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にゃ神転生 噂のあの子は元猫  作者: 月野片里
4/5

幕間

私の敬愛する、我が主。

「――――」

私は目を閉じて、息を吐いた。

ゆっくりと目を開けると、そこには先ほどまでの私とは違う私がいる。

その瞳に映るのは、黒いモヤではなく人の姿をしていた。

「今回は人の世界ですか」

呟いてから周囲を確認する。

どうやらここはどこかの室内らしい。

薄暗い部屋の中にいるようだが……。

「ここはどこでしょう?」

私は立ち上がると窓際まで歩いていき、カーテンを開いた。

すると眩い朝日と共に、街の景色が見える。

しかし見覚えのない部屋だが寛ぐとしますか。

「んー、ふわぁあああ~……」

大きく伸びをして欠伸をする。

そしてベッドに腰掛けると、ギシッという音が鳴る。

この感触は上質な素材で作られているようですね。

「さて、今日は何をしましょうかね?」

私のお慕いする邪神さまは何処に居られるのでしょうか? 早く会いたいですねぇ……あぁ、待ち遠しい!

「……」

それにしても随分と静かだ。

まるで誰もいないかのような錯覚に陥る程に。

「まぁ、いいでしょう。それよりも……」

まずはこの世界の事を知らなくてはいけませんね。

そう思い立ち部屋の扉を開く。

廊下に出て少し歩くと階段があったので下に向かう事にした。

そのまま進むと一階に着いたのだが、そこは食堂のような場所だった。

テーブルには食事が用意されており、既に何人かが食事をしている。

「……」

なんとも美味そうな匂いが鼻腔を刺激する。

思わず腹の虫が鳴きそうになった。

それをグッと堪えてから辺りを見渡す。

「誰もいま――」

その時、私の中で何かが弾けた。

それは私の中の獣を解き放つ。

理性など捨て去り本能のままに動き出す。

目の前にある肉を食らう為に。

そして気が付いた時には私は手近にあった皿を手に取り、そこに盛られていた料理を食べていた。

口に入れた瞬間に広がる芳ばしい香り。

舌の上に乗った瞬間溶ける様に消えていく食感。

これは素晴らしい食べ物ですね。

私は夢中になって食べ続けた。

「うぅむ……実に美味かった」

気が付けば全ての料理が無くなっていた。

しかしまだ足りない。もっと食べたいなぁ……。

そんな事を考えていた時、不意に後ろから声をかけられた。

「おいおい、あんちゃんよぉ。俺らの飯を取るとは良い度胸じゃねえか!」

振り返るとそこには五人の男が立っていた。

全員が筋骨隆々の屈強な男たちである。

私は手に持っていた空になった皿を彼らに差し出した。

「申し訳ない。余りにも美味しかったものでつい手が動いてしまったのだ」

私が素直に謝った事で彼らはニヤリと笑みを浮かべた。

「おうおう、分かってんじゃねえか。それなら許してやるぜ」

「だがお前さんも悪いんだぞ?勝手に食いやがってよぉ」

「そうだな、詫びとして俺たちと一緒に来てもらうぜ」

男達はそう言うと私の肩を掴んだ。

そして強引に連れていこうとする。

どうやら彼らの仲間と思われる人達が周囲に集まってきたようだ。

面倒くさい事になったなと思いながら私は抵抗する事にした。

掴まれた腕を振り払い、拳を握って構える。

「おい、こいつやる気みたいだぞ?」

「へっ、上等じゃねえか!ボコっちまえ!!」

一斉に殴り掛かってきた男たちを適当にあしらいつつ、一人また一人と沈めていった。

そして最後の一人の顎先に掌底を打ち込むと、男は白目を剥いて倒れた。

「ふん、他愛もない」

私は溜息をつくとその場から離れた。

これ以上ここに居る意味は無いだろうと思ったからだ。

それから屋敷を出ると、私は街へと向かった。

人通りの多い道を歩きながら周囲を観察する。

この世界の人々は皆笑顔であった。

とても幸せそうである。

「ふふふ、何だか楽しい気分になりますね。これは是非邪神様のお傍で仕えなければ……」

私の敬愛する邪神さま。貴方の為にこの世界を楽しみましょう。

そしていつか必ずお迎えに行きますからね。

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