれた卵の除去だ。

もちろん、ハザード社などに除去の依頼はしない。


あいつらは信用できないからな。


そこで、マユが手の感触で卵の位置を探り出し、刀の切っ先をその箇所である胸に突き当てた。


麻酔なしの応急手術だが、何のこの程度。

麻酔なしが怖くて無期懲役が務まるか。


しかし、刃の切れ味が鋭すぎるのか、それとも薬によって肉体が変化したのか、ほとんど痛みは感じなかった。


マユが傷口に指をつっこんで卵を取り出した。

長楕円形の昆虫の卵のような形状をしていた。


マユは乳白色の卵を不思議そうに見ていたが、すぐに地べたになげつけて足で踏みつぶしていた。


驚くべきことはシンの回復力だった。

見る見るうちに傷口が塞がれてゆく。


(おお、なんだこれは、まるで漫画のような再生力だ。不死身の人間になったような気分だぜ)


「すごいね」とマユも目を見開いていた。

「あたいにもこのような再生力が与えられているの?」


「多分な。その代わり、この作用のためには莫大なエネルギーが使われているはずだから、寿命は縮むかもな」


「ふん、寿命なんざ、かんけーねぇよ。よぼよぼになるまで長生きしたいなんざ、これっぽちも思わないさ」


任務を遂行して帰還した二人をハザード社の役員たちが総出で出迎えていた。

その人たちをめがけてシンとマユが拳銃を連射した。


役員たちがバッタバッタと倒れて行く。

逃げ惑う人々、泣き叫ぶ人々、まさに修羅場だ。


武装した警備員たちが駆けつけるが、モンスターの肉体に変身したシンとマユは警備員たちを撃ち殺し、その武器を奪って殺戮の限りを尽くしていた。


マユが訊いた。

「こんなことをやらかして、後はどうするのさ」


「知ったこっちゃねぇ。この会社の関係者は皆殺しだ。今、考えられるのはそれだけだ」


ハザード社の周囲を大量の武装警官たちが取り巻くのに、さほどの時間はかからなかった。


窓から外を覗くと50台ほどの警察車両が見える。

「あたいたち、もう終わりね。すぐに逮捕されるわ」


「だから、どうしたってんだ。この国には死刑制度がないから、逮捕されても逮捕前と一ミリも変わらねぇ」


「そう言われればそうよね。ま、どうでもいいか。何しょうぞ、くすんで一期(いちご)は夢よただ狂へさ」


「ほぉ、面白い歌のようだな。どういう意味だ」


「これはね、室町時代の歌で、あたいのお気に入りなのさ。『何をしようというのだ、そんなに真面目くさって。そんなに真面目に考えないで、どうせ人生なんて夢のようにはかないもの、ただただ我を忘れて面白おかしく遊び暮らした方がよい』という意味なのさ」


「そりゃそうだ。憂き世は水の泡のごとしとは昔から言われていることだ」


やがて武装警官たちが突入してきて、二人は元の監獄に逆戻りさせられた。


しかし、このままではおさまらない。

なにしろ、高額な薬の人体実験の被験者なのだ。


ハザード社がこのまま捨て置くわけがない。


案の定、翌日、ハザード社の新たな役員三名がシンとマユの牢獄を訪れ、二人は質素だけど飲食設備が整えられた一室に連れて行かれた。


役員の一人が言った。


「いやいやいや、早々にエイリアンを倒してくるとは、たいしたものだ。で、次の標的はディアボロというイタリアギャングのボスだ。1965年生まれの35歳。時間を飛ばすという奇妙な能力を持っている」


「宇宙生物の次は超能力者かい」


「そうだ、成功すれば前回と同様、10万ドルの報酬を出す」


「10万ドル? 大金だな。前回と同様たって、前回は何も聞いてないぜ」

「本当か、それは悪かったな」


「いや、どうせ大金を貰ってもここでは使い道がないから、どうでもいいことだ」


「ディアボロって奴は強いのかえ」とマユが訊いた。


「ああ、冷酷無情の殺人鬼だ。人一倍用心深くて、そのうえ、時間を自在に動かせるので、誰も彼を逮捕できるどころかその正体さえ知らない」


「正体不明の奴を倒せと」


「そういうことになる。しかも、こいつの部下にはブララティとかゾゾネットとか、意味不明の超能力を持つものたちがいる。わたしたちの組織でさえ、このただのギャング組織の全貌をつかめていないのだ。だから、君たちの捜索も長期戦になる可能性が高い」


「ということは、かなり長い間、シャバに居られるということだな」

「そういうことになるな」


「超ラッキーじゃん、お金使い放題じゃん。パラダイスカムカムじゃないの」とマユは大喜びしていた。


これで、久しぶりに暖かい布団で寝られる。

ウオシュレットも使えるじゃん。

スマホも特性の奴を貰えたし。


(でも、ここで生に未練がでるとヤバいかも)そういう懸念もあるけど、知ったこっちゃない。


そもそも、未来のことなど一度も考えたことないし。今が良ければすべて良しなのよ。


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