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18.
私はそのあとも変わりなく夢を集め続けた。
老人、かわいい女の子、むさいおっさん。
それぞれがそれぞれに夢を持っていた。
けれど私も夢を持っていた。
そのために他人の夢を犠牲にすることになっても、私はもうかまわなかった。
運が悪かったね。そう言って、私は彼らを犠牲にする。
クロネコは何も言わない。人間の姿をしていたのはあの時っきりだ。今はいつもの黒猫の姿をしている。
器はまもなく満たされた。
雨の降りしきる中、ガンっ!!ギュルギュルギュルギュル!!!という音がした。
私は暖房の効きすぎたコンビニでマンガを立ち読みしていた。
雨で路面が滑ったらしい。十字路を曲がろうとした間際の悲劇だそうだ。
滑ったバイクから体を投げ出された少年は、地面に叩きつけられてバウンドする。
ぐったりとする彼に友人らしい近くを走っていた男性が駆け寄る。
場はにわかに騒然となり、いくらかして救急車が走ってきた。
でもその少年は助からない。当たり前だ。私がそう願ったのだから。
私は大して面白くもないマンガを眺めながら、抑えきれない笑みを浮かべた。
ガラスと歩道をまたいだ道路では、今もざわざわという喧騒がおさまらずにいる。
ぱらりとページをめくった。
19.
私は何度も夢を見る。
詳細は覚えていない。
ガンっ!っと何かがぶつかる音と、ギュルギュルギュル!!というエンジン音。
そのたびに人が飛ばされてぐったりと地面に横たわる。
飛ばされる人は覚えている限りでは二人。
スーツを着たオジサンが飛ばされた時は父が死んだときの空想だろう、と思うのだが、
不思議なのはヘルメットをかぶった男性が飛ばされる時だ。あれはいったい誰なのだろう。
地面に飛ばされて、きっと死んでいるだろうその人を、私は恐ろしくも愉快な気分で眺めている。
何をしているのだ。私は。
人が一人死んでいるというのに。
どちらのパターンだとしても、起きた時にひどく恐ろしい気分になる。
誰かが死ぬ夢だなんて、縁起が悪い。
夜中に起きて、そのまま寝る気にもなれずとりあえず近くのコンビニへ行く。
夜に出歩く癖がついたのも、そういえば最近だ。
ぼうっと夢を見ているようなむなしさと、足元で何かが一緒に歩いているような安心感。それがひどく好ましかった。
そして同時に、恐ろしかった。
出歩く夜はなんでもできる気分に陥る。がらにもなく高揚した気分で、少し遠くまで散歩する。
道路では思い出したように車が走っている。人間はあまり歩いていない。
夜道も外灯がぽつぽつと照らしているのであまり怖くない。
それでも何かがそばから飛び出してきそうな気がして、何かに手をひかれている気がして、意味もなく恐ろしかった。
私は髪を切った。とりあえず、私の何かを変えたかった。
今までの私と決別したかった。
夜中に出歩くのもやめようと思った。
きっとそのうち、全部忘れてしまうだろう。




