第4話 田舎爺の献立、粉砕野菜の味噌煮込み鍋
豊満な肉体に作ってしまった高性能型AIにおじいちゃんが色々な質問を投げる回です...。
..田舎者の爺として、彼女を起こしてしまったことは、自身の人生における反省点の一つだろう...。
しかし、その当の本人である彼女は全く現状に関して気にしてないようであった...。だが、しかし、彼女に関する過去はこちらは知らない...。
だがしかし、これ以上のことは聞かないで欲しいと言わんばかりの空気をあちらから出しているのを察した私は渋々と質問が出来ないでいた...。
小心者である私には何とも情けない理由である...。こんな歳をくったばっかな爺が考える中で思いついたことがだんまりで様子見なんて....。人生経験少なすぎるじゃろ...(涙声)。
そんなこんなで私は彼女と暮らしていくために当たり障りのない質問やどんなスキルがあるのかを聞いているところである...。
都会で暮らしていた爺なりの交渉術がここで活きてくるのが何とも言えぬわ..。しかしながら、彼女の情報としては元主人は私の研究分野が近いところにいた研究職の若者らしい...。
...ハアッ..、と私はため息をつく..。あの瞼に焼き付けたくもないのに焼き付いた忌まわしき思い出が蘇る...。"なぜだ?"という疑問が先に出る。
"なぜ、こんなにも人間の倫理の範疇を超えるような物事に巻き込まれ続けるのか...。"とこれまで人生に起きた常識の範疇を超えた出来事を思い返しながら、ぐるぐると思考を巡っても、何もいいアイデアが思いつかない...。
..よもや、老人になって対人においてのコミュニケーションを試されることになろうとは...。人付き合いが苦手な私にとっては何とも難しいことであるか...。いやしかし、ここは大人としても彼女よりも先に生まれた人間として、何とかしないと不味いのは分かる...。
..まあ、彼女は人間ではないのだが、しかしながら、彼女は高性能人工知能を兼ね備えたロボットであるため、人間が持つ3大欲求に類似した欲求と、こと細やかな感情や人間を遥かに超える知能を持っている。
この機能に関しては、人間の技術による進歩に驚きを隠せない...。しかしながら、私はこの流れについていけない部分が多く、何に対しても不安感がいなめなかった...。
..このまま、云々言いながら考えを巡っても答えは見つからないので、この考えを一旦は置いといて、ちょうど腹が空いていたので、料理を作ることにしよう...。...そうだ..!!
私はここで彼女についての情報を集めるべく、彼女に"ある学習機能"に頼るべく、すぐさま動いた..。
「..私に夕飯を作って欲しい、という命令ですか?」
「..その通りだ。私は君のことを良く知らない。だって、君は元主人との守秘義務があるから、と言って、色々な過去を話してくれないだろう?だから、君が持っている機能を見せてもらいたくてね..。君のもつ高い機能のうちの一つである経験を得た料理技能がどんなものか見てみたいがいいかね?」
...そんな世間話のように軽めにスキンシップを試みた結果..、彼女の目は少し大きく見開かれ、少し口角がへの字に下がった...。
...ヤベ..、これコミュニケーション失敗したかもしれない..。
私はそんなことを思いながら冷や汗を流して、彼女の反応を戦々恐々としながら待つことになった...。
そして、その不安はすぐさま現れた..。ふと、彼女の表情を見てみると、作ったはずの大きな目から涙のような液体が流れていた...。
"えっ.."、と呟く間もなく、彼女の大きな目から涙のような雫がボロボロと流れ落ちていく。
..いや、確かに高性能型AI作るのに、涙袋のような機器を取り付け、いざというときに人間のように振舞えることを想定して付けたはずのじゃが、なぜだ...?
そのように細かな懸念点に気づいたが、現状は考えていても不明点しかないので、彼女に何があったのかを聞いた..。
彼女の様子は彼女の喉から洩れる音声に鼻声のような雑音としゃっくりが混じったような音が漏れ、彼女の手が彼女自身の頬を触り、涙が流れたことが気付いたのか、彼女の大きな目から涙の流れ落ちる速さが早くなった...。
そして、彼女はその白い手を自身の目元に移動させ、泣くような仕草を行う...。
「..何で..、何で..、そんなことを聞くのですか...?」
彼女の頬に涙がつぎつぎと止まることなく流れ出し、彼女の鈴のような声にしゃっくりと鼻声による雑音が混じる...。
...正直、ここまで感情豊かに表情を変えて話す高性能型AIを見るのは初めてだが、その疑問が浮かぶ前に私は人間の倫理を持つ者として、彼女をなだめようと必死に言葉を浮かべるが、全然思いつかない...。
しかしながら、それでは彼女が泣き止もうにも泣き止むのに時間が必要なので、私はその空間から離れるように彼女が泣き止むまで近くに腰掛けていた椅子に座りながら待つことにした...。
しばらくして...。
「...情けないところをお見せしてしまい、申し訳ございません。」
「...いや、別にそこまで気にしてない...。それよりもすまないが、料理の話はそこまで嫌だったか...?」
私は、泣き止んだ彼女になんて声をかければいいか分からないので、しんみりした様子の彼女に遠慮がちに聞いた...。
「...安心してください。当機は料理機能が一般記憶能力チップを有しているので、一般的な民間のお味なら大丈夫です...。」
あと、嫌いじゃなくてむしろ得意な分野です..、と大きな胸を前に押し出し、揺らしながら、付け加えた...。
「...本当かっ!!」
私はいきおいで立ち上がり、彼女の手を思わず握り、大声で言ってしまった。彼女の手を握ってしまったことにすぐさま気づいた私は、手をパッと離し、"コホン"と咳払いしてから自身が座っていた椅子に腰かけた...。
「..いえ、大丈夫です。あなたは私のマスターですので、あなたの行動を全肯定します...。」
彼女は自身の胸に手をおいて、特徴的な猫耳を"ヘナッ"とさせながら、目を少し伏せて、私に告げた..。
...私は自身が作ってしまったので今更後悔しているが、彼女を少し豊満な肉体に作りすぎてしまったと思う..。
胸を手に置いた仕草やかがんだ女性らしい腰つきだけでも魅力的であるのに、彼女に着けた猫耳と尻尾がふにゃり、としているため、可愛い仕草も合わさり、若いころなら告白してたんじゃないか、と思えるような美女だ...。
「...?どうかしましたか..?」チラッ
..?マークを頭に浮かべ、頭を横に傾けながら、手を後ろに組んでそう彼女は言った..。
..脳内メモリにこの光景を保存したぜ..。
..次の献立は洋食か、中華か??