8.1円のやさしさ
僕には古い友人がいる。
理不尽な仕事のトラブル。
ギチギチに予定を詰め込んだ休日。
ぼーっとする時間が取れない日が、長らく続いたとき。
ひとりの時間が持てない日が、長らく続いたとき。
そんなとき、必ずと言っていいほど、僕の中でインターホンが鳴る。
そして、その古い友人は、画面越しに爽やかな笑顔で立っている。
そして、その古い友人は、デリカシーなく、土足で踏み込んでくる。
ああ、君か。
最近よく来るね。
調子はどうだい。
薬箱に手を伸ばす。
例のロングセラーの頭痛薬。
その薬の半分は、やさしさで出来ているらしい。
いつもお世話になっているAmazonさん。
80錠で1,299円で売られていた。
その優しさは、1錠あたり10円にも満たなかった。
でも案外、世の中のやさしさは、それくらいの価値でいいのかもしれない。
やさしさにも色々あるし、それはすごく難しいことだけど。
小さなチョコ程度の、やさしい気持ちをポケットに忍ばせて。
もし、泣いている人や、困っている人がいたら、そっと渡そうと思う。
でも、いざとなると、とまどってしまう。
結局それができずに、そのあと少し落ち込んで、また少しだけ前を向く。
大人になったはずなのに、いまだにうまくできてない。
僕は、いつまでたっても、うじうじしている。
そんな弱い人間です。