9.双子の女神
風が心地よい、緑の香りがする。
私は鳥になって高い空を飛んでいた。
どこまでも飛べそう。
高い木が見えてきて、根本に降り立った。
女の人が泣いている。
(ごめんなさい、あなた達をを残して眠らないといけない。私が戻るまで此処を守って。お願い。)
ラス様の声だ。誰に話しているの?
私だ。鳥になった私たちに話しかけている。
何でそんなに悲しそうなの?何があったの?
これたぶん、ラス様の過去だ。私の記憶…
私、前世は猫じゃなかったんだ。ライモンの近くにいた鳥だ。
(いつか、こちらの世界に入って来る人がいたならば、泉に案内しなさい。きっと私は目覚めるでしょう。それまで、…………。)
涙が頬を伝っている、私、泣いているかもと思って目が覚めた。知らない天井。どこだっけ?
知らない部屋のベットにいた。
傍らにはルキナとブルーノがいる。
「医者を呼んでくる!」
勢いよく飛び出したのはルキナだった。
「問題なさそうです。ゆっくりお休みください。」
医者を見送ったあと、ブルーノが謝ってきた。
「申し訳ありません。いきなり姿が見えなくなって、探すのに時間がかかって、貴方を失うかもしれないと…」
言葉が詰まって悲しそうだ。
「ライモン、レリーフを見たのは覚えているか?あのあと君は消えてしまったんだ。捜索したが精霊の庭では見つからず、大規模な捜索も手がかりもなくてね、心配してたんだ。」
「あの、私は何処に……」
「泉にいたんだよ。ルカが見つけてくれたんだ。」
ルキナが言う。
ルカは鏡の世界にいる子でしょ?
「ルカが掃除をしていたら、窓から何羽も白い小鳥が現れてルカから離れなかったらしい。不思議に思ってバルコニーに出ると、昼なのに大樹が見えんだって。鳥は泉の近くで沢山飛んでいたらしい。」
大樹は星とともに夜になってから現れる。
だから普段と違う大樹が現れたから、急いで鏡を見に行ったら、こっちは大変な騒ぎになっていた。
「ルカは石を持っていないため鏡を通れない。だから気がつくのが更に遅れたんだ。」
「先生を呼んでからは早かった。どうやって鏡に戻ったかは不明だが、泉にいるかもって探しに行ったんだ。俺も。」
鏡はピンクの石がないと通れないので、ルキナと共に部隊を連れて行ったらしい。
「俺も何回か入ったことがあるけど、夜の大樹が昼間に現れるなんて聞いたことがない。明らかな異常事態だったよ。」
「ライモンは大樹の泉にいました。鳥に囲まれて小さな子供の姿になって。」
子供の姿?また子供になったのね。手のひらを見つめたが小さい手だね。ほんとだ。小さくなってる。
「ライモンは球体の中にいて眠っていたんだ。先生が触ったら消えたんだけど、魔法の類ではなかった。古城では治療が難しいから、こっちの鏡がある俺の部屋に連れてきたってわけ。」
そっかルキナの部屋に…ルキナのベッドにいるの?ルキナって…
「あの、私も話すことがあるんです。」
ベッドから起き上がり、覚えていることを話した。
「私、やっぱりラスではないんです。すみません。私がラスと向かい合って話を聞いていました。たぶん前世は白い小さな鳥です。」
ブルーノはそんなことはないと言いだけだか、黙り込んだ。
「古城にもいたし、こっちにもいたはずです。ライモンの近くにも。だからきっと!私がライモンであると思い込んでしまったんです。」
また涙が出てきた。ルキアが優しく背中を擦ってくれた。
確かに小鳥は何羽もみた。というか城には大体いるでしょ、いっぱい。当然猫もいるし。間違えても不思議ではない。
暫く沈黙した。
ブルーノが話し出す。
「城の古文書によりますと女神は双子だったという説があります。精霊の庭のレリーフは左右にあったのを覚えていますか?私達が見たのは左側。
貴方は、ラス様の魂の片割れかもしれません。此方と鏡の世界を両方から支え合っていたんじゃないでしょうか。だから円が半分だった…
それに、軸がズレたのは、私が来てしまったからですし、ライモンは悪くないのですよ。」
ニッコリ笑ってるけど、内心難しい事ばかりだ。
女神は双子。双子?本当にそうなの?
私は…誰?
思い出したいのに、よくわからない。
涙が溢れて、何も見えなくなった。
夢を見たら何かわかるのかもしれない、そう想いながら、また眠りについた。
「目覚めてから色々あったので疲れているのでしょう、休ませてあげましょう。」
静かに扉がしめられたが、ルキアは自室なので、窓際に椅子をおいて静かに座った。




