エヘッ! 19
「私の名前はテスラー総統! 全宇宙の支配者だ! 私は地球を支配するべくカミラス星からやって来たのだ! ワッハッハー!」
現れたのはテスラー総統。
「テスラー総統!? ウルドラマンがやられました!?」
子分が報告を入れる。
「なんだと!? 忌々しい地球の支配者おみっちゃんめ!」
激怒するテスラー総統。
「よし! 早速、茶店に次の刺客を送り込め!」
「はい!」
こうしてテスラー総統の手下が茶店に送られるのであった。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」
おみっちゃんは茶店の看板娘として真面目に働いている。
「毎日行列! ガッポリだね! イヒッ!」
茶店の女将さんは笑いが止まらない。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「おみっちゃん、お客さんだよ。」
女将さんがおみちゃんを呼ぶ。
「は~い・・・・・・え!?」
返事をして振り向き驚くおみっちゃん。
「私の名前は機動戦士カンタム! 全宇宙の支配者テスラー総統の配下である! 地球を支配しにやって来た!」
現れた宇宙からの侵略者。
「おみっちゃん、知り合いかい?」
女将さんは尋ねてみた。
「宇宙人にお友達はいません。」
否定するおみっちゃん。
「地球の支配者である茶店の歌姫のおみっちゃんを倒して我々が地球をいただくのだ!」
宇宙からの侵略者は地球を支配しに来た。
「おみっちゃん、あんたいつから地球の支配者になったんだい?」
女将さんは尋ねてみた。
「知りませんよ。地球の支配者になったつもりはありません。」
否定するおみっちゃん。
「おみっちゃん! 私と勝負だ!」
地球の支配者の戦いを挑む宇宙からの侵略者。
「仕方がありません。女将さん、少し遊んできます。」
おみっちゃんは相手をすることにした。
「行っといで。おみっちゃん。サボった分は給料から引くからね。」
守銭奴な女将さん。
「そんな!? 殺生な!?」
ショックを受けるおみっちゃん。
「かかって来なさい! 宇宙人!」
おみっちゃんは侵略者を迎え撃つ。
「くらえ! カンタム・ビーム!」
侵略者はビームをぶっ放す。
「ギャアアアアアアー!」
おみっちゃんは倒された。
「やったー! 倒したぞ! これで地球は私のものだ! ワッハッハー!」
勝ち誇る侵略者。
「それはどうかな?」
そこに死んだはずのおみっちゃんが現れる。
「なに!? バカな!? おまえは確かに死んだはず!? なぜ生きている!?」
戸惑う侵略者。
「いいえ。生きてませんよ。私は既に死んでいる。だって私、幽霊ですから。エヘッ!」
おみっちゃんはエヘ幽霊だった。
「幽霊!? そんなのありか!?」
侵略者に幽霊という概念はなかった。
「愚かな宇宙人よ! 地球の支配者の恐ろしさを教えてやる!」
遂に地球の支配者を認めたおみっちゃん。
「私の歌を聞かせてやろう! これがおまえへのレクイエムだ!」
おみっちゃんは歌を歌うつもりである。
「歌? 戦闘中にふざけているのか?」
侵略者は戸惑う。
「1番! おみっちゃんが歌います! 曲は甘木越え! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でゴットボイスの持ち主であった。
「み、耳が潰れる!? なんだ!? これが歌声なのか!? 騒音だ!?」
おみっちゃんの歌声に苦しむ侵略者。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「頭が割れる!? テスラー総統! 万歳! ギャアアアアアアー!」
侵略者の他人に危害を加えようという邪神がおみっちゃんの歌で追い払われた。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
ご満悦なエヘ幽霊。
「ここはどこ? 私はだあれ?」
侵略者は良い子になった。
「カンタム。美味しいお茶とお団子を食べたくない?」
おみっちゃんの悪魔の囁き。
「食べたい!」
釣られる侵略者。
「じゃあ、茶店に一緒に行こうね。エヘッ!」
新しい茶店のアルバイトを手に入れたエヘ幽霊。
「わ~い! お茶とお団子が楽しみ!」
改心した侵略者は茶店に連れていかれる。
「地球の平和は私が守る! エヘッ!」
地球の支配者のエヘ幽霊。
「は~い! エヘ幽霊と宇宙からの侵略者の戦いが生で見れる茶店はここだけですよ! おっと!? お客さん! 特等席は1万円ですよ! サイン付きの席は5000円アップです! 残念ですが地球の支配者との握手会は安全上の注意のために行っておりません! イヒッ!」
ちゃっかりおみっちゃんの給料は減らしているのに、茶店の看板娘と宇宙からの侵略者のショーを茶店のお客に見せてお金を儲けている女将さんであった。
「私の一人勝ちだね。イヒッ!」
この物語のオチである。
つづく。
「zzz。」
おみっちゃんは幽霊なのに夜に温かい布団で寝ます。
「・・・・・・人間界、魔界、天界、地球、宇宙。全てを支配した私。いつになったら歌姫になれるやら。うおうお・・・・・・。」
夢の中でうなされるおみっちゃん。
「二毛作で小説家でも始めるか?」
夢の歌姫になれなかった時のために保険で創作活動も始めるおみっちゃん。
「夢の中の小説家。」
新しいエヘ作家の誕生である。
「今日は何を考えようかな? エヘッ!」
エヘ作家。
「前回、聖剣、魔剣で名前に困ってしまったので、そこを考えますか。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「聖剣の名前に困るとエクスカリバーに頼ってしまうのは誰しも悪い癖ですね。エヘッ!」
他に有名な政権はない。例えると政権、安倍晋三みたいなものである。人の名前を剣の名前にするとこんな感じで気持ち悪い。
「次に魔剣。魔剣魔剣というけれど、碌な魔剣がない。調べると魔剣ラグナロクしかない。」
ラグナロクは世界の終わりで、魔剣ラグナロクはファイナルファンタジーのオリジナル魔剣設定なだけ。困ったな。
ピキーン!
その時、おみっちゃんは閃きました。
「地名を剣の名前にしよう。聖剣ロンドンとか魔剣バッキンガムとか。無理はない。何なら聖剣ジャニュアリーとか魔剣エイプリルとかでもいいのかな。」
昔の人は言っていた。
「足なんてただの飾りですよ。名前なんて何でもいいんです。個人や武器を識別さえできればね。」
この人は偉いのだ。
「聖剣お汁粉。魔剣バームクーヘン。これでもいいってことだよね。アハッ!」
呆れてエヘ幽霊もアハ笑い。
ピキーン!
その時、おみっちゃんは閃きました。
「妖刀にしよう。それなら異世界ファンタジー風の名前から解放される。だって私、幽霊だから日本人だもんね。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「妖刀は村雨かな? 聖剣、魔剣、妖刀というけれど、たいして数はないんだね。」
数量限定的な扱いです。
「ということは物語において、剣の名前など気にもされない、どうでもいい存在ということですね。エヘッ!」
身もふたもないエヘ幽霊。
「よし! 決めた! 妖刀! 目黒にしよう!」
妖刀は地名から名付けられた。
「この調子なら妖刀、渋谷。妖刀、新宿。妖刀、東京タワーとかでもいいんだよね。」
妖刀、北海道。妖刀、鹿児島。
「旧地名なら妖刀、武蔵野。妖刀、蝦夷。妖刀、薩摩。」
なんか疲れてきた。地名を使うのはやめよう。
つづく。
「ああ~戦争なんかしたくないな。就職先がないから生きていくため、お金のためには兵士になるしかない。」
ジャニュアリーは平凡な兵士でした。
「そうだな。俺もどうでもいいわ。戦争に行って死んだら嫌だもんね。」
マーチも戦う気はありませんでした。
「バカ野郎! 俺は戦争で手柄を立てて家を建てるんだ!」
ジャニュアリーは戦争に意欲的だった。
「はいはい。」
「頑張ってくれや。」
ジャニュアリーとマーチは呆れていた。
「集合!」
そこにエイプリル隊長がやって来る。
「これより我々は村周辺の敵を倒す! いくぞ!」
「おお!」
エイプリル隊は出動した。
「エイプリル隊! 突撃!」
「おお!」
エイプリル隊が魔物の群れに戦いを挑む。
「スラスラ!」
「ギャアアアアアアー!」
戦いの初心者のエイプリル隊より歴戦の兵の魔物たちの方がレベルが高く戦上手だった。
「こうなったら全軍! 死んだふり!」
「・・・・・・。」
エイプリル隊は地面に寝転がり魔物が去って行くことを待った。
(マジか!? こんなことで生き残れるのかよ!?)
ジャニュアリーはエイプリル隊長の戦術を疑った。
「聖剣エクスカリバーよ! 俺に力を貸してくれ!」
ジャニュアリーは聖剣エクスカリバーを天にかざす。
「エクエク!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
エクスカリバーは聖なる光を放ちまくる。
「ギャアアアアアアー!」
魔物たちは倒された。
「ワッハッハー! 見たか! 魔物どもは恐れをなして逃げて行ったぞ!」
生き返るエイプリル隊長。
「はあ・・・・・・死ぬかと思った。こんな隊長は嫌だな。」
マーチはゲッソリしてダイエットに成功した。
「怖くないぞ! 怖くないぞ! 魔物なんか怖くないぞ! アハハハハー!」
フェブラリーは狂喜乱舞した。
「まあ、生きてて良かったね。」
ジャニュアリーはなんだか照れる。
(あなたが聖剣エクスカリバーを持っていることはない署にして下さいね。他人の妬みや嫉妬は怖いですからね。)
ジャニュアリーの脳裏におみっちゃんの言葉が走る。
「そうだ。エクスカリバーは鞘に入れて隠しておかないと。」
ジャニュアリーはエクスカリバーを鞘にしまった。
「凱旋だ! 我々が魔物を倒したのだ! 堂々と帰還するぞ!」
「おお!」
これがエイプリル隊であった。
(なんだ!? なんだったんだ!? どうしてジャニュアリーは聖剣エクスカリバーを持っているんだ!?)
フェブラリーは死んだふりをしながらジャニュアリーが聖剣エクスカリバーで魔物を倒す所を見てしまった。
(このままでは手柄は奴に独り占めされる!? それだけは避けなければ!? そうしなければ俺の一戸建ての夢が壊れてしまう!?)
焦ったフェブラリー。
(どうする? ジャニュアリーを殺して聖剣エクスカリバーを奪うか?)
殺意の漂うフェブラリー。
(いや、ジャニュアリーも友達だ。殺すのは気が引ける。なら剣だけを奪うか?)
窃盗を考えるフェブラリー。
(そうだ! 奴なんかが聖剣エクスカリバーを持っているということは、他の伝説の剣も近くに落ちているはずだ。探してみよう。)
フェブラリーは周囲を探してみた。
「あった! 剣が落ちている!」
フェブラリーは剣を見つけて拾って抜いてみた。
「おお! 力が漲ってくる! この剣は魔剣ラグナロクだ!」
フェブラリーは魔剣ラグナロクを手に入れた。
「これでジャニュアリーの聖剣エクスカリバーにも引けを取らないぞ! 奴が聖剣士なら、俺は魔剣士だ! 魔剣士フェブラリーだ! ワッハッハー!」
フェブラリーの心は悪に染まりだす。元々フェブラリーは他人と自分を比べて妬み危害を加える性格の悪さがあった。
「ジャニュアリー! 勝負だ! 俺とおまえのどちらの剣が強いか決めようではないか!」
これから先、聖剣と魔剣の激しい戦いが続くのであった。
つづく。
「おみっちゃん。」
女将さんがおみっちゃんを呼んでいる。
「はい。なんですか? 女将さん。」
やってきたおみっちゃん。
「倉庫にあった魔剣ラグナロクが無くなってるんだけど知らないかい?」
女将さんのお宝コレクションから魔剣ラグナロクがなくなった。
「ああ~魔剣ですか。レンタルしたいって言う人がいたので貸しちゃいました。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「なんで勝手に貸すんだよ!? ちゃんとレンタル料は払ってもらってるんだろうね!?」
貸したことよりも貸したらお金をもらうことに重きを置く女将さん。
「もちろんです! 延滞料も貰える契約です! 私はバカではありませんよ! エヘッ!」
少ししっかりしてきたエヘ幽霊。
「借りた人の住所はあってるんだろうね?」
取り立てが前提の女将さん。
「たぶん・・・・・・。」
嘘の住所には気を付けよう。
「バカ野郎! 何をやってんだい! 身元確認はしないとダメだろうが!」
激怒する女将さん。
「可愛いから許してください! エヘッ!」
反省の色は見えないエヘ幽霊であった。
つづく。




