6.小鳥と少女
「私はかつて、サディニーア王国という国の魔術師で当時は隣国と戦闘状態でした。前線の私達はかなりの痛手で追い込まれ、私自身、死を覚悟したんです。」
「城に逃げ込み、とある小さな部屋にたどり着いた。大きな鏡があり、ふと手をついたら鏡が光り輝いて…この古城にいました。
その日は今日のような夜で、森の中にとても大きな樹がみえました。」
300年ほど前。
(ここは、古の泉がある大樹なのか?あの泉があれば皆を助けることができる!行かなければ!)
たどりついた大樹の足元に泉があり、淡いグリーンに光る水があった。
泉から湧き出る水を持ち帰り、傷を癒やすことができました。
長い戦いは終わり、古城にやってきました。
人の気配はないですが朽ちているわけでもない。
泉も気になりますし、そのまま居着いちゃいました。
ある時、明るい世界を眺めていたら、小さな白い鳥が飛んできました。暫く共に過ごし、何回か夜が巡ってきたとき、不思議なことが起こったんです。
小鳥と一緒に泉にいったら、泉の中に少女が佇んで居たのです。左手に小鳥が止まると、光って少女の胸に吸い込まれるように消えてしまいました。
(あなたは、大樹の精霊?)
少女は答えなかった。無表情で見つめ返してきた。
(はじめまして、私はブルーノといいます。あなたの名前は?)
少女は何も答えない。
もしかして話せないとか?もしくは話したことすらないのかも?少女のようだが見た目とは違うのかも。などと考察したが、とりあえず泉の中で濡れているので、手を取って岸まで連れてきた。
少女は嫌がる素振りも見せずついてくる。
ブルーノは手をかざして魔力を高めると、足元に魔法陣が現れて、風とともに消えた。魔法をつかって城に移動した。
(呼ぶとき不便なので名前をつけてもよいでしょうか。
うーん、ラスにします。貴方の名前はラスですよ。)
見つめてくる蒼い瞳だけ輝いていた。
「ラスとの出会いはこんな感じでしょうか。
時間はかなりかかりましたが、表情がでてきたり、言葉を教えたり、意思疎通できるようになりまして、1年ほど経った時に、何故あの場所にいたのか話してくれました。」
「私、だれか来たから見に行った。外の世界知らなかったから知りたかった。
夜がきたから、 ブルーノを連れてきた。私も人になりたいと思ったら、あそこにいた。
言葉をもっと教えてほしい。」
ってね。
別れは突然やってきた。
図書室で歴史を学んでいたとき、
ラスがいきなり立ち上がり叫んだんです。
「やめて!来ないで!!」
何が起こったかわかりませんでしたが、いきなり辺りが暗くなり夜がきました。
ラスは体中が光ると、小鳥の姿になり窓から飛び立ってしまったんです。
私は光る小鳥を追いました。
ブルーノは森の中を走り、大樹まで走った。魔法で素早く動けるように保護魔法はかけたが、鳥には追いつけない。
大樹までたどり着いた時には、もうラスはかなり弱って泉でぐったりしていました。
「ラス!!何があったんですか?」
「空が割れそうになった……ヤツが入ってきそうだから止めたけど、力が小さくなって、なくなりそう。」
「ヤツって誰ですか!どうすれば、」
ブルーノの口に小さな手が伸びて言葉を塞いだ。
「聞いて。アレは私と対極のもの。世界の敵。ここで支えていたけど、ブルーノと会って楽しくて軸が少しずれちゃったみたい。ごめんなさい。」
「私、戻るから、もう会えない」
消えゆくラスを抱きしめながら、最後の言葉を必死に聞いた。
「必ず戻るから、待っててくれる?」
涙が溢れてラスが見えなくなりそうだ。必死に頷いた。笑顔のままラスは光となって消えてしまった。
ブルーノの手にはピンクに輝く石が握られていたが、ヒビが入り散り散りになってしまった。
手からこぼれ落ちた欠片が、浮び上がって、割れた空に散っていく。
ヒビから漏れ出ていた光さえ消えて、静寂な闇夜から、明るい森になっていた。
「最後に手に残ったものがこちらです。」
首からかけてたチェーンの先に、ピンクの細長く尖った石があった。




