表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃ神転生 噂のあの子は元猫  作者: 月野片里
5/5

再会

俺の心にはある事故を切っ掛けにポッカリと大きな穴が開いてしまった。

それ事故以降は何をしていても味気なく虚無感しか起きなかった。

「澪...」

愛しい人の名前を呟く。

その瞬間、心の穴は少しだけ埋まる気がした。

そういえば紹介がまだだったようだ。

俺の名前は結城直也、何処にでも居るような、新播磨国際大学に通っている学生だ。趣味はゲームと読書で特にファンタジー系が好きである。

顔立ちはまぁ普通だと思う。自分で言うのも何だが身長は高くも無く低くも無い。

そんな俺は今とても悩んでいることがある。それは……

「なぁ直也!今日合コン行こうぜ!」

「いや、行かない」

このしつこい男友達のせいでもある。

彼曰く、最近彼女が出来たらしいのだが、そろそろマンネリ化してきたらしく新しい刺激を求めているのだそうだ。

しかし俺はそういうものに興味は無いし、そもそも行くつもりもない。

「頼むよ~!人数足りないんだよぉ!」

「嫌だよ。興味無いもん」

「一回だけで良いからさ!」

「うーん……」

正直面倒臭い。断ってしまおうかとも思ったが、そうすると後々まで付きまとわれる可能性がある。

そうなったら鬱陶しくて仕方が無い。

「分かった。一度だけならいいぞ」

「マジ!?サンキュー!」

仕方なく承諾してしまった。後悔先に立たずとは正にこの事だろう。

「じゃあ早速だけど今日の夜8時に駅前集合ね!」

「了解」

「楽しみにしてるわ!」彼はそれだけ言い残して去って行った。

一体何故こんなことになってしまったのか……。

そして約束の時間になり、俺は駅へと向かっていた。

そこには既に何人か集まっており、その中に友人の姿もあった。

「おっす!ちゃんと来たんだな」

「そりゃ来るだろ」

「どうせ来ないと思ってたんだけどなぁ」

「お前の中で俺はどういうキャラなんだ?」

「ん?女好きの色魔」

「よし、ぶっ飛ばす」

そんな会話をしていると一人の女性がこちらへやって来た。

彼女は確か友人の彼女の……名前は何だったかな?忘れてしまった。

「こんばんは。お久しぶりです」

「ああ、うん。久しぶり……」

とりあえず挨拶を交わす。

それにしても綺麗な子だ。大人っぽい雰囲気があり、スタイルも良い。

これは友人がハマってしまうのも分かる気がする。

「あの……どうかしましたか?」

「えっ!?ああいや何でも無いよ!」

思わず見惚れてしまっていた。危ない危ない。

それからしばらく他愛の無い話をしている内に時間が来たようで皆電車に乗り始めた。

「あれ?一人多いんじゃないか?」

よく見ると明らかに女性と思われる人が混じっている。

服装を見る限りだと多分男性だと思うのだが、化粧をしているため自信がない。

「すみません!遅れました!」

そう言ってその人は走ってきた。やはり男性のようだ。

背が高く体格もいいため一瞬女性と見間違えそうになる。

「遅いぞ真由里!」

「ごめんなさい!」

彼の名前は真由里と言うらしい。名前を聞くまでは女の子かと思っていたが、どうやら違うようだ。

「じゃあ揃ったことだし出発しようか!」

そうして俺たちは合コン会場へと向かった。

着いてすぐ席に案内され飲み物をそれぞれ注文した。

「では自己紹介を始めようと思うけどまずは俺から!」

そう言ったのは先程遅れたと言っていた人だ。恐らく彼がこの合コンを企画した人物だろう。

「俺は高梨誠司!よろしく!」

「次は私ですね」次に名乗りを上げたのは友人とその彼女さんだ。

「私は神崎恵美と言います。よろしくお願いします」

「僕は神坂裕也です。よろしく」

二人共礼儀正しい人たちで好印象を持てる。

「じゃあ次君たちの番ね」

そう言われて前に出てきたのは真由里と呼ばれた人だった。

「初めまして結城直也といいます。趣味はゲームと読書で好きな食べ物は甘い物全般です。よろしくお願いします」

「隆美蔵澪です。趣味はゲームと読書で好きな食べ物は辛いもの全般です。皆さん仲良くしてくださいね」

二人の自己紹介が終わると、急に違和感を感じ澪を見る。

そこで気付いたのだが、この場にいる全員の目が彼女に釘付けになっていたのだ。

無理もない。彼女の容姿はとても整っており、その上美しいのだ。

まるで女神のように美しく、それでいて可愛らしさも兼ね備えている。

こんな人を一目見たら誰だって目を奪われるに違いない。

でも、澪は3年前事故で死んだはずなのだ。だから彼女がここに居るわけが無い。きっと他人の空似だろう。

そう思いながら俺は自己紹介を続けた。

「じゃあそろそろ本題に入ろうか!」

飲み会が始まってから1時間が経とうとしている頃、突然誠司がそう切り出した。

「今日は新しい出会いを求めて集まった訳だけど、実はもうひとつ目的があるんだ!」

「それは一体何なんですか?」

「ズバリ!誰が一番最初に直也を落とすことができるか勝負だ!」

そう言うと周りがざわつき始める。

「おいおい、いきなり何を言っているんだよ」

「別にいいじゃんかよ。お前もたまには女と遊びたいだろ?」

「いやまぁ確かにそうだが……」

「ならいいじゃねぇか!なっ!」

「分かった分かった」

こうなってしまってはもはや断れない。

それに、どうせこんな事は最初から予想できていた事だ。

「じゃあ決まりだね!頑張ってね直也くん」

「あ、ああ……ありがとう」

こうして、俺はなぜか合コンに参加した挙句、他の参加者から狙われることになってしまった。

「じゃあ早速始めようぜ!」

そして始まった戦い(?)だが、正直言って俺は乗り気になれなかった。

そもそも俺は恋愛というものに興味が無い。

なので当然のことながら誰かを好きになったことも無い。

そもそも俺は彼女が欲しいと思ったことも無かった。

しかし今は状況が違う。何故なら俺は今女性に囲まれてしまっているからだ。

しかも全員が美女ときた。この状況に嬉しくない男など居ないだろう。

しかし、今の俺は素直に喜べない。何故ならば……

(どうしてこうなった……)

そう。俺は心の中で嘆いていた。

何故かというと澪がずっと俺の隣を陣取り、時折こちらを見て微笑んでいるのだ。

最初は俺の勘違いだと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。

というのも、誠司が俺を狙っていると言っていたのを聞いた瞬間、一瞬だけではあるが、彼女の表情が曇ったように見えたからだ。

つまり、彼女は俺のことを好きだと思っているということになる。もちろん彼女のことは嫌いじゃないし、むしろ好意を抱いていると言ってもいいだろう。

けれどそれが恋なのかと言われれば分からないというのが本当のところだ。

3年前のあの日から俺は自分の気持ちがよく分からなくなってしまった。

だからこそ、今回の合コンに参加してみてその答えを見つけようと考えていたのだが……まさかこんなことになるとは思わなかった、「あの……どうかしましたか?」

そんなことを考えていると、いつの間にか目の前に澪の顔があった。

「うわあっ!えっと……どうかした?」

「いえ、さっきから様子がおかしいような気がしたので心配になってしまって」

「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしていただけだから」

そう答えると、今度は別の方向から声が聞こえてきた。

「そう言えば二人はどういう関係なんだ?恋人とかそういう感じか?」

そう聞いてきのは真由里だった。

「いや、ただの幼馴染だ。家が隣同士で昔からよく一緒に遊んでいたんだよ」

「へぇ〜そうなんだ。それって今も仲が良いのかな?」

「えぇ、3年前に婚約しているぐらいだし!」

「ふーん、そっか」

すると突然誠司が会話に入って来た。

「二人共!もっと盛り上がろうぜ!」

「そうだね」

「うん」

それからしばらく俺たちは合コンを楽しんだ。

合コンが終わった後、俺たちは皆で食事に行くことになった。

ちなみにメンバーは俺、真由里、恵美さん、恵美さんの彼氏である裕也の4人だ。

そして、なぜ真由里と恵美さんが居るかというと、恵美さんと真由里は高校の同級生らしく、今日はその同窓会的な集まりということらしい。

「いやぁ楽しかったね!」

「そうだな。久しぶりに会ったけど、やっぱり楽しいな」

「そうだね。二人とも元気そうで良かったよ」

「直也くんもね!」

「そういえば、澪ちゃんも来ればよかったのにな」

「仕方がないよ。仕事があるんだから」

「それもそうか」

澪はどうしても外せない用事があるということで今回は参加できなかったのだ。「じゃあそろそろ帰るか」

「そうですね」

「また会おうぜ!」

「次は私達だけで会いたいな!」

「ま、機会があればだな」

「じゃあ帰ろうか!」

そうして、俺たちは解散した。

帰り道、俺はあることを決心する。

「真由里、少し話があるんだけどいいか?」

「どうしたの急に改まったりなんかして?」

「実は……」

俺は今日の出来事を全て真由里に打ち明けた。

「いつから気がついていたの?」

俺は澪を見た瞬間から気が付いていた、何者かが澪の死を無かったことにしたのを、歴史の改竄が有った事を。

「初めから……と言いたいところだけど、今日確信に変わったよ」

「そう……でも直也君が気付いたところで何も変わらないよ。だってもうすぐこの世界が終わるんだもの」

真由里は不敵な笑みを浮かべる。

「一体何を言っているんだ?」

「言葉通りの意味だよ。だってもう直也君は私の手のひらの上で踊らされているんだから」

「だから何を言っているのか分からないと言っているだろ!」

「ふふっ、じゃあ教えてあげる。あなたにはこれから死んでもらうの」

真由里の影がぶれたと思った瞬間、俺の後ろから澪が出て来た。「やっと捕まえたわ」

「澪!?どうしてここに……」

「あら、私は最初からあなたの側にいたわよ?」

「最初からだと……」

「ええ、最初から。私が死んだ時からずっと……」

やはり、そう言う事か……

「そう言う事だったんだな……お前が澪を殺した張本人か!」

「違う!私が殺したんじゃない!あれは事故だったの!」

「嘘をつくな、真由里!お前以外に誰がいるって!」

「本当なんだよ!信じて直也君!」

「黙れ!お前だけは絶対に許さない!」

俺の怒りが爆発し、真由里を殴ろうとすると、真由里が突然笑い出した。

「ふふふ、アハハッ!まさかここまで上手くいくとは思わなかった、我が友の受肉も確認したし、最後に私の名前を明かしましょう。私はではありません。私安裏真由里は、いや我こそが神なる存在アンリマンユ」「何……?」

「そして、この肉体こそは神の器!さぁ、今度こそ死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」

次の瞬間、俺に向かって何かが飛んできた。

「くそ、間に合ええええええ!!!」

俺は咄嵯の判断で澪を突き飛ばし、何とか回避する事ができた。

「おいおい……マジかよ……」

しかし、それは完全に避けきる事ができず、左肩に突き刺さってしまった。

「ぐはっ!」

「直也君!」

「これで終わりだと思うなよ?次は確実に仕留めてやる」

「そんなことさせるわけ無いでしょう?」

澪は右手を真由里に向けると、そこから炎の渦のようなものが現れた。

「たかだか、三流の悪魔如きが邪神である私に勝てると思っているの?」

「貴様!その力は!」

「これは、貴方が持っているような紛い物とは違う本物の力。そして、これが私の本当の姿!」

すると、彼女の体が闇に包まれ、その闇が弾けるとそこには、髪の色が銀色になり、目が紅くなった澪の姿があった。

「お久しぶりね、真由里。いえ、今はアンリマユと言った方がいいかしら?」

「何故、あなたが此処に居るのですか?」

「簡単よ、あの程度の罠で私が死ぬはずがないじゃない」

「そうでしたか。ですが、もう手遅れですよ」

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味ですよ。既にこの世界は終末へと向かっているのです」

「どういう気でいるの?遊園地みたいに面白い世界を壊そうなんて他の子にも迷惑がかかると思うけど?」

「別に構いませんよ。どうせすぐに皆死にますから」

「そう、なら望み通りにしてあげるわ!」

澪は右手から先程のより遥かに大きい闇の塊を作り出す。

「消えなさい!」

巨大な黒い球体は真由里目掛けて一直線に向かう。

「無駄だと言うことがわからないようですね」

真由里の前に謎の壁が現れ、澪の攻撃を防ぐ。

「ちっ!まだ抵抗するのか!」

「当然だ。俺はお前を殺すまで諦めるつもりは無い」

「往生際が悪いぞ、人間風情が!」

「うるさい!お前だけは絶対に許さない!」

「直也君!危ない!」

澪が叫んだと同時に真由里が一瞬にして俺の前に現れた、だが真由里は動くことが出来無いようだ、真由里は恨めしそうな目で俺を睨むと

「恨めしい、赤竜の加護が無ければ殺せたのに、この恨みはいずれまた!」

そう言い残すと虚空に消えて行った。

「逃したわね……」

「ああ……でも必ず見つけ出して殺す」

「そう……でもまずは傷の治療が先でしょ?」

澪が俺に手を向けると、俺の体から痛みが消えた、それにしても澪の猫耳と尻尾にどう突っ込んでいいのやら……

「ありがとう、助かった」

「どういたしまして」

「ところで、その姿について聞いてもいいか?」

「もちろんいいわよ。じゃあどこか落ち着いて話せる場所に行きましょう」

「そうだな。じゃあ俺の家に行こう」

「分かったわ」

こうして、結城直也と隆美蔵澪の再会は幕を閉じるのであった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ