待ちに待った卒業式~そうだテンプレで行こう
よろしくお願いします!
待ちに待った卒業式(卒業式!)←心の声
シュプレヒコールのように心も高鳴る。
さあ、言うのよ!
ああ、ちょっとドキドキするような楽しみでワクワクなような……
私はこの国に少ない侯爵家の息女。
自分で言うのも何だが、一応才色兼備というやつだ。
この(今まさに宣言をしようとしている)第二王子は私の婚約者。
残念王子というやつだと思う。
見た目はいいんだよね、見た目は。
顔が小さくて、長身で手足が長い。まつ毛長いし、鼻筋が通ってる。
残念なことに、頭が……。いわゆる鳥頭。
「ローレン・ジェフーサ!お前との婚約を破棄する!」
キターーーーーー!!!!!!
私は『待ってました』と言うのを顔に出さないように振舞う。
うーんと、テンプレ的に振舞えばいいのかな?
「私のどこに不備があったのでしょうか?」
「私はこのキャラ嬢と真実の愛に目覚めたのだ!貴様のその傲慢なところが気に入らないのだ。女性たるもの、このキャラのように嫋やかでなくてはな!」
現れた!さぁ語るんだ!‘真実の愛’を!
うーん、嫋やかというか……放漫で奔放で。まぁテンプレ通りなんだけど、いいのかな?その後の王家まで見るけど、没落していくのが予想できる。なにしろ王子ともども成績が悪いですからね。あ、第二王子でうちにムコ入りする予定だったのか。うちの没落が防げて何より。いい婿養子を探そう。
「レオン様ぁ。あんまり言うと不憫ですよぉ」
うん、不憫だよ。やめておこうよ。
そして、その娘を公の場に出すのは王家の恥だと私は思うのです。
「しかしなぁ……」
まだ言い足りないのか!!
「私は君の素晴らしさをこの魅力に欠けるローレンに伝えたいんだよ。わかってくれるか?」
「流石レオン様ですぅ」
……まだ茶番に付き合うのね。
あ、卒業式だけど途中で帰る人まで出てきてるよ。
一応王子が話してるんだけど、いいのかな?……きっと王子の頭だと出てった人がどこの誰かもわからないでしょう。というのが、全体の意見だ。
「このキャシーはな?」
お、ほぉ普段は仇名で呼び合う仲と言うわけですな。
「市井に通じていて話が面白い!」
そうでしょうよ。だって彼女はちょっと前まで平民で市井暮らしだったから。
「他には?」
私はついつい聞き出そうとしてしまった。
「彼女の魅力に気づいたのか?遅いぞ。もう手遅れだ。ハハハっ」
いや、言葉の綾というやつです……
「まさに女性的ではないか?ほら、体形など見れば明らか!」
あー、はいはい。私はストーンっとした体形ですよ。キャシーさんは出るとこ出てますからね。でも……、そういう外見の魅力って年齢と共に衰えたりするんだよね。大丈夫かな?
「女性的とは、体形だけですか?」
「否!手作りのお菓子も作ってくれた」
あー、そんなんでコロッといっちゃったんだ。高位の貴族の令嬢は厨房に入らないのが常。お菓子作りなんてする令嬢知らない。っていうか、お菓子で釣られたのか……。精神年齢いくつだろう?
「他には?」
「他?あー……」
言い淀む?
「レオン様ぁ」
「私とキャシー二人の秘密だ。私だけが知っていればいいだろう?」
はいそうですか。
えーっと私はさめざめと泣きぬれながら、この会場を後にするればいいのかしら?
「あぁ、ずっと幼少の頃より妃教育に勤しんでいたのに……」
これは本音。妃教育は面倒だった。なんでこのアホのために私が苦労して勉強をしなければならないのか?まぁそれも今日で終わりだ。
キャシーさんよ、今後妃教育頑張れ~!
基礎がない彼女が妃教育は教える方も大変だろうなぁ。
私は侯爵家でそれなりに勉強した後だったから、辛かったというか、面倒だった。
「あ、そうだ!」
思い出したんかい!
「ローレン!お前は、このキャシーの可憐さに嫉妬してキャシーの私物を壊したな?具体的には教科書を破ったり、キャシーの机に落書きをしたり……」
キャシーさんは涙ぐんでるし。……思い出し泣き?
「えーっと私はキャシーさんと今日初めてお会いしました。キャシーさんの事は全く知りません。彼女の事は全く」
「そんなはずはない。あふれんばかりのキャシーの魅力だ!必ず会っているはずだ!」
何だ?その根拠は?
「事実、キャシーが泣いているではないか?」
教科書が破れたと話している辺りからだけど?その前までは元気でしたよ?
「……えー、お二人が私の前に来たときはキャシーさんに特に変化はありませんでした。本当に私をおそれているのでしたら、私の前に来た時点で震えるなりしていると思います。ほら、レオン殿下のキャシーさんですもの」
「そうだな。‘私の’キャシーだったな」
どうしよう?チョロすぎる……。さめざめと退場するはずが、機会がない!
私に言い負かされてどうするのよー!!
「そこまでだな、レオン。完全にお前が悪い。と言うかなぁ……。ローレン嬢、こんな弟を侯爵家に婿入りさせようとしているのが恥ずかしい」
弟……?ということは、この国の王太子様ではありませんか?
テンプレではありえない展開になりました。私も大混乱です。
「初めまして、ローレン嬢。と言っても、王城内ですれ違ったりしているんだが?」
ふぇぇぇぇぇ――――!?!?!?
私だけが覚えていない!
マズくない?
王太子だし。
私は何で覚えてないの?私の馬鹿ばかバカ!!
「兄上!兄上も私のキャシー嬢を見て下さい!でも見惚れないでくださいよ?」
「何を言ってるんだ?私がそんな頭が軽そうな娘に見惚れるわけがなかろう?……おっと正直がすぎたな。あー…軽薄そうな?」
王太子……。
えーと、ディアス殿下だったなぁ。実に正直だと思う。
「ディアス様ぁ……。酷いですぅ」
「いや、悪いがどうも正直すぎるのがいけないな。レオンはキャシー嬢がいいのだからいいではないか?」
いやいや、キャシーさんの狙いは今ディアス殿下ですよ。
でもなぁ、殿下は正直だからなぁ……。
「ローレン嬢、今婚約者がいない状態なのだろう?ならば、私の婚約者になってはどうだ?」
うわー、なんてことでしょう。殿下はレオン様と違って知的で、先見の明もある。もちろん美形。貴族社会において王族からの申し出は断れないじゃないですかー!!
「恐れながら!ディアス様!」
本当に恐れ知らずだなぁ、キャシーさんは。
「彼女はついさっき婚約破棄をレオン様にされた言わば‘傷物’令嬢です。そんな彼女との婚約はどうかと思うのです」
いや、王太子を狙う市井で育ったキャシーさんの方がどうかと思うけどなぁ。
キャシーさんに‘傷物’とか言われるのはなんか腹が立つ。というか、なんかなぁ。
「ん?キャシー嬢には弟のレオンがいるではないか?私が誰と婚約しようとも関係はなかろう?」
もしも私がディアス様と結婚ということになれば、彼女とレオン様は義理の弟夫婦ということになるので全く関係がないとは言えないけど……。
「ローレン嬢はついこの間まで妃教育を受けていて、王宮の教師からの評判も良いし。私は聡い女性が好ましいと思う。この先、国というものを経営していくのだから、賢いことが王妃に求められる。加えてローレン嬢は家柄も申し分ない。さらに、友人関係も好ましい。私の片腕になる予定の者たちの婚約者とかが彼女を称える。『ローレン嬢は賢い。社交に長けている』とな」
はぁ、そこまで外堀を埋めているんですか……。
「ローレン嬢、それで返答は?」
えー、家とも話し合いたいんだけど?帰って話したところで「何でその場で返事をしなかったんだ!」とか言われそうだな。
「ディアス様は貴族社会におけるご自分の発言力をお分かりですよね?もちろん」
「もちろんのことだ。レオンの阿呆がローレン嬢を手放すのを待っていたぞ?」
はぁ、何を言っても無駄だなぁ。
「はい。末永くよろしくお願いします」
あーあ、また妃教育が待っているのか……。でもまぁこのディアス様のためなら頑張ろうって気にもなるなぁ。あ、キャシー嬢と一緒に妃教育やるのは嫌だ。
「そうだ、ローレン嬢。卒業おめでとう!」
そう言って、ディアス様はバラの花束を私に手渡してくれた。
正直嬉しいけど……。どこに持ってたんだろう?従者の人が持ってたのかな?
「ありがとうございます。殿下、指先に切り傷が!!」
「あ、バレたか。その花は私が王宮の庭で切った物だ」
殿下自ら……。有難いけど……似合わない光景だなぁ。笑っちゃうけど笑っちゃいけない!
「有難いです」
あー、心から言ってるんだけど笑い堪えてるんだよなぁ。
「兄上!ローレン嬢なんかでいいのですか?」
「失礼なことをいうね、お前は。私はローレン嬢がいいのだよ。お前はキャシー嬢と共にいればいい」
「……それはそうなのですが……」
そうだそうだ!レオン様はキャシーさんがいればいいだろう?さんざん私の事を詰ったじゃん!
「お前の事は国王にも報告をしているよ。ローレン嬢という婚約者がいながら、キャシー嬢と不貞を働いていると。父王はお怒りだ。何しろ父上はローレン嬢を気に入っているからね」
いつの間にか国王陛下のお耳にまでレオン様の動向が伝わっているのか……。王家恐るべし。
「このままだとレオン、お前は王族から除名処分で市井暮らしだろう。でも、お前にはキャシー嬢がいるから平気だろ?」
「あぁ、私にはキャシーが残されている。ああキャシーがいてくれてよかった。キャシーこそ私の安らぎ、癒しだ」
「え?レオン様。王子じゃなくなるの?王子じゃないレオン様……」
あーあ、キャシーさんは‘王子’っていうブランドが好きだったのか。まあ、レオン様の魅力って言えば見た目と王子という肩書くらいだから。
レオン様の市井暮らしかぁ、頭悪いなぁ。パッと頭に浮かんだレオン様の市井で出来る仕事と言えば、男娼?……いやいや、元王族が男娼はないよなぁ。
「レオンのことはキャシー嬢が導いてくれるだろう。期待しているぞ。そのことについては。二人の生活については王家の影がきっちり見守っているからな。報告を楽しみにしているぞ」
やっぱりレオン様とキャシー嬢は市井で結婚するのか……。王命だし?
「私はただ一人の王子として、ローレン嬢とともにある。国王陛下もこのことには喜んでいるし、母上も喜んでいる。ただ、レオンの育児は失敗してしまった。と言っていたけど」
ディアス様!オブラートに包みましょうよ!あの穏やかな王妃が『レオンの育児は失敗してしまった』とおっしゃったのでしょうか?
「母上は『後継者争いにはならなかったけど』とも言っていた。どういう意味だろう?」
絶対わかって言っているでしょう?レオン様がアホすぎて誰も次世代の王にと推さなかったということでしょう?結構毒舌だなぁ。もっと穏やかだと思っていたけど、でもまぁ一国を預かるならばこの程度できなくてはなぁ。
「明日にでも父上から勅命が下されるだろう、心の準備をしておくといいんじゃないか?」
厳しい心の準備だなぁ。私なら隣国に亡命しちゃう。
****************
卒業式の翌日、レオン様は市井で生活することとなった。キャシー嬢と共に。王子じゃないレオン様にキャシー嬢はアタリが強い。
「ちょっと!私が作った食事に文句を言わないでよ。はぁ?こんな野菜見たことがない?市井ではこんな野菜が常だし、レオン様の稼ぎだとこれが精いっぱい。文句はもっと稼ぐようになってから言ってよ」
「はぁ、こんなはずじゃなかった……。キャシーはもっと女性らしかったはずだけどなぁ……」
市井のキャシー嬢を世話する侍女がいるはずもなく、化粧品などの物を買う余裕は二人にはない。
そんな中でキャシー嬢の魅力は衰えていく。これは自明の理だった。
ディアス様と違って先見の明がないレオン様にそのことはわからなかった。
*************
私はというと、卒業式の翌日に正式にディアス様と婚約をし、その後結婚をしました。
王妃教育は妃教育とはまた違って厳しかったけど、ディアス様のためならと頑張りました。
今は……1男2女の母親と王妃をしています。
女の子は双子なんだけど……ディアス様はすでに二人とも『嫁にやらん』と言っています。貴族社会でそれはダメでしょう?そこは諦めてもらおう。
「おかあたまー!!」
「あー、はいはい。ダグラスどうしたの?」
可愛い!ディアス様に似てるから、ミニディアス様って感じだ。
「みてみてー、きれいないししろったの」
「綺麗な石を拾ったのね?ホントだ。どこにあったの?」
げっ、これはディアス様とプチ喧嘩をして寝室の窓から放り投げた宝石だ。
「おとうたまとおかあたまのへやのちた。もうちょっとでいけだった」
「あらまぁ。池の近くは落ちたら危ないから近寄ったらダメよ?」
「わかりまちた!」
「いい子ね」
私は頭をなでてあげた。
「えへへー。おかあたまだいしゅき!」
「コラ、父上の方が母上の事が好きだぞ!」
子供と張り合ってる……。それも自分の子供と……。
「あら?私は双子達が「おとうたまだいしゅき!」と言っても動じませんよ?」
「む……それは……君が私の事を思ってくれているからではないのか?」
意趣返しのつもりだったのに、返された。なんか悔しい。
ま、そんな感じで毎日幸せに生活をしています☆
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