世界で二人きりになった
人間なんてきっと無い物ねだりだと思う。
そして。
この世界で全てを手に入れることができた今、幸せなのか嬉しいのか悲しいのか不幸せなのか、自分の感情が全くわからなくなってしまっている。
ここは東京都心の高いビル屋上。俺は今その屋上に設置されている細い手すりに腰を掛けている。
空の色は漆黒、その夜空には白く輝く星が散りばめられていて、風も少しツンとするくらいに冷たい。
服装は黒で統一した地味な服装に赤いマフラー。
手を摩擦で暖めようとするが何も変わらなくて、はあと白い息をふく。
隣には同じく手すりに腰を掛けている"渚"がいる。
同じような服装で、同じように寒そうにしていて、なんだか不意に似てしまったと■■。
「なあに。どうしたの、海斗。」
俺の視線に気付いたのか渚もこちらを向く。
「別に?」
もう何年もの付き合いだ、多少素っ気なくても喧嘩など起こらない。彼氏彼女でも無いんだし。
「ええ〜?怪しいなあ。相談事ならどうぞ?僕以外のだーーっれにも聞かれないよ?まあこの世界には僕らしかいないんだからさ、▽▽にいこうよ」
相変わらずシャキッとせずマイペースに喋る彼は柔らかく△△△。
いつまでも変わらぬ彼が隣りにいてくれることが、どれだけ。どれだけ、□□□。
「別に相談事はねえけど。ま、確かに俺たちしかいねえから、▽▽ではあるけどな。」
今この世界には俺たちしかいない。
全員消してしまった。二人で。二人で決めた未来だったはずなのに。
世界が●●●と願ってしまったことが悪かったのか。わからない。
先程の返答に、渚は「でしょ?」と顔をぐいっと近付けて言った。
「ああ」と少し目を閉じ、白い息をふう、と吐いて、目を開いて目の前に果てしなく広がる世界を見た。
自分はこれを本当に▲▲▲いたのだろうか。
渚と俺は少しの間黙り込んだ。静かすぎる世界を見つめ、ただ生きるために息を吸う。
静まり返り、風が吹き。渚と共に今、この瞬間消えることができれば。なんて、考えが一致すればいいのに。
きっと彼は消えたくなんて無いだろう。
ふと口を開いた、
「なあ。」
視線を街に向けたまま話しかける。
「うん。なあに?」
彼もこちらを見ずに遠くを見据えている。
「もし来世さ。平和すぎてウザいくらい平和な世界で、一緒の世界に存在してたら。ここ集合な。」
少しゆっくり、彼に届くように話す。
「ええ?ここ?危なくない?」
彼は手すりをコンコンと特徴的な鉄の音を鳴らすようにたたく。
「ん〜、確かに。じゃあいつもべちゃくちゃベンチに座りながら話してるあの公園にすっか?」
首を傾げ、提案する。
「あ、いいねそれ。」
納得したようにとなりで頷いた。
「なあ。」
もう一度同じように話しかける。
真っ直ぐアイツを見る。
「なあに。」
同じように返してきて、こちらを見る。
何も言わずに握手を求めるように手を前に出す。
あなたはそれを見て、少し◎◎◎ように目を見開く。
『最後に一言くらい言わせてよ』と言わんばかりに、じっと俺を見つめる。
渚は深呼吸をしてから、
「じゃあまた来世。」
と、俺が差し出した手を握った。
「ああ。また来世、」
ぱあっと目の前が白くなり、気付けばなにも感じなくなっていた。
否、もうすでになにも感じていなかったのかもしれない。
ああ、
あのテンポ感であなたと話をすることが○○だった。
どれだけ外が寒くたってお前となら▼▼かった。
本当にーーだった。
ありがとう。
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■■ 笑う
▽▽ 気楽
△△△ 笑った
□□□ 幸せか
▽▽ 気楽
●●● 欲しい
▲▲▲ 望んで
◎◎◎ 驚いた
○○ 好き
▼▼ 楽し
ーー 幸せ
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