自動車のオプション(装備品)が、ぶっ飛び過ぎて・・・・・・。
私は新車購入の為、町はずれの小さな自動車ディーラーを訪れていた。
10年以上乗ってきた愛車が故障してしまった。修理するのに相当の金額がかかるらしく、新車の購入を勧められたというわけである。子供たちも独立して、教育費もかからなくなった。これからは夫婦二人で出かけるのに、少し小さなおしゃれな車に乗り換えたいと、妻に交渉したら、あっさりOKを頂いていたのだ。
ディーラーで、車種とグレードはあっさり決まった。元々、欲しい車種を決めていた。候補になった車は、たくさんあったが、ネットでの評判や、カタログを取り寄せて、妻の好みなど聞きながら、1台に絞っていたのだ。あとは、オプション(装備品)を決めるだけだ。
昔は、エアコンなども標準装備ではなく、オプション扱いだった。子供のころ夏休みの旅行に、エアコン付きでない父の車で出かけたときは、地獄だった。周りを走る車にはエアコンがついているらしく、皆一様に窓を閉めて涼しげな顔で、走り去っていく。本当は窓を全開に開けて、風を浴びたいのに、私たちは見栄を張って窓を閉めていたっけ。
最近の車は、エアコンはもちろん、シートを温めるヒートシーターなんかも標準装備だったりする。安全装備は特に充実していて、エアバッグや、自動ブレーキ、ドライブレコーダーまでついている車種もある。私が購入する車も例外ではなく、あらゆる物が初めから標準で備わっている。
「おすすめは、サンルーフですね。昼間は、風を取り入れたり、夜は星空を眺められますよ。」
なんとも素敵なオプションではないか。
「あとは、羽。」
「羽?リヤスポイラーとか?飾りのヤツかい?」
営業マンは、≪スペシャル≫と表紙に印刷されているカタログを、店の奥から引っ張り出してきた。
「これは、特別なオプションなんですけど、ヘリコプターみたいに、空を飛べる装備なんです。」
「まさか。」
空飛ぶ車がそのうち発売されるとは聞いていたが、既に買えるとは驚きだった。
でも、もし空を飛べるなら渋滞も関係なく、目的地までひとっ飛びか・・・。
「付けようかな。」
「ありがとうございます。後は、おすすめが、キャタピラですね。」
「キャタピラ?あの、戦車についているヤツ?」
「はい。この辺りは冬場に結構雪が降りますから、冬用タイヤより、ずっと安心ですよ。」
なるほど。これもありだな。
「機関銃も付けちゃいますか?」
「機関銃?物騒だな。」
「後ろから、煽り運転されたら、ぶっ放せます。」
「なるほど。」
「あと、ビーム砲。急に宇宙人が襲ってきたときに、重宝します。」
「それは、安心だ。」
「ドリルも便利ですよ。突き当りでも壁を破壊して進めますね。」
「良いね。」
「思い切ってタイムマシン機能も・・・。」
車のオプション選びは大変だ。