第6話 田舎爺の献立、豆腐と鰹節で作った冷奴
ーふとしたときに和食が食べたくなりませんか? YES or No
ーYESを選択。冷奴の定食を所望します!!
ー....??
...何か高性能人工知能のメイドに料理作らせ、失敗したので、彼女と共にコンビニに向かうことにした...。
外は深夜の時刻で全体的に暗く、上にはうっすらとだが、街灯の電球がひび割れ、点かなくなっているものが多く存在する...。
..さて、ここで田舎にあるコンビニにまで行くのに苦労はないが、私の後ろに着いてきている彼女は大丈夫だろうか?、とふと思いながら、後ろをチラリと確認する...。
..あれっ?嘘..、ちょっと待って..、いないんやけどっっっ!??、そう思いながら私は後ろにいたはずの彼女を探し始めた...。
..深夜の林の中ということもあって、彼女の姿がこの街灯も少ない夜の暗闇に隠されることは仕方ないとして、そんな直ぐにいなくなるのはおかしくないか?、という疑問も頭の中で浮かんでいる状態だ...。
..いや、マジで何も見つからんぞ、これ...。..何で彼女がいないんだ?‼しかも、そんなに離れてないはずなのにいまだに見つからないし!!、と思いながら、焦りつつ彼女を探した...。
そんなとき...。
「..これは如何なるものでしょうか?博士殿...。」
「うわっ!!」
暗闇の森林から逸れた茂みの方から彼女の戸惑い、少し震えているような声が聞こえたっっっ!!?どこだっっ!?どこにいるっ...!!?
「...博士、ここです...、タ..、スケテッ...。」
...そう聞こえた先には...、
林のほうから普段は見ないであろう植物の蔦に手足を絡まらせている彼女の姿があった...。彼女の手の部分に絡まっている場所では、彼女自身の脇が見えるまでめくれており、足の部分が絡まっている場所にはメイド服のスカートがめくれて、見えてはいけないところも見えている...。(うん...。やっぱり白だよね!!)
しかし、なぜ、葛の蔦が彼女の手足に絡まっているのだ...?そう思いながらもマジマジと彼女を見つめていたのだが、当の本人は可愛い美人顔を赤面しながら、青い瞳をウルウルさせつつ、なおかつ猫耳をペタンッと伏せている...。
..うん...。老人になったのに、こんなところで"猫耳萌え"という概念を感じるとは...。
そう思いながらも私は彼女に再び視線を戻し、彼女の手足に絡みついた蔦を取りのぞこうとズボンのポケットにある最新式農具用ハサミを取り出した...。
-----20分後---------
..しばらくして、うちの猫耳メイドに絡まっていた蔓をハサミで断ち切るのに、20分もかかってしまった...。しかし、ここからコンビニまでは近く、なんなら目と鼻の先ほどにコンビニが見えている...。
..私たちは少し歩いていき、淡い白色に光る蛍光灯が見えるコンビニの自動ドア辺りまで行き、先ほどから蔦に絡まったためか、頬が少々ピンク色になっているペタンと猫耳も目も下向きに伏せているメイドと一言も話すことない気難しい状態で入っていった...。
..コンビニの店員の"ラッシャッセー"という気の抜けたような声がコンビニ内に響き、目の前には栄養ドリンクバーの棚が目に入り、さまざまな色の飲料がズラッと並んでいる...。
また、そこから進んで、後ろにあるコーナーにある飲料水やジュースがある棚があるが、そこでは新たな商品が目白押しで色々ズラッと並んでいる...。ここら辺で私はコーヒーを見ているのだが...。
「..博士...。この不気味な色の飲料は何でしょうか...?飲んで危険がないものですよね..?」
..そこには、おどおどした表情で未だに猫耳をペタンと伏せたメイドが聞き返してきた...。どうやら、まだ、さっきのことを引きづっているらしい...。
..いや、少し青い顔をしているから違うか、これ??
そう思い、チラリっ、と彼女が持っている栄養ドリンクらしきペットボトルを見てみると、そこには青紫色と時折見える波打つ緑色の線がその液体の不気味さと脅威を示すものことがうかがえる...。
..確かに、これは私自身ですら飲むことがはばかられる...。というより、この飲料用の棚自体が怪しい色とりどりのドリンクがズラッと並んでおり、ところどころの下にある飲料の名前欄に栄養ドリンクであろう意味が分からないような名前が記載されておる..。
...この多種多様な飲料が並んでいる棚から目を逸らし、彼女の方をもう一度、視線を戻す..。彼女はどうやら先ほど持っていた栄養ドリンクを棚に戻したらしく、彼女は他の棚にある商品に視線を向けて、その表情から察するに色とりどりな商品に一喜一憂しているようだ...。
しかし、私の目的はこのような時間も時間で早めに選ばねばいけないので、目的の棚に移動した...。
...あった..。私は目的の冷奴用の豆腐とレトルト食品をコンビニ用のかごに2、3個ほど入れていき、未だに死んだような魚の目であくびをしている店員がいるレジへと持っていく...。
その後、なんなく、レジでの会計を済ませた...。いや、最近のコンビニで働いている若い子は仕事が早いな...、と感慨深い感想を思いながら、店を出ていった...。
...しばらくして....。
「...さてと、久々に和食でも作るかの..。」
..コンビニからの帰宅後、料理の下準備を始めた...。ご飯は炊飯器で炊くものとして、先ほどコンビニで買った安物の袋に入った野菜と冷蔵庫にある野菜を組み合わせて、とあるものを作る...。
--------20分後-------
「...よし。出来たぞ..。」
..そう言った瞬間、椅子に行儀よく座っていた彼女の片方の猫耳がピクッと少々動きつつも、彼女は興味がないというようなツンとした態度をとり続けている...。はあ...、普通にカワ(・∀・)イイ!!
..そんなこんなで彼女の方を眺めていると、何見とんじゃ、といいたげな蔑んだような視線を向けられた...。..少し物悲しくなった...。やめろ...。そんな目で見るんじゃない、とこの理不尽に対する抗議の視線をアホな猫耳メイドに向けた...。
..あっ、プイッとそっぽをむかれた...。私の心中で苦痛という名の悲しみと憤りが襲ってくるが、そんな思考を無視し、私は2人分の今日の夜食を盆にのせて運んだ...。
「..へえ...。一般的なザ・和食というメニューね...。」
「..まあ、今日のメニューは冷奴と味噌汁、玄米入り白ご飯だ..。」
..今回の食事は、お椀の中に一杯半盛られたホカホカの湯気が立ち上った白米と青色と白色の縞模様が入った小皿に盛り付けられた光源に白く淡い色で照らされた豆腐が目を引き、その上では青緑色に照らされた小口切りされた青ネギとが散らばり、赤茶色の鰹節が室内の空気に当てられ、泳いでるような動きを見せる...。
また、その冷奴の隣には、木でできたお椀の中に入っている作ったばかりの味噌汁だ...。中には4個人参、薄く切った玉ねぎ、8等分に切ったトマトが2切れくらいその水面から顔を湯気を立ち上りながら、のぞかせている...。
「..ふむ。いい出来だな...。」
私は自身で作った和食という名の作品を見ながら、少し微笑みながら言った...。
「自分でそんなこと言うんですね...。」
彼女が私にまるで"コイツまじかよ"、という驚きと呆れたような視線をジト目で向ける...。
そんな彼女に私はすぐにその表情をひっこめるや否や、不機嫌な発言をした彼女に少し厳格な声で言葉を言い放つ...。
「そりゃあ、私はこんな辺境のド田舎に住むような一人暮らしの老人だからの...。一人で暮らすことに置いて都市で暮らすよりも物資は少ないし、料理するスキルは必須じゃよ...。」
そう言いつつ、私は彼女と反対側にある椅子に座り、机に置いたお盆の上の一人分の食事を取って、私の場所に置いていき、お盆に置いてあった箸を一人分とり...。
「いただきます。」
食事を開始した...。また...。
「...いただきます。」
彼女のたどたどしく、緊張した声を聴きつつ、ホカホカの味噌汁に箸を伸ばした...。
「..ふむ。いい出来だ...。ジャガイモのほのかな甘みと人参の甘さが味噌の旨さで引き立っている...。」
..そして、今回の主役である冷奴に視線を向けて、空いた左手でお盆から持ってきた醤油差しから醤油を出していく...。
..ただでさえ、淡く明かりに照らされたネギと空気により穏やかに泳いでるような動きを持つ鰹節が醤油により、赤黒色に染まり、光沢を増した...。さらに鼻腔に醤油とネギ独特の香りが私の食欲を誘い、私は待ちきれず、箸でネギと鰹節を乗せた豆腐の一欠片をつかみ、自ら口へと運ぶ...。
「..うむ。この醤油の香りと味、ネギの香味と豆腐のまろやかな舌触りと味わい、実に良い...。」
途中、彼女に呆れられた視線を向けられながらも、私の箸の速度は上がっていく...。
そこから、私は次々とほかのおかずにも箸を伸ばし、深夜の穏やかな食事を一人と一体で楽しんだ...。
ちなみに、ふと、彼女の表情を見たが、少し目が大きくなったかのリアクションをとったものの、すぐさま戻り、黙々と食事をとっている...。
...うむ。まだまだだな...。そう思い、私はこの料理に視線を戻した...。
"人は心が愉快であれば終日歩んでいても嫌になることはないが、心の憂いがあればわずか一里でも嫌になる。人生も行路も同様で、人は常に明るく愉快な心ももって人生の行路を歩まねばならぬ。"
-----シェイクスピア--------