シン、黒人ギャング団とメキシコギャング団の抗争に首を突っ込む
シン、マユ、曼殊沙華、志熊の四人が街をうろついていると、三人の男たちが近づいてきた。
「ん? おめぇたちは何だ」
「わたしたちはメキシコ人グループのギャング団です」
「は? ギャング如きがオレたちに何の用だ」
「お願いがあるのです。わたしたちは、今、ブルックリンの黒人ギャング団との抗争に巻き込まれています」
「んで?」
「わたしたちは総勢50人の弱小グループです。対抗している相手は、その十倍の人数を擁しています」
「んで? 何が言いたいのだ。てめぇ、手短に簡略に、さっさと言わねぇとぶっ殺すぞ!」
「す、すみません。実は、加勢をお願いしたいのです。あなたたちがデッドプールをぶっ飛ばしているのを、ブルックリンの団地で見た仲間がいるのです。そいつは、無敵の人たちと表現していました」
「オレたちに黒人ギャング団をぶっ壊して欲しいと?」
「そうです」
「なるほど、で、その見返りに何をしてくれるのだ」
「何をすればいいでしょうか」
「そうだな、では、ファンブル―社の幹部を三人ほど誘拐してもらおうか」
「ファンブル―社?」
メキシカン三人は思わず顔を見合わせていた。
「ファンブル―社って、NSA、国防省の情報機関の下部組織ですよ。CIAやFBIよりヤバイ奴らですよ」
「だからどうしたんだ。別にNSAに乗り込んでこいと言っているわけじゃねーだろう」
「そ、それはそうですが……」
「ふん、煮え切らねぇ奴らだな。それができないっていうのなら、この話は終わりだ」
「わ、わかりました。なんとかやってみます」
「そうか、リーダーはお前か?」
「へ、へいルイスと言います。両隣の奴はホセとペドロです」
「三人とも銃はきっちりと使えるんだろうな」
「へ、へい。マシンガンも使えます」
「マシンガンは要らねぇ。拳銃だけで充分だ。マシンガンを持って行くと目立つからな。マシンガンなんぞは、敵が持っているものを奪えばいいだけだ」
マユが言った。
「敵のアジトはどこだい?」
「ブルックリンのパラダイス・フラミンゴというナイトクラブです」
「よし、では、明日の20時にそこに乗り込もう。オレたち三人は黒い衣装に黒い手袋、黒人のマスクを着けてゆく。お前たちも監視カメラに捕らえられてもいいように、黒人のマスクを着けて変装しろ。そして、防弾チョッキを忘れるな」
曼殊沙華が言った。
「そこの幹部たちがたむろしているところは分かっているのよね」
「二階の奥まったロビーにいつもおります」
一階のフロアでは騒がしい音楽が鳴り響き、多くの人たちが踊っていた。
ざっと見渡したところ、8割が黒人だった。
シンが言った。
「オレたち三人の後ろにへばりついて来い。銃を持っている奴らは皆殺しにする。分かったな!」
シンとマユと曼殊沙華は拳銃を乱射した。
銃声が鳴り響き、踊っていた人たちは上を下への大騒ぎとなり、多くの人たちが我先に脱出した。
その間に、六人は拳銃をぶっ放し、黒人のガードマンたちが持っていたマシンガンを携えて、二階にあがり、幹部たちがいるロビーに乱入してマシンガンを乱射した。
敵も応戦したが、なにしろ、マシンガン如きではシンとマユに通用するわけもない。
曼殊沙華も磁力線と電磁波を使いこなせる超能力者なので、弾丸はすべて弾き飛ばせる。
ロビーは、瞬く間に血の海と化した。
シンはルイスに「約束は果たしたぜ」と言った後、一枚の紙を渡した。
「ここに、ファンブル―社の幹部三名の氏名と住所を記している。三人の中の誰でもいい、一人を拉致して監禁しろ。変装を忘れるな。バレれば、相手はNSAだ。絶対に逃げきれねぇぜ。それから、捕まった時はハザード社に頼まれたと言え。間違っても、オレたちのことはしゃべるな。しゃべると一族すべてを殺す。分かったな」
しかし、一週間経ってもルイスは現れなかった。
マユは「あの野郎、ぶっ殺してやる」と息巻いていたが、曼殊沙華は「失敗したようね」と呟いていた。
ところが、ルイスが突然、姿をみせた。
街を歩いていたシンとマユと曼殊沙華の前に現れたのだ。
依然と違うのは、ホセとペドロがいないことだ。
曼殊沙華が言った。
「二人の子分も捕まったようね」
「ルイスは「遅くなって申し訳ない」と謝罪したが、何か、違和感を覚える。
「以前のルイスではないわ」と曼殊沙華がシンにささやいた。
「やはり、別人か」と言ったシンに対して、曼殊沙華が言った。
「改造されているわ」
「改造?」
「ファンブル―社によって、怪物に変えられているわ。盗聴器もGPSも埋め込まれているわ。でも、ハザード社のように爆発物は仕掛けられてはいないわ。とりあえず、盗聴器とGPSは壊しておくわ」
「なぜ、爆発物がセットされていないのだ」
「わたしの考えだけど、そうする必要のない粗悪品ということかもしれないし、爆発物の代わりにオキシトシンを注入されているかもしれないわ」
「オキシトシンって何だ」
「絆を強めるホルモンよ。つまり、この男はホルモンによって、ファンブル―社の犬にされている可能性が高いわ」
ルイスは不敵な笑みを浮かべていた。