10.それぞれの想い
ルキナは椅子から彼女をみていた。
小さな少女になってしまったライモン。かなり幼く見えるのは不思議だ。
先日まで同じくらいの背格好で笑顔が可愛いい女の子だったのに。
ラス様が起きたと先生から聞いた時は驚いた。長年見守っていた話は聞いていたが、実際会うと実に可愛いい。
記憶も戻ってないし、カードの意味も分からず、本人かどうかもわからないが、だが星の夜に降ってきたのは間違いない。
先生とレリーフを見た時、ライモンは消えた。光りに包まれて忽然と。まずいと手を伸ばした先にライモンはいなかった。
俺は焦ったが、先生は尋常じゃないほど取り乱していた。やっとみつけて蘇ったラス様を2度も失った悲しみは辛い。先生の為にも必ず探し出せないと!
だけどどこを探してもいない。精霊の庭は広いが簡単に出入りできる場所じゃないし、途方に暮れていたら部下から伝言がきた。
自分の部屋の鏡から少年が何を言っているらしい。先生とすぐ戻って、すぐにルカをこちら側に引き寄せた。
ルカは、
「ブルーノ様!夜じゃないのに、城から見える場所に大樹が現れたんです。なにか変です、お戻りください!」
まさかと思いながら、先生は先に、俺は護衛を連れて鏡にはいった。
バルコニーがある部屋に鏡はあった。
先生はバルコニーの手すりを掴みながら外をみている。先生とルカの回りに鳥が沢山とまっているが、しばらく見ていたら飛び立っていった。
先には大樹。大樹の足元に鳥がたくさん飛んでいる。
先生は俺達に魔法をかけ、足元に魔法陣が現れてふわっと浮きあがった。気がつくと森の近くまで移動していた。また鳥が飛んでいる。見失わないよう、気をつけながらついて行く。
森が開けると泉があった。中心には球体があり、先生は泉に落ちないように水面を歩いて近づいた。球体に触れた途端、彼女が現れた。
先生が誰かとはなしている?ライモンを抱き寄せてはいるが、顔が上を向いている。
なにか話しているのか、ここからは聞こえない。しばらくして小さい体を抱きながら、先生は愛おしそうに髪を撫でながら戻ってきた。
「ラスの声が聞こえました。懐かしい声が。」
そのあと何も言わず古城へと戻った。
細長いテーブルをかこんで話し合った。
「先代の体が消滅したから代替わりした…という可能性があります。」
「しかし!彼女は間違いなく女神だ。先生の話だと星が降る夜に現れたって!」
「でもラスではない。正確には同じ魂の別人です。私が知っているラスではないということ。」
ブルーノは立ち上がり、窓までゆっくり歩いて外を眺めた。大樹はまだ近くにある。
振り返ると小さくなったライモンと目があった。
「泉でラスと話したんです。声が聞こえました。」
自分を呼ぶ声が聞こえた。
とても懐かしい優しい声だ。たどたどしい話し方、ラスだとすぐわかった。
「来てくれてありがと、ワタシ時間がない。」
「何故です?やっと見つけたと思っていたのに…」
「次はその子なの、ワタシじゃない。印を渡したから外の世界に連れてって、お願い。」
「ではこちらの世界はどうなるんです?こんなに綺麗なのになくなってしまうんじゃ…」
ふわっと透明なラスの輪郭がブルーノの前に現れた。手が伸びてきてブルーノの頬を撫でた。
触れた感覚はないが、ここにいる。
「いまはこのコがいるから大丈夫。誰も居なくなったら樹も枯れる。」
「なら、私が残ります!私がラスの代わりに!」
ラスの体が見えてきた。
たぶん最後の力のなのだろう。
「ここに残ると外の世界に行けないよ?」
「構いません!」
「ブルーノ。ありがとう。次の夜に泉に来て、ワタシ待ってるから。ここにいるから。」
そしてラスは消えていった。
「ラスが居なくなると大樹が枯れると言いました。つまり鏡の世界と現世界とのバランスが崩れてしまうと。」
「ではどうすれば!!」
「あちらに残ると申し出ました。私が鏡に入ります。今までもそうでしたし、なんら変わりはありません。ルカも一緒ですし。やるべきこともある。」
「あの、私は……」
「とりあえず夜がいつ来るかわからないので、それまではルキアと一緒にいてください。身体や記憶など変化があれば報告を。」
そういうと席を立ち扉から出ていってしまった。
「さて、どーするかな。とりあえず散歩する?」
難しい話をしていたから気を使わせたのかも、と思って庭を散歩することにした。
「なんかさ、どー呼べばいいのか、困るよな。ラスか、ライモンか、女神様か…」
暖かい季節になり花の香が風にのってる。髪を押さえながら、ゆっくり歩いた。気まずい、どーしよ。なんて言えばいいのか…
「好きに呼んでください。」
はぁとため息しかでてこない。情報量が多すぎてパンクしそうだ。ラスであり、小鳥であり、女神とか、しかも転生中で前世の記憶アリよ、記憶がゴチャゴチャでどの時代の記憶か分からない。
「花の名前とか?石の名前とか?」
ルキアは真剣に悩んでいる。
「もうなんでよくね?お嬢って感じで。」
護衛の方が困ってますよ。相槌を求められてもね…私は育ちの良いお嬢様は体験したことありませんが、なんでそうなった!
「ルキア王子、国王陛下がお呼びです。お嬢様もご一緒にとのこと。」
対応はやっ!もうお嬢様になってる。
「国王陛下に会うのって緊張する…」
「何いってんだ?さっきいたじゃん。」
どこに?ふと思う。
でもその前にすごい事に気がついた…
「え?ルキアって王子様なの?」
「言ってなかったか?俺はこの国の第三王子、継承権はないから今はお嬢の護衛隊長って感じかな。さっきテーブルに陛下と兄貴もいたし。」
ん?軽く言っているが、さらっと凄いワードがあったような…
え?お会いしていた?まさか!
「さぁ。行きますよ。お嬢様。」
満面の笑顔で、王子様スマイルは眩しいです!
小さくなった私に合わせて屈んでくれた。出された手を取り、ルキナと陛下に会いに行くことになった。




