2.ワタシの名前は
彼は涙を流しながら、ワタシを見ていた。
「長かった、ラス。やっと起きてくれたんだね。」
(ワタシを知ってる?いつの話?)
膜だと思っていたものは、柔らかいガラスみたいな材質で小さいプールみたいだった。
上から手が伸びて、脇を支えられるように立たされて、抱きかかえられた。
緑の液体から出されたら視界が開けて眩しい。かなり咳き込んで新鮮な空気を吸い込んだ。
水の中で苦しくなかったのも彼が作った、この液体に酸素がたくさん含まれていたらしい。
(あれ?なんだか体が小さいかも…ワタシ5才くらいになってる)
「あ、あっの、っ」うまく声がでない。
彼も濡れてしまったが、ワタシをフワフワなタオルでつつんでくれた。優しい笑顔でずっと抱きしめられている。
なぜか体の力が入らず立ち上がれない。
そのうちワタシの意識が遠のいていった。
目が覚めると知らない部屋のベッドに寝ていた。
彼はワタシの手を両手で包み込み、祈るようなかたちでベッドの脇に跪いている。
「おはようございます。ラス。気分はどうですか?大体の記憶処理は済んでいますが、自分が誰かどのくらい理解できていますか?」
ん?どーゆーこと?
何を言ってるんだ?と首を傾げた。
「はっ!まさか…でもそんな…ことは、でも…。」
暫く考え込んだあと、また優しい眼差しでワタシを見る。
「起きたばかりですみませんでした。ゆっくりお休みください。」
何が起きているか考えてみる。
(ワタシ、ラスって呼ばれた。彼はワタシをしっている。ワタシ確か前世は猫だったはず。その前は…)
しばらく考えてみたが彼はでてこない。
ふと窓の外が明るいのが気になって、ベットから降りようとしたら、自分の細い足が見えた。
(足がある!そうだ人になったんだった。立てるじゃない、すごい。)
そう思い立とうとしたら、うまく立てず転んでしまった。
派手な音をたててしまい、彼がドアを勢いよく開けて帰ってきた。
「どうしましたか?落ちてしまったんですか!」
駆け寄ってきた彼は、壊れ物を扱うように優しく抱き上げてくれた。
過保護じゃない?
「……」言葉が出なかった。
窓の方を指さしたら、そのまま窓の近くまで寄ってくれた。




